パンクロックのカルチャーを体現──CIRCLE JERKS&GORILLA BISCUITS、伝説が現在形で叩きつけた夜

2月25日(水)、渋谷CLUB QUATTRO。会場にはすでに長蛇の列ができて、入場を待っている。中に入ると、ありとあらゆるエッジの立った面々で溢れている。80年代、90年代にLA、NYのパンク、ハードコアにヤラれた人たち。その中には、日本のストリート・カルチャーをリードしてきたクリエイターやスケーター、バンドマンたちもいる。海外からのファンもたくさんいるし、日本在住の外国人もいるし、若いモッシャーたちがいるのも目立った。今や世代も国境も超えた、パンク、ハードコアというカルチャーを象徴するような感じがそこにはあった。バンドのマーチャンダイズに対する気持ちも熱く、多くのファンが熱心にチェックし、購入している。その中にはTokyo Hiroが特別にデザインしたTシャツもある。そして、バーカウンターの前も長蛇の列。開演前から、なかなか熱いムードに包まれていた。

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オープニングで登場したのは、2020年の無期限活動休止から復活したCOKEHEAD HIPSTERS。メンバーは、ベースがオリジナルのKOBAの息子さんに変わっている。代表曲の「NO WAY」や人気のカバー曲を次々と演奏するが、変に力が入りすぎていないというか、しなやかさと新たな強さがあるのがまた新しかった。途中でRUDE BONESのHIROSHI BROWNがトロンボーンで参加して、2曲を披露。ヴォーカルのKOMATSUは、かつてNYでゴリラ・ビスケッツのウォルター・シュライフェルズにプロデュースしてもらったこと、バンド名がサークル・ジャークスの「I, I & I」のリリックから取ったこと、そういう縁があっての、今回の共演に対する想いをMCで伝えていた。定番とも言える「Too Drunk To Fuck」のカバーで、COKEHEAD HIPSTERSのセットは大歓声とともに終わった。

続いては、GORILLA BISCUITS(ゴリラ・ビスケッツ)の登場となる。1986年にNYで結成されたこのバンドは、NYハードコアの第2世代で、ユース・オブ・トゥデイを始めとするユース・クルーの筆頭バンドだった。2000年代に入っての再結成後、初来日は2008年に果たし、再結成した前澤友作のバンドSWITCH STYLEとの共演でも盛り上がった。今回はその後の2015年の来日に続く、3度目の来日となる。

ライブの1曲目は定番の「New Direction」だが、イントロのトランペットをローカルの誰かに演奏してもらうことが多く、この日はHIROSHI BROWNが登場。トロンボーンなのも味が出ていてカッコよく、すぐに大歓声が湧き起こる。続くギターのイントロ、そこからドラムが入ると、さらなる大歓声とモッシュで会場は一気に熱くなった。この日は移動のトラブルで、ギターのウォルター・シュライフェルズがライブに間に合わなかったため、4人での演奏となる。2019年に亡くなったアレックス・ブラウンに代わって、ギターを弾くのはチャーリー・ガリガ。チャーリーはCIV、クイックサンド、Judgeにもいたギタリストだ。

Photo by Yoshifumi Shimizu

Photo by Yoshifumi Shimizu

CLUB QUATTROで観るゴリラ・ビスケッツは、またひと味違う感じがした。音の分離が良いからなのか、ドラマーのルーク・アビーの叩き出すビートが非常に心地良い。それに絡むアーサー・スミリオスのベースが、パンクのエッジを立てた感じではなく、ファンクやジャズにも相通ずるようなグルーヴを紡いでいる。当然、会場はモッシュ、ステージダイブ、クラウドサーフで応えるわけだが、このリズム隊によって最高のモッシュ・ミュージックが生まれているのだと、改めて思わされた。フロントマンのCIV(アンソニー・シヴァレリ)は、以前の来日時よりもシャープな印象で、よく動き、よく声が出ている。「30年間、世界中を回って、友達ができた。黒人、白人、ゲイ、ストレートとか関係ない。みんなファミリーで、同じ人間なんだから」とMC。そこから「Degradation」をやるのにも痺れた。MCとプレイする楽曲を結びつける感じも素晴らしく、サークル・ジャークスが初来日ということで、自分も初来日の時はヴィーガンのために食事に苦労したというMCから、「Cats and Dogs」をプレイしたりもした。何曲かプレイしてMCを入れる感じだったが、演奏のノンストップ感も凄まじく、モッシュ・ミュージックとして最高の状態が生まれていた。CIV自身も、「楽しすぎる」「ダンサー、ステージダイバー、今夜は君たちのものだ」とMC。COKEHEAD HIPSTERSとの縁についても言及したし、バズコックスの「Sitting Round at Home」はもちろん、マイナー・スレットのカバーも披露し、CIVの曲「Do Something」をセルフカバーしたのも良かった。セットのラスト曲は、これも定番の「Start Today」。「年齢は数字じゃない。感じ方だ」とCIVがMCで語っていたが、まさにそういうライブを見せてくれたと思う。

