「いよいよ保育園入園!」と期待が高まる一方で、「すぐ体調を崩すって本当?」「仕事に影響しない?」と不安を感じている人も多いのではないでしょうか。
いわゆる“保育園の洗礼”とは、入園後に子どもが頻繁に体調を崩すこと。熱や咳、鼻水などが続き、生活が一変するケースも少なくありません。
今回の記事では、愛晋会中江病院の中路幸之助先生に「なぜ保育園に通うと体調を崩しやすくなるのか?」「子どもの免疫はどう育つのか?」など、入園前に知っておきたい基本知識や心構えについて、教えてもらいました。
入園後に続く体調不良、その理由は?
ーーいわゆる“保育園の洗礼”(入園後に感染症などで体調不良が続く状態)とは、医学的にはどのような現象なのでしょうか?
入園後の体調不良は「免疫が育つための通過点」でありつつ、同時に家庭や仕事のスケジュールに大きな影響を与える出来事でもあります。いわゆる「保育園の洗礼」という言葉は医学用語ではありませんが、入園後数か月のあいだに風邪や胃腸炎などに次々とかかり、「治ったと思ったらまた別の症状が出る」という生活の大きな変化を表す表現として、ご家庭の実感に近いものだと言えます。
医学的に見ると、これは、集団保育のスタートというタイミングで、それまで出会ったことのなかった多くのウイルスや細菌に短期間にさらされ、感染と回復を繰り返しながら免疫が“経験を積んでいく状態”と言えるでしょう。医学的には「免疫のトレーニング期間」が前倒しで集中的に来ているとも言えますが、保護者にとっては、呼び出し電話や予定変更の連続としてのしかかってくる現象です。
ーー保育園に入ると体調を崩しやすくなるのはなぜなのでしょうか?
まず前提になるのが「免疫の経験値」の少なさです。乳幼児は、生後数年のあいだにさまざまな病原体と出会いながら免疫を発達させていきますが、家庭だけで過ごしている間に実際に接触できるウイルスの種類には限りがあります。
ところが、保育園という場に入ると、その瞬間から同年代の子どもたちが集まり、咳や鼻水、よだれのついた手でおもちゃや机、本などあらゆるものに触れ、それをまた別の子が触るという状況になります。密な空間で長時間一緒に過ごす集団生活は、病原体にとって非常に“効率のよい”広がり方ができる環境であり、子どもたちは一度に多種類のウイルスに曝露されることになります。
加えて、園で持ち帰ったウイルスが家庭内できょうだい(兄弟・姉妹)や大人に広がり、そこから再び園に戻っていくという「行って帰ってくる循環」も起こりやすくなります。こうした背景が重なり、「入園した途端に頻回に体調を崩す」という現象として表に出てきます。
ーー子どもはどのように免疫をつけていくのでしょうか? 保育園に通うことはどのように影響しますか?
子どもの免疫は、ワクチンと実際の感染という二つの車輪で育っていきます。麻疹・風疹、水ぼうそうなどの病気については、定期接種のワクチンによって感染症をあらかじめブロックすることができます。
一方で、いわゆる「ただの風邪」や多くの胃腸炎など、ワクチンで防げない病気については、実際にかかって抗体や免疫記憶をつくることで、次に同じ病原体に出会ったときに素早く対処できるようになります。
この点を踏まえると、「保育園に通い始めると病気ばかりしている=体が弱い」と単純には言えません。単に、家庭保育の場合に比べて病原体と出会う頻度が高い分、免疫の蓄積が前倒しで進んでいるとも考えられます。年齢が上がり、免疫記憶が増えていくにつれて、同じウイルスに出会っても「そもそも発症しない」「軽い症状で済む」といったケースが増え、3〜4歳、就学前と時間がたつほど、「あまり休まなくなった」と感じるご家庭が多くなっていきます。
入園前に知っておくべきこと
ーー「頻繁に体調を崩す子」と「そうでない子」の違いはどこにあるのでしょうか?
「頻繁に体調を崩す子」と「そうでもない子」の違いとしては、年齢、体質や基礎疾患、生活リズムや環境など、複数の要素が絡み合っていると考えられます。
年齢に関しては、一般に低年齢であるほど免疫機能が未熟で、同じ感染でも熱が出やすく咳が長引きやすい傾向があります。0〜1歳で入園する子どもは、3〜4歳で入園した子に比べると、どうしても最初の1〜2年の感染症エピソードが多くなりがちです。また、もともとの体質として、アレルギーや喘息傾向がある、早産・低体重で生まれた、などの背景があると、同じウイルスに感染しても症状が強く出ることがあります。見た目には分からない鼻・のどの粘膜の構造や、鼻水がたまりやすい形などの個人差も影響します。
さらに、睡眠時間が不十分、就寝時間が遅く生活リズムが不規則、食事が偏りがち、常に空調の風が直接当たっている、家庭内に喫煙者がいる、といった環境要因も、感染へのかかりやすさや回復までの時間に影響すると考えられています。
きょうだい(兄弟・姉妹)がいて、上の子が園や学校からもらってくる風邪を次々とキャッチしてしまうケースもあり、「この子だけが特別弱い」というより、家族全体のウイルスの出入りが多い結果として体調不良が目立っている場合も少なくありません。「体が弱い子」と決めつけるのではなく、生活リズムや環境を一緒に整理してもらうつもりでかかりつけ医に相談してみると、修正できるポイントが見つかることがあります。
ーー入園前の段階で、保護者が心構えとして知っておくべきことはありますか?
入園前の段階で、保護者が心構えとして知っておくと楽になるのは、「まったく休まないようにすることは現実的ではない」という事実です。
とくに1〜2歳での入園では、最初の半年〜1年は「ある程度の発熱や欠勤があるもの」として見込んでおいた方が良いでしょう。そのうえで、入園前に可能なワクチンをできるだけ済ませておくことは、命に関わったり重症化しやすい感染症のリスクを下げ、「かかるとしても軽く済む」助けになります。
また、かかりつけ医を決めておき、「どんなときに受診すべきか」「解熱剤はどう使うか」「電話やオンラインで相談できるか」といった基本ラインを入園前にすり合わせておくと、実際に熱が出たとき慌てにくくなります。
あわせて、パートナーや祖父母、病児保育、ファミリーサポート、民間シッターなど、いざというとき頼れる選択肢を事前にリストアップし、「誰がどんな状況で迎えに行くか」「仕事を休める順番はどうするかを決めておくことも、大きな安心材料になるでしょう。
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