
チャック・ノリスとは、元空手世界王者から映画スターへ転じ、ブルース・リーとの死闘『最後のブルース・リー/ドラゴンへの道』や、『地獄のヒーロー』『デルタ・フォース』などの80年代アクションで人気を博した俳優だ。 寡黙なヒーロー像と本格的な格闘アクションで、アメリカのB級アクション映画を象徴する存在となり、のちにはTVシリーズ『炎のテキサス・レンジャー』でも広く知られるようになった。
【場面写真】ブルース・リーとの激闘も──チャック・ノリスの名シーンを一挙公開
ブルース・リーとローマのコロッセオで激突した『最後のブルース・リー/ドラゴンへの道』、日本では劇場未公開ながらビデオやTV放映で知られた『暗黒殺人指令』『オクタゴン』、そして『地獄のヒーロー』『野獣捜査線』『デルタ・フォース』へ──その軌跡をたどれば、チャック・ノリスがなぜ80年代アクションの象徴だったのかが見えてくる。
86歳でこの世を去ったノリスを追悼し、武術家、B級アクションの王者、80年代的ヒーローの象徴でもあった彼を知るための8本を紹介する。
『最後のブルース・リー/ドラゴンへの道』(1972)
The Way of the Dragon
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チャック・ノリスが映画デビューを果たしたのは、ブルース・リー主演作だった。空軍出身であり、空手チャンピオンとして名を馳せ、『Black Belt Magazine』の”年間最優秀ファイター”にも選ばれていた彼にとって、この作品は新たなステージへの入口だった。
ローマのコロッセオで繰り広げられるリーとの最終決戦は、今なお映画史に残る名バトルのひとつ。指を鳴らし、構えを整え、互いのスタイルを見せ合う緊張の時間からすでに勝負は始まっている。約10分に及ぶこのシーンは、殴り合いが始まる前から観る者を圧倒し、ノリスが無言で指を振る仕草には、後のアクションスターとしてのすべてが凝縮されている。
『暗黒殺人指令』(1978)
Good Guys Wear Black
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『最後のブルース・リー/ドラゴンへの道』で注目を集めたノリスは、本作で本格的なスターの座をつかむ。彼が演じるのは、ベトナム戦争で特殊任務に就き、壊滅状態から生還したメジャー、ジョン・T・ブッカー。数年後、かつての仲間たちが次々と殺されていく中、彼自身も標的となる。
「かつてはスパイ……今は標的だ!」というキャッチコピーそのままの展開のなかで、ノリスの格闘技アクションは圧倒的な存在感を放つ。例の”飛び蹴り”の真偽はさておき、本作が彼をトップスターへ押し上げたことは間違いない。
『オクタゴン』(1980)
(別題:『アメリカン・カンフーの逆襲』/劇場未公開・ビデオ・TV)
The Octagon
©AMERICAN CINEMA RELEASING/EVERETT COLLECTION
80年代に入り、ノリスはさらにアクションスターとしての地位を確立する。本作ではリー・ヴァン・クリーフと共演し、大量の忍者軍団と対峙するという、いかにも時代を象徴する設定が展開される。
暗殺集団として暗躍する”サイレント・キラー”たちに立ち向かうのは、もちろんノリスただ一人。やがて彼は、かつての親友であり義兄弟でもある男と、八角形の闘技場で対決することになる。ノリス、クリーフ、そして忍者──この組み合わせだけで十分だろう。
『バイオニック・マーダラー』(1982)
(劇場未公開)
Silent Rage
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武術映画から犯罪スリラーへとシフトし始めたノリスの転換点となる一本。彼はテキサスの小さな町の保安官を演じるが、ある事件をきっかけに”常識外れ”の敵と対峙することになる。
逃走した容疑者は遺伝子実験によって”ほぼ不死身”の存在へと変貌していた。暴走するこの存在を止めるため、ノリスは肉体ひとつで立ち向かう。荒唐無稽でありながら、これこそが80年代アクションの魅力だと実感させる作品だ。
『テキサスSWAT』(1983)
Lone Wolf McQuade
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西部劇と刑事ドラマが融合した、純度100%のパルプ・アクション。ノリスは型破りなテキサス・レンジャー、J.J.マクウェイドを演じる。孤独を愛する”一匹狼”であり、規則を無視する危険な存在だが、結果は必ず出す男だ。
娘が麻薬王に誘拐されたことで、彼はあらゆる手段を使って救出に向かう。デヴィッド・キャラダインとの対決も見どころであり、ノリスの代表作のひとつに数えられる完成度を誇る。
『地獄のヒーロー』(1984)
Missing in Action
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ベトナム戦争の捕虜だった男が、再び現地に戻り仲間を救出する──という設定で、80年代アクションの典型を体現した一本。シルヴェスター・スタローンの『ランボー/怒りの脱出』と比較されることも多いが、公開はこちらが先だった。
ノリス演じるジェームズ・ブラドック大佐は、単独で敵地に潜入し、圧倒的な戦闘力で任務を遂行する。この成功によりシリーズ化され、彼の代表的フランチャイズとなった。
『野獣捜査線』(1985)
Code of Silence
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腐敗警察とマフィア抗争を背景に、法を逸脱してでも正義を貫く刑事を描いた作品。もともとは『ダーティハリー』の企画として始まった脚本が、最終的にノリスのもとへ渡った。
アンドリュー・デイヴィスの演出のもと、本作は単なるアクション映画にとどまらず、骨太な犯罪ドラマとしても成立している。多くの批評家が彼の最高傑作と評価する理由も頷けるだろう。
『デルタ・フォース』(1986)
The Delta Force
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テロリストにハイジャックされた旅客機から人質を救出する特殊部隊を描いた大作。リー・マーヴィンとの共演により、クラシックなアクションスターの系譜が受け継がれていく様子が見て取れる。
豪華キャストが揃う中でも、中心にいるのはやはりノリスだ。彼が演じるスコット・マッコイ少佐は、冷静かつ圧倒的な戦闘力で任務を遂行する。本作もシリーズ化され、彼の映画スターとしての黄金期を締めくくる作品となった。