Photo by Yoshifumi Shimizu

LAハードコアの始祖、ついに日本のステージへ

そして、トリを務めるCIRCLE JERKS(サークル・ジャークス)の登場となる。1979年にLA郊外、サウスベイ地区のハーモサ・ビーチで結成されたバンドで、ブラック・フラッグのキース・モリス、レッド・クロスのグレッグ・ヘットソンが結成した、当時のスーパーグループでもあった。今回が意外にも初来日ということだが、さすがのレジェンドぶりを見せつけてくれるライブとなった。

ボーカルのキース・モリスは、2019年にイベントで来日した時よりも、かなりシャープで元気な印象だ。サークル・ジャークスで世界中をツアーして回っているのが大きいのだろう。ライブは何曲か塊でノンストップでプレイしたのもスゴかったし、キースの長めのおしゃべりの面白さも印象的だった。そう、MCというよりも「おしゃべり」という感じなのだ。カリフォルニアのパンクの歴史に関する貴重な話も聞けたし、現在のアメリカ政府に対する話もあったし、自分たちは本来、パール・ジャムやレッド・ホット・チリ・ペッパーズ並みにスタジアムでプレイするようなビッグ・バンドになるはずだった、なんて話もあった。ブラックユーモアも入っているし、おそらくショーごとに違う話をしてそうだから、キースのMCはどれも聞いてみたい気持ちにさせられた。

Photo by Yoshifumi Shimizu

今回のメンバーは、オリジナル・メンバーのキース・モリス、ギターのグレッグ・ヘットソンに加えて、1984年からメンバーのベースのザンダー・シュロス、2021年加入のドラマーのジョーイ・カスティーヨというラインナップ。キースは、ザンダーがジョー・ストラマーと一緒にやっていたこと、ジョーイがいなかったら自分たちはプレイできていないことに言及。カリフォルニアのパンクの歴史の話もそうだが、自分たちがシーンの中でどういうつながりがあって、今ここにいるのかという文脈の部分を語っていたのが興味深かった。

Photo by Yoshifumi Shimizu

セットリストのほとんどは、1stアルバム『Group Sex』と2ndアルバム『Wild in the Streets』からの曲のオンパレードという感じだが、「Coup d'Etat」やCOKEHEAD HIPSTERSのバンド名の由来となった「I, I & I」もプレイした。レジェンド中のレジェンドなのだが、バンドの演奏はノスタルジアなんて一切なし。キースは大きな声で叫び、グレッグはそれこそバッド・レリジョンで長年やってきただけあって、余裕の安定したプレイ。ザンダーのベースも力強く、ぐいぐいと曲を引っ張っていく。そして何よりもドラムのジョーイが凄まじい。オリジナル・ドラマーのラッキーの超絶プレイに、現行のヘヴィネスが加わった感じだ。ジョーイは、ハードコア・バンドのWasted Youthから、ダンジグ、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジまで渡り歩いてきたドラマーだ。ストップ&ゴーと目まぐるしく展開するテンポチェンジを、あのぶっといビートで繰り出してくるのだ。80年代にサークル・ジャークスを日本で知った人の多くは、映画『ディクライン』を観て衝撃を受けたと思うが、『Group Sex』の曲「Back Against the Wall」が始まった時は、ピットの中のダンスがスカンクとポゴみたいになって、『ディクライン』のシーンを彷彿とさせる感じがあったのも、痺れさせられた。

Photo by Yoshifumi Shimizu

「もっといっぱいプレイして、冗談を言いたいんだけど。ここにいる全員に感謝したい。みんな叫べ! ……なんだ、これはボン・ジョヴィのコンサートか?」とキース。「COKEHEAD HIPSTERS、ローカルのパンクロッカーに感謝の気持ちを見せてくれ」と、COKEHEAD HIPSTERSへの言及も忘れない。そこから、明日対バンするバンド、ゴリラ・ビスケッツ、CLUB QUATTROへの感謝が続く。こういうのも、パンクロックのカルチャーを生きてきた人らしくて良い。

「これから9曲を10分でやる」。そこからのノンストップで繰り出される速い曲の数々。その中にブラック・フラッグのカバーがあったのもうれしいサプライズだった。そしてラストは「Question Authority」。1時間以上のセットはあっという間に終わった。LAのハードコア・パンクを体現したものを、40年以上の時空を超えて現行感覚でやってくれたのだ。何だかスゴいものを見せられた気持ちになったとしか言いようがない。それだけ凄まじいライブだった。

Photo by Yoshifumi Shimizu

CIRCLE JERKS × GORILLA BISCUITS ジャパン・ツアー

東京 2月26日(木)Shibuya Spotify O-EAST

OPENING ACT:WIPES

■OPEN 18:00 / START 18:30

■TICKETS:¥9,800 (税込/All Standing/1ドリンク代別途)

<問>クリエイティブマン 03-3499-6669

大阪 2月27日(金)梅田CLUB QUATTRO

OPENING ACT:TIVE

■OPEN 18:00 / START 18:30

■TICKETS:¥9,800 (税込/All Standing/1ドリンク代別途)

<問>梅田クラブクアトロ:06-6311-8111

企画・制作:クリエイティブマンプロダクション

※公演の延期、中止以外での払い戻しはいたしません。

※未就学児(6歳未満)のご入場はお断りいたします。

公演ウェブサイト:https://www.creativeman.co.jp/event/circle-jerks-gorilla-biscuits/