
2026年グラミー賞の舞台裏に隠された秘密とは? エグゼクティブ・プロデューサーのベン・ウィンストンが、レディー・ガガからシェール、サブリナ・カーペンター、バッド・バニーまで、番組制作の全容を明かす。
2月2日(日本時間)の第68回グラミー賞授賞式で、シェールが「最優秀レコード賞」のプレゼンターを務めるのを忘れるという、生放送ならではの記憶に残る混乱を巻き起こした際、エグゼクティブ・プロデューサーのベン・ウィンストンは即座にホストのトレバー・ノアのイヤモニに指示を出した。
「とにかくステージに上がって、彼女を連れ戻すんだ」とウィンストンは当時を振り返る。指示を受けたノアはマイクを掴み、状況を説明した。シェールはステージに戻ってきたが、今度は受賞者として、2005年に亡くなったルーサー・ヴァンドロスの名前を読み上げた。「断言するが、彼女には事前に説明していたし、やるべきことはプロンプターにも出ていたんだ」と、ウィンストンはこの混乱を楽しみながら語る。「もし時間を戻せたとしても、また同じことが起きてほしいね。彼女も満足しているし、楽しんでいた。多少のアナーキーさがあったほうが面白い」
ポッドキャスト『Rolling Stone Music Now』で、こういった授賞式の裏話を明かしてくれたベン・ウィンストン。その中からハイライトを抜粋してお届けする。
”the Grammy goes to Luther Vandross.”
— Cher announcing the winner of Record of the Year at the #GRAMMYs. pic.twitter.com/rSTjjDdNIb — Pop Base (@PopBase) February 2, 2026
■ジャスティン・ビーバーは、リハーサルに多くの時間を必要としなかった。
各出演者には90分のリハーサル時間が割り当てられるが、ビーバーは自身の「Yukon」のセルフ・ループ・パフォーマンスを一度通しただけで満足した。「彼はステージに来て、一度やっただけだ」とウィンストンは言う。「素晴らしかったよ。1時間半のリハーサル枠のうち、まだ7分しか経っていなかった。すると彼は『どう見えた? よさそう?』と聞いてきたんだ。僕が『オー・マイ・ゴッド。美しかったよ、最高だ』と答えると、彼は『オーケー、完璧だ。じゃあ日曜に!』と言って立ち去ろうとした」
ウィンストンは、カメラマンがせめて曲を覚えられるようにもう一度だけやってほしいと頼み込んだ。彼はそれに応じ、結局合計15分で終了した。ちなみにビーバーの上半身裸のルックは必ずしも計画されていたわけではないとウィンストンは付け加える。「ステージに上がる直前まで、何を着るか決めていなかったんじゃないかな」
■レディー・ガガは授賞式前日の朝に日本から飛んできたため、ダンサーとリハーサルをする時間が全くなかった。その状況が、プロデューサーのアンドリュー・ワットによる「Abracadabra」のハードなリアレンジを活かした、バンド主体のミニマルなパフォーマンスを生むインスピレーションとなった。
「もし彼女がロサンゼルスにいたら、100人のダンサーを従えた大掛かりなものになっていただろう。だが、その状況が結果的に素晴らしいクリエイティブを導き出したんだ」とウィンストンは語る。 「本番の数週間前には、彼女が『どうやればいいのか分からない』と言い、出演を断念せざるを得ないかもしれないと思った局面もあった。だから、彼女がやり遂げただけでなく、最もアイコニックなパフォーマンスの一つを見せてくれたのは驚くべきことだ。彼女自身と彼女のチームの天才的な発想から生まれたものだから、本人もあのパフォーマンスを本当に誇りに思っていると思う」。なお、マスクの下のアップ映像はロボットアームに装着されたカメラで撮影されたが、これはアワード・ショーでは初の試みかもしれない。
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■バッド・バニーがパフォーマンスできない事情を逆手に取ることにした。
NFLの独占期間の関係で、バッド・バニーはスーパーボウルのハーフタイムショーから数週間以内はパフォーマンスを禁じられていた。ウィンストンの解決策は、それを「ネタ」にすることだった。「数週間前、トレバー(・ノア)とFaceTimeをしながら、互いにアイデアを出し合って競い合っていたんだ」と彼は言う。 最終的に、マーチングバンドがバッド・バニーの曲を演奏する中、ノアが客席から彼をそそのかすという演出に落ち着いた。「もしかしたら彼は契約違反をしたかもしれないね」とウィンストンは冗談めかして語る。「だが誰が気にする? 最高に楽しかったじゃないか」
Bad Bunny performs HIT SONG ”DtMF” with Trevor Noah at the 2026 Grammys pic.twitter.com/Sna8tiVe2F — Prediction News (@PredictionNews_) February 2, 2026
■ブルーノ・マーズは、本番の数日前に「APT.」をリアレンジした。
オープニング・ナンバーは当初、ROSÉとのコラボ曲のスタジオ・バージョンで計画されていた。しかし、リハーサル中にウィンストンがブルーノ・マーズと彼のバンド「ザ・フーリガンズ」と同席した際、マーズが新しいアレンジを披露した。「彼はこう言ったんだ。『グラミーのオープニングなら、ポップなバージョンじゃダメだ。もっとアグレッシブに、もっとエネルギーを込めるべきだ』とね」
■サブリナ・カーペンターの演出で使われた本物の鳥は、直前に追加されたものだった。
金曜のリハーサルでは鳩は登場していなかった。「共同エグゼクティブ・プロデューサーのエリック・クックが私のところに来て、『サブリナのチームから、本物の鳥を演出に加えたいというリクエストがあるんですが、どう思いますか?』と聞いてきたんだ」とウィンストンは回想する。「あの段階で、あらゆることに対応している最中にそんなこと言われたら……『もういいよ、入れちゃえ』って感じになっちゃうよね」
Sabrina Carpenters full Manchild performance at the 2026 #GRAMMY Awards.
