麻雀のプロリーグ「Mリーグ」。2018年に始まって、今年で8年目のシーズンを迎える。ABEMAで月、火、木、金の19時から配信されている。

4人1組でチームを組んで、そのスコアを競うリーグ戦だ。ルールとして、必ず女性選手が1人は参加していないといけない。

麻雀のチーム戦というのは珍しい。試合では、1チームから1人が登板し、別のチームの選手と戦う。

  • 昨年度の表彰式の様子

    昨年度の表彰式の様子

同チームの選手とともに、全国にいるファンも応援するので一層熱が入り、見るのが非常に面白い。

2025-26シーズンの優勝賞金は7,000万円。

先日の3月27日(金)で、2025-26Mリーグのレギュラーシーズンが終了。

ここで7~10位の4チームが脱落する。

4月6日(月)から始まる「セミファイナルシリーズ」ではそこからまた下位2チームが振り落とされる。

そして、5月4日(月)以降は、残った4チームで「ファイナルシリーズ」を戦い、優勝が決まる、という日程だ。

年を重ねるごとに熱狂はどんどん大きくなっているが、その中で今回は、先週「レギュラーシーズンのクライマックス」で飛び出したスーパープレーを紹介したいと思う。

主役の選手は、

BEAST X(ビーストテン)所属、下石戟。滋賀県出身。

実家が神社のため、その打ち方は「神主打法」というそうだ。(そのように呼ばれているところを、筆者は聞いたことがないが……)

そんな下石は、今年の、個人スコア賞を獲得した選手だ。

要は、今年度レギュラーシーズンで「一番勝った」打ち手である。

衝撃の打牌が飛び出したのは、3月24日(火)2試合目。

下石の手牌は、このようになっていた。

浮いているのは、左から6枚目の7筒と、一番右にある南だ。

もう少しでテンパイ(あと1枚でアガリになる煮詰まった状態。普段我々が使う「あいつ、テンパってるなー」の「テンパる」の語源)という状態。

どう見ても、右にある南が要らない。

しかし、画像右下、赤坂ドリブンズ園田賢の上に「南」マークが出ているように、

下家の向かい側にいる園田は、

人から3つ牌をもらって、

南待ちでテンパイしていたのだ!

大事そうに、南が牌の間に仕舞われている。

下石は、

局面全体、そして園田が要らないと捨てた牌を見ながら、じっくりと考えて、

解説「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」

南ではなく、2筒を打った!!

見事なビタ止めである。

“どうして南を捨てなかったのか?”

と不思議に思う方もいらっしゃるだろうから、今回は下石の「読み」を説明したいと思う。

少し難しい話にはなるけれども、そのまま見ていただけると嬉しい。

立体図も使いながら、巻き戻して考えることにしよう。

(黄色の牌が持ってきてそのまま捨てた「ツモ切り」、白の牌が持ってきた牌と手の中の牌を入れ替えた「手出し」を表す。

また、灰色になっている牌は「そのタイミングで牌が鳴かれて持っていかれたことを示す。」)

対面(向かい側の選手のこと。「トイメン」と読む。)にいる園田のアクションに注目していこう。

園田は、仲林が切った東をポン。

(飛んでいく東。実際は手で取りにいきます。)

