Diploが語る『d00mscrvll』、Phonkで更新するキャリアと美学、東京の夜

米フィラデルフィア出身の世界的DJ/プロデューサー、Diplo(ディプロ)。Major Lazer、Jack Ü、LSDなど数々のプロジェクトでポップとアンダーグラウンドを横断してきた彼が、最新アルバム『d00mscrvll』で挑んだのは、メンフィス・ラップをルーツに持つネット発祥のジャンル”Phonk”だった。ダークで実験的なサウンドは、現代のオンライン文化と強く共鳴する。今回、Diplo本人にメールインタビュー形式で、作品の背景、キャリア、美学、そして東京との関係性までを掘り下げた。

【写真】Diplo

ー最新アルバム『d00mscrvll』は、あなたの長いキャリアの中でも特に異色で、ダークかつアンダーグラウンドな作品だと感じました。まず、このアルバムを作ろうと思った最初のきっかけを教えてください。

自分の音楽では、常に新しいサウンドを探し続けています。今回のプロジェクトで取り入れたPhonkの要素は、僕にとって新しくもあり、同時にとても懐かしいものでもありました。というのも、僕はメンフィス・ラップで育ち、それがそもそも音楽制作を始めるきっかけだったからです。Phonkは、そのメンフィス・ラップを”インターネットという超加速装置”に放り込み、メンフィスからロシア、ブラジル、そして再び世界中へと循環させながら進化してきました。世界中の若い世代が生み出しているサウンドは本当に新鮮で、これは自分も挑戦してみるしかない、と自然に思ったんです。

ーアルバムタイトル『d00mscrvll』に込めた意味やコンセプト、そして制作時に影響を受けたオンライン文化について教えてください。

『d00mscrvll』は、終わりのないスクロールから生まれるあらゆるものを詰め込んだ作品です。過剰な刺激と即時的な快楽が、ピークに達した状態を表している。この作品の着想源になったのは、僕のFYP(For You Page)に流れてくるクレイジーなコンテンツだった。

ーオリジナルのメンフィス・サウンドと、インターネット発のグローバルPhonkをどのように融合させましたか?

Juicy JやProject Patはメンフィスを代表するレジェンドで、Three 6 Mafiaは自分にとって史上最高のグループのひとつです。OGたちへのリスペクトをしっかり示しながら、新しいPhonkをもう一度、そのルーツへと引き戻すこと。それは、このアルバムを作るうえでとても重要なテーマでした。

ー本作を通して、リスナーにどんな情景や感覚を体験してほしいと考えていますか?

この作品の受け取り方は、人それぞれでいいと思っています。世界中のサウンドが衝突するカオス感と、オンラインで延々とスクロールし続けるときの、あの妙な満足感。その両方を、リスナーに体感してほしいですね。

ーこれまでのEDMやポップス制作と比べて、最も違った点は何でしたか?

これまでもずっとジャンルをミックスしてきたので、Phonkは自然と自分の中にフィットしました。ほとんどDNAの一部と言えるメンフィス・ヒップホップのサウンドを土台にしながら、そこにしっくりくる新しい音を取り入れ、バランスを取っていったんです。

ーレジェンドと新世代を同じアルバムに迎えた理由は?

このアルバム自体が、ジャンルそのものを象徴していると思っています。クラシックなヒップホップのサウンドに、新世代のプロデューサーやアーティストたちのひねりが加わったミックスなんです。Odetariのような新しいラッパーを迎えたのも面白かったですね。僕にとってはかなり尖ったビートだったのに、彼は驚くほど自然にそこにハマっていた。Kordhellのプロダクションも、このプロジェクトでは完全に振り切れた仕上がりになっています。

ー『d00mscrvll』は「今だからこそ作れた作品」だと言えるでしょうか?

Phonkは、オンラインカルチャーやトレンドと深く結びついたジャンルです。だからこそ、ほかの時代では成立し得なかったと思います。

ーこれまでの多様なプロジェクト経験は、今のあなたにどう繋がっていますか?