pic.twitter.com/Ap1K7lr4QG — Sabrina Carpenter Daily (@SCdailyupdates) February 2, 2026
■ローリン・ヒルは追悼コーナーを自ら仕切った。
ディアンジェロとロバータ・フラックを讃える11分間のパフォーマンスは、当初の計画よりも遥かに野心的なものになった。ウィンストンは当初、ローリン・ヒルがディアンジェロとのコラボ曲「Nothing Even Matters」から「Killing Me Softly」へと繋げるだけの構成を想定していた。「最初の依頼は4分か4分半だった」とウィンストンは言う。「だが彼女は『やるわ。でも、この二人のアイコンに真の敬意を表したい』と返してきたんだ」 。ヒルは自ら共演者に連絡を取り、編曲をまとめ、ディアンジェロの「主のいないキーボード」を映す感動的なショットを強く要望した。また、彼女は「毎回、本当に早めに来ていた」という。
■「最優秀新人賞」のメドレーは昨年の5組から今年は8組に増えたが、ウィンストンは二度とやりたくないと考えている。
番組の中で最も技術的に過酷なこのシークエンスは、候補者8人全員が立て続けにパフォーマンスし、休憩なしでアリーナ中を移動するものだった。「技術的には何とかやり遂げたと思うが、もう一度できる確信はない」とウィンストンは語り、来年はメドレーを2つのセグメントに分けることを検討している。「失敗するまであと一歩というところだった。そこまでリスクを冒す必要はないかもしれない」
■アーティストたちが政治について語ることを制止しなかった。
「彼らは物事を感じ取る、美しくクリエイティブな人々だ。彼らの仕事は、何かを感じ、それを人々に伝えることだ。彼らがステージに上がって『音響エンジニアに感謝します、パブリシストに感謝します』と言うだけなら、その方が奇妙だろう……当然、彼らには言いたいことがある。それが、彼らがアーティストである理由なのだから」
■ドナルド・トランプがトレバー・ノアを提訴すると脅している件について尋ねられると、ウィンストンは文字通り肩をすくめた。
ノアは放送中、トランプがグリーンランドを欲しがっているのは「エプスタイン島が恋しいからだ」とジョークを飛ばした。これに対しトランプは、番組を「見るに耐えない」と批判し、自分は島を訪れたことはないと主張して法的措置をちらつかせている。「さあね」とウィンストンは言った。
■ウィンストンは、新しいホストを見つけるのは困難だろうと考えており、伝統的なスタンドアップ・コメディアンが適任かどうかも確信を持てずにいる。
トレバー・ノアが6年務めて降板するため、ウィンストンは今後の道筋を決めかねている。「あのアリーナの空間でコメディを成立させるのは本当に難しいんだ」
■ハリー・スタイルズは、ウィンストンから教えられるまで「WHERE IS MY HUSBAND!」のミームを知らなかった。
ハリー・スタイルズが「最優秀アルバム賞」のプレゼンターとして登場した際、Rayeの「WHERE IS MY HUSBAND!」が流れたが、これはファンがスタイルズの映像に合わせてこの曲を使っていることへのオマージュだった。「数週間前にかなりバズっていたんだ」とウィンストンは言う。「彼に動画をいくつか送ったら、二人で笑い合ったよ」
and whoever made the choice for harry to walk out to where is my husband needs an immediate raise pic.twitter.com/0GdIwt3GHS — dimitra (@kissyfloral) February 2, 2026
From Rolling Stone US.