ポンやチーをすると、そのときに手から1枚捨てないといけないのだが、

対面にいる園田は、7索を捨てた。

そして、

次に自分の番が来た園田は、1枚牌を引いてきて、

8索を切った。

実はこれで、「園田は単騎待ち(1枚持っている牌そのもので待っている)」濃厚だということが分かる。

ここまで読んで「そうだよね」と思った方は、上級者だ。そんな方には最後に「上級編」もつけてあるので、もう少し読み進めてほしい。

「え?! そうなの!!??」

という方や、

「なんとなくは分かるんだけど……」

という人のために、なぜ単騎待ち濃厚だと考えられるのかを説明していこう。

東をポンする前の、園田の手は、

こういう7枚だったことはハッキリ分かる。

この、「???」の3枚がどんなふうになっているかを考えるのがミソで、ここがもし、

のように「2枚同じ牌がある」状態なら、ソウズ落としにならないのは分かるだろうか。

上の例だと、一番右の8筒を切って6-9索待ちのテンパイにとるはずだ。

このように、園田が東を鳴いて7索8索を切った時点で、「???」の部分は限定されるのである。

別のパターンを考えてみよう。

もし、

のように、「???」の部分がメンツとして出来ていない場合は、東をポンしたときに7索切りにはならない。

ここで7索8索と持っている「リャンメン」の形は、未完成ブロックの中ではめちゃくちゃ優秀な部類だ。

上の例なら南を切ることになるし、

のような形なら、8筒か4筒切りになりそうだ。東を鳴かないこともある。

つまり、「???」の部分が「メンツ(そろった3枚組)になっていないケースはまず考えられない」のである。

よって、園田は、

のような、「テンパイしているところから、東をポンして単騎待ちにした」ことが、園田の切った牌から分かるのだ。

東は、3枚組にすると1ハンの役がついてくる(ハンは役の単位。基本的にはこれがあればあるほど高くなる)。

特に親にとっては「ダブ東(ダブトン)」と呼ばれ、2ハンの価値がある。

だから親の園田は、

「ダブ東発」の3ハンにしようと、

このような、リャンメンテンパイから動いたのだ。

そして、

それを察知した下石は、

自分にとっては要らない南を止めて2筒を打った、という流れだ。

園田は8索と「今、単騎で待っている牌」を入れ替えている。「8索よりも出やすい牌」とチェンジした可能性が高い。

そのような「人が使いにくい牌」に、「1枚しか場に出ていない南」が該当するのだ。

よって、下石は南を警戒してオリたのであった。

仕組みとしては、こんなところだが、「上級編」として、

なぜ下石は、単騎待ちとしては弱い、真ん中の牌である7筒や4萬すら打たなかったのか?

分かるだろうか。

それは、
















「メンツ」部分が横に伸びた「複合形」となった場合に、7筒や4萬が当たりとなる可能性があるからだ。

園田は、

このような捨て牌となっている。

園田の「メンツ」候補としては、まず、

という、ピンズメンツがあるパターンが、かなりの頻度で出てきそうだ。園田がピンズの真ん中の牌を切っていないのが理由である。

よって、上の形に、8索を切ったタイミングで7筒を引いたときの、

のような待ちに当たるのを下石は嫌ったのだ。

マンズに関しても、

のようなケースは否定できない。園田は途中で6萬を切っているが、ここでマンズメンツが完成していることもあるにはあるだろう。

8索を引いたときに7萬を持ってきていたら、

このような4-7萬待ちになる。

だから下石は、あと一手でテンパイの状態をキープせずに、

「待ちごろの南」と「それなりに危険な7筒や4萬」を打つことなく、

「園田の切っている」2筒を打ったのだ。

極めてシビアな、そして実にクレバーな一打である。

打2筒としておけば、次に順番が回ってきたときにも続けて2筒を切れるので、巡目を稼いで状況の変化をじっくり待てるというメリットも存在する。

その間に、南や7筒、あるいは4萬を他家が切ってくれるかもしれない。

というのが下石の思考であろう。

こういう「読み」の話は、我々が「あとからじっくり考えたら分かる」ものだ。

下石をはじめとして、鉄強Mリーガーの人たちは「卓にいて、打ちながら考えを整理している」のが本当に凄いと思う。

リアルタイムで見ていると、凄い打牌が次々と飛び出してくるのだが、俯瞰で見ている実況と解説の方が打牌について説明をしてくれるので、見ていて面白い。

ぜひ、興味を持った方は、4月6日(月)から始まるセミファイナルシリーズをABEMAで見ていただけたら、と思う。

Mリーグはドラマチックで、ここからが本当に面白い。

今日紹介した下石もきっとまた、

素晴らしい選択を見せてくれることだろう。

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