これまでに行ってきたすべてのコラボレーションから、本当に多くのことを学んできました。僕のキャリアは、常に新しいサウンドや体験を追い求めることを軸に築かれてきたものです。そこで得た学びを、今の自分のすべての制作に広げていくよう心がけています。どの楽曲にも、これまで一緒に制作してきた人たちや、そこから受けた影響が必ず息づいています。

ーK-POPの制作現場で特に印象的だった点は?

JENNIEやBLACKPINKと一緒に制作できたことは、本当に楽しかったです。僕が持ち込んださまざまなアイデアやジャンルに対して、とてもオープンに向き合ってくれました。BLACKPINKの「Jump」には、ドリル、ジャージー・クラブ、スピード、ガラージといった要素が盛り込まれていて、一般的なポップ・トラックとはかなり違う、クレイジーな仕上がりになっています。それでも彼女たちはリスクを取って挑戦することを選んでくれたし、その結果はしっかり報われたと思います。

ー創造性を枯らさないために意識していることは?

自分が本当に惹かれる新しいサウンドやアーティストを、常に探し続けています。耳と直感、そして「好き」という感覚に従うことで、たくさんのクリエイティビティを見つけてきました。自分の嗜好に正直であることを信じる。それが、創作を続けるうえでいちばん大切なことだと思っています。

ー「Diplos Run Club」など、音楽以外の活動も注目されていますが、フィジカルな健康と創作活動の関係についてどう考えていますか?

フィットネスは、ツアー中やスタジオでエネルギーを保つうえで欠かせないものです。スケジュールがどんなに忙しくても、ランニングやヨガ、サウナなど、できるだけ何かしらのワークアウトを取り入れるようにしています。Run Clubなら、運動もできるし、その流れで汗だくのDJセットもできる。その両方を一度に叶えられるのが魅力ですね。

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ー若い頃の東京での経験は、今のあなたにどんな影響を残していますか?

東京は、僕にとって本当に特別な場所です。ここに住んでいた頃の僕は、若くてお金もなく、自分の人生をどう生きるか必死に模索していました。恵比寿でウェイターとして働きながらお金を貯め、パソコンで作った最初のデモをダブプレートのレコードにした。それをアメリカに持ち帰ったことが、音楽家としてのキャリアの始まりでした。僕は東京という街の”生徒”だと思っています。東京は、自分自身と自分の音楽、その核となる存在です。20年以上、日本を訪れ続けていますが、戻ってくるたびに、この場所がやっぱり大好きだと感じます。

ー2025年12月の新宿・歌舞伎町でのフリーライブについて、何を感じましたか?

とにかくエネルギーが凄まじかった。通りという通りが人で溢れ、オーディエンスは延々とパーティーし続けていました。日本の観客は、いつだって最高です。この夜は、Major Lazerとして『GYALGEBRA』をリリースして以降、初期のパフォーマンスのひとつでもありました。新しい楽曲が、ライブにまったく新しいエネルギーをもたらしてくれています。今年用意しているショーには、まだみんな心の準備ができていないかもしれません。

ーアバンギャルディ(avantgardey)との共演から受けた刺激は?

アバンギャルディは本当に最高でした。「MINISKIRT」が持つ、ハードコアでアップビートなエネルギーを完全に理解していたと思います。正直、彼女たちの勢いに、僕が必死で食らいついたという感じですね。

@diplo Everybody jump @アバンギャルディ avantgardey @MAJORLAZER ♬ MINI SKIRT - Major Lazer & Diplo

ー現在の日本の音楽・ダンス・クラブカルチャーをどう見ていますか?

日本のクラブカルチャーは、世界でも屈指のクールさを誇っていると思いますが、まだ正当に評価されていない気がします。東京を訪れるたびに、信じられないようなDJセットに出会えるし、実験的な試みが本当に盛んです。世界中の最先端を走るDJたちも、東京ではあえて小さな箱で、いちばん尖った新曲を試している。東京で夜を過ごすたびに、必ず何か新しい発見がある。その感覚が大好きなんです。

Diplo

『d00mscrvll』

配信中:

https://hypeddit.com/diplo/d00mscrvll