2026年4月から、新しい少子化対策の柱として、「子ども・子育て支援金制度」が始まります。医療保険の保険料に上乗せされる形で、すべての国民が負担するため、SNSなどでは「独身税」とも呼ばれて関心を集めています。
本記事では、制度の目的から仕組み、実際の負担額まで、わかりやすくお伝えするとともに、「独身税」と言われるゆえんや問題点についても解説します。
子ども・子育て支援金制度の背景と目的
日本の急速な少子化・人口減少に歯止めをかけるため、政府は「こども未来戦略 加速化プラン」を策定し、子育て世帯への支援強化を進めています。そこで必要なのが、安定的な財源確保の仕組みです。政府はこの財源を確保する手段として、「子ども・子育て支援金制度」を創設しました。高齢者を含むすべての世代や企業から、医療保険料とあわせて徴収することで、子育て支援の拡充のための財源とするものです。
子どもの有無に関係なく、すべての人に負担してもらう設計は、「社会全体で子育てを支える仕組み」を実現することを狙いとしています。
支援金の徴収方法
子ども・子育て支援金は、加入する医療保険制度(国民健康保険、後期高齢者医療、被用者保険)ごとに、保険料が決められており、2026年4月分から医療保険料とあわせて徴収されます。
●被用者保険(協会けんぽ・健保組合・共済組合)・・・会社員、パート・アルバイト(職場の健康保険に加入)など
5月の給与から4月分の支援金の天引きが開始されます。事業主と被保険者(従業員)で折半負担になります。
●国民健康保険・・・自営業者など(他の医療保険制度に加入していない者)
6月~7月に納入通知書が送付され、具体的な支援金額や徴収開始時期が通知されます。
●後期高齢者医療制度・・・75歳以上の高齢者
6月~7月に納入通知書が送付され、具体的な支援金額や徴収開始時期が通知されます。
医療保険制度ごとの支援金額
2026年度の医療保険制度ごとの支援金額を年収別に試算したものをご紹介します。
◆被用者保険(協会けんぽ・健保組合・共済組合)
◆国民健康保険
◆後期高齢者医療制度
会社の健康保険に加入している人は、標準報酬月額×支援金率で計算します。
2026年度の一律の支援金率は0.23%です。支援金額の半分は会社が負担するので、標準報酬月額に0.23%を乗じた金額の半分の額になります。
国民健康保険に加入している人、後期高齢者医療制度に加入している人の支援金に係る保険料率は、お住まいの地域ごとに異なります。
支援金額は、2026年度~2028年度にかけて、段階的に増える仕組みになっています。被用者保険の場合、0.23%→0.4%程度の引き上げが見込まれています。ただし、2029年度以降は支援金額が増えていくものではないと政府は説明しています。
なぜ「独身税」と言われるのか
子ども・子育て支援金は、独身に限らず、全国民から徴収します。それなのに、「独身税」と言われるゆえんは、子どもがいる家庭は、児童手当の拡充などによって、受け取る側になれるのに対して、独身者は取られるだけで見返りがないことから、そのように例えられてしまうのでしょう。
これに対して政府は、「支援金によって給付を受けるのは子育て世帯ですが、給付を受けて育った子どもは、やがて、我が国の社会保障制度の担い手になる。支え合いの循環を維持する点から、すべての人にメリットがあるため、社会全体で支える仕組みにしている(要約)」と説明しています。
子ども・子育て支援金制度の問題点とは
子ども・子育て支援金制度はさまざまなところで議論されていますが、その中でよく聞かれる問題点を挙げてみたいと思います。
1. 支援金の目的である子育て支援の拡充は、少子化対策にならないのではないか。
子育て支援の拡充は、すでに子どもがいる世帯の経済的負担を軽減する効果はありますが、「子どもを産むかどうか」という意思決定に直接結びつきにくいとの指摘があります。出生数の増加につなげるなら、非婚化、晩婚化が進む現状を正しく捉えて、対策を打つ方が先という意見もあります。
2. 医療ではない子育て支援に医療保険料を使って徴収するのはおかしい。
子ども・子育て支援金は、医療とは直接関係のない支援に使われるにもかかわらず、医療保険料に上乗せして徴収されます。この点について、医療保険制度の趣旨があいまいになり、保険料の「目的外使用」に近いのではないかという疑問が出ています。こうした徴収方法の分かりにくさが、制度全体への不信感につながっている面も否めません。
3. 子育て支援は、給付よりも減税(年少扶養控除など)で行ったほうがいいのではないか。
子育て支援金制度は、保険料という形で徴収したものを給付という形で再分配するため、事務コストがかかり、その過程も複雑になります。そのため、かつての年少扶養控除の復活など、税負担を直接軽減する「減税型支援」の方が公平で分かりやすいという意見があります。ただし減税型支援の場合は、高所得者ほど有利になるので、低所得者向けの給付とセットで行う必要があるでしょう。
まとめ
「子ども・子育て支援金制度」は、2026年4月から導入される、少子化対策を支えるための新たな財源確保の仕組みです。2028年度までは支援金が段階的に増えていくため、最終的な負担感は今年度以上のものとなります。
政府は「支援金の導入に伴う実質的な負担は生じない」と説明していますが、これは社会保障の歳出改革を行い、社会保険料の負担を軽減することで、支援金分の増加を相殺する想定に基づくものです。
こうした前提が計画どおりに機能するかどうかは、今後の制度運用に左右されます。我々国民は、実際の負担や制度の行方を冷静に見極めていく必要があるでしょう。



