第84期順位戦C級2組(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は、最終10回戦計28局の一斉対局が各地の対局場で行われました。このうち上村亘五段―宮嶋健太四段の一戦は上村五段が89手で勝利。昇級候補の若手を下して今期順位戦成績を3勝7敗とし、降級点回避に成功しています。

キャリアに直結の大一番

8勝1敗で暫定3位の宮嶋四段は勝てば文句なく昇級、一方2勝7敗と不振にあえぐ上村五段は負けると3回目の降級点でフリークラス転出が決まるという状況。昇級と降級が絡む大一番となった本局は雁木対早繰り銀の定跡形に進みました。長考を重ねる上村五段ですが、その慎重さとは裏腹に盤上では先手番らしい積極的な指し回しで主導権を握ります。

後手の宮嶋四段が攻防の自陣角を打って戦いは一段落。狭いところに追い込んだ飛車をいじめる方針が実戦的な手段と思われましたが、ここで上村五段に好手が出ます。70分を超える考慮のすえ狭いところに自陣角を打ったのが味わい深い手で、飛車が捕獲されてもその後に二枚換えの切り返しを用意しておけば大丈夫と見ています。宮嶋四段も強くこの筋に踏み込み、局面は一気に終盤へ。

執念で手にした残留劇

激しい攻防が続きますが、斬り合いのあとで立っていたのは上村五段のほうでした。主砲の飛車こそ失っているものの、攻めては敵玉そばに作ったと金が、また守っては敵の攻め駒をかいくぐり五段目に逃げ出した玉が主役となって攻防ともに指し手に困りません。非勢に陥った宮嶋四段は局後にSNSで「投げきれなかった」と悔しさをのぞかせました。

終局時刻は22時34分、最後は逆転の見込みなしと認めた宮嶋四段が投了。昇級候補相手の大一番を会心の内容で制した上村五段は3勝7敗となり、競争相手の結果を受け降級点回避に成功。ファンも「勝利への執念を見た」「勝負の世界の厳しさだ」と感慨に浸りました。なおこの日の結果を受け最終的に黒沢怜生六段、髙野智史六段、佐々木大地七段の3名がC級1組への昇級を決めています。

水留啓(将棋情報局)

  • 上村五段は開幕6連敗と苦しい出だしだったが、最終的に順位差で残留を勝ち取った(写真は第十四回シモキタ名人戦のもの 提供:田名後健吾)

    上村五段は開幕6連敗と苦しい出だしだったが、最終的に順位差で残留を勝ち取った(写真は第十四回シモキタ名人戦のもの 提供:田名後健吾)