埼玉西武ライオンズの篠原響(写真:編集部)

 

 昨季は高卒ルーキーながら一軍では課題も多かった埼玉西武ライオンズ・篠原響。2年目のシーズンに向け、オフから準備を進めてきた。目指すのは「ゼロに近い数字」。先輩との自主トレや侍ジャパンでの経験を糧に、新たな武器を携えて進化を遂げる右腕に、開幕前のベルーナドームで話を訊いた。(取材・文:灰原万由)

プロフィール:篠原響

2006年生まれ、愛知県出身。7つ上の兄の影響で小学校に入る前に野球を始め、幼少期は糸井嘉男に憧れた。福井工大福井高から2024年ドラフト5位で埼玉西武ライオンズに入団。高卒1年目の昨季は二軍でチームトップタイの8勝を挙げ、一軍でも2試合に先発した。

 

高卒ルーキーが二軍で8勝。2年目の飛躍へ

 

 

 

 埼玉西武ライオンズの高卒2年目・篠原響投手が、開幕へ向けて順調に調整を進めている。今春のオープン戦では中継ぎで5試合に登板し、6イニングを投げて防御率1.50。2年目の飛躍を見据える19歳右腕は「自主トレからしっかり準備できたので、キャンプも順調に来れた。オープン戦もここまで順調だと思うので、状態はいいと思います」と確かな手応えをにじませた。

 

 順調な2年目の歩みを支えているのが、ルーキーイヤーの昨季に得た収穫だ。

 

 篠原は福井工大福井高から2024年ドラフト5位で西武に入団。プロ生活のスタート時点では「二軍でも通用しないのではないか」と不安の方が大きかったが、新人合同自主トレでは体重を約6キロ増やすなど体づくりに励み、プロの世界への適応を図った。

 

 無事にキャンプも完走し、開幕後は二軍のローテーションを任されると、投げ続ける中で通用する球と足りない部分が少しずつ見えてきた。変化球も試しながら対応力を磨き、「1年間やっていく体力もそうですし、投げ抜く技術もついた」と手応えもつかんだ。手探りのスタートだったからこそ、登板を重ねるごとに得るものも大きかった。

 

 

 

 その成果は数字にも表れた。ファームで16試合に登板し、チームトップタイの8勝を挙げ、防御率2.20をマーク。先発陣の一角として役割を果たし、終盤には一軍のマウンドも経験するなど、上々のルーキーイヤーを過ごした。

 

 入団時に最速148キロだった直球が、今では154キロを計測するまでに伸びたことも、その成長を物語っている。入団時に掲げた「二軍でローテーションを守る」という目標は達成。一方で、もう一つの目標だった「一軍初勝利」には惜しくも届かなかった。ただ、その悔しさは2年目へ向かう原動力になっている。

 

「まさか自分も選ばれるとは」侍ジャパンでの貴重な経験

 

 

 

 1年目のオフは、平良海馬投手に弟子入りを志願し、石垣島での自主トレに参加した。重点的に取り組んだのはウエートトレーニング。継続して負荷をかけたことで扱える重量も増え、「安定した出力が出せるようになった」と変化を感じている。体重に大きな変化はなかったものの、筋肉量は着実に増えた。

 

 収穫はフィジカル面だけにとどまらない。練習の意図を意識しながら取り組む姿勢や、自分で判断しなければならない場面でのマインドの持ち方も学んだ。専門家から教わった意識も「実戦で活きている」。オフの経験は、技術面だけでなく投手としての考え方にも広がった。

 

 着実に歩みを進める中で、篠原に思いもよらない機会が巡ってきた。2月の侍ジャパン強化試合でサポートメンバーに選ばれ、ソフトバンク戦に急きょ先発。登板を告げられたのは数日前で、「びっくりしました。西武から他の選手も参加していたんですけど、まさか自分も選ばれるとは」と驚きを隠せなかった。

 

 それでも「貴重な舞台で投げる機会をいただけたので。自分の力を出したい一心でした」と気持ちを整え、昨季日本一に輝いたソフトバンクの上位打線を相手に物怖じせず、150キロ超えを連発。変化球もうまく交えて1回無失点、2奪三振と堂々たる投球を見せた。

 

 

 

 日本代表の一員として過ごした時間はわずか1日だったが、「役割を果たすことができたのはすごく嬉しかったです」と大きな自信も手にした。普段とは異なる緊張感のある舞台で、自分の力をしっかり発揮できたことは大きい。

 

 日の丸を背負う選手らと深く会話をする時間はなかったものの、ともにサポートメンバーとして参加した選手らから、現場で感じたことや受けた印象を聞く中で「やっぱり感覚も違えば見てる世界も違うなと、間接的ではあるが刺激をもらいました」と自分が目指すべきレベルを改めて意識する機会にもなった。限られた時間の中でも、普段は味わえない空気や緊張感に触れられたことは、19歳右腕にとって大きな財産になった。

 

「決め球が足りない」一軍で出た課題への答え

[caption id="attachment_256888" align="alignnone" width="480"] 埼玉西武ライオンズの篠原響(写真:編集部)[/caption]

 

 

 

 大舞台で得た刺激を胸に、意識はすでに2年目のシーズンへ向いている。

 

 オープン戦では中継ぎとして5試合に登板した右腕は「先発でも中継ぎでも、任せられたイニングはゼロで抑えたい」と役割は違っても求める結果は変わらない。そのための武器として、新たに磨いているのがキックチェンジだ。

 

 昨季、一軍でプロ初黒星を喫した際に「決め球が足りない」と課題を見つめ直した。その答えの一つとしてたどり着いたのが、この球種だった。チェンジアップを決め球として機能させるための選択肢でもあり、最速154キロの直球に、スライダー、カットボール、そして新たな球種が加われば、投球の幅はさらに広がる。

 

 見据える先は明確だ。「ゼロに近い数字で抑えることが今シーズンの目標です」。先発でも中継ぎでも、任された役割の中で最少失点を積み重ねることがすべての土台になる。

 

 

 

 その先に一軍初勝利があり、さらに先発なら最優秀防御率、中継ぎなら最優秀中継ぎ賞などのタイトル獲得も見えてくる。まずは目の前の1球、1イニングで信頼を積み重ね、その先にある大きな役割をつかみにいく。背番号52は、強い決意を胸に勝負の2年目へ踏み出す。

 

 (取材・文:灰原万由)

 

 

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【了】