YOMIKO 都市生活研究所は1月21日、住民による「愛着」や「誇り」などの街への評価を明らかにする「シビックプライド調査」の結果を発表した。調査は2025年11月、全国の人口10万人以上の278自治体(東京都区部はすべての区を対象)に居住する20~64歳の男女49,778名を対象にインターネットで行われた。
シビックプライドとは、その都市に対する誇りや愛着のことで、都市をより良い場所にするために自分自身が関わっているという当事者意識に基づく自負心のこと。近年まちづくりや自治体政策づくりにおけるキーワードとして注目を集めており、国土交通省も都市再生の視点でシビックプライドの重要性に着目。2024年11月からの検討会議のテーマにシビックプライドが選ばれている。さらに2025年5月16日の懇談会では、中間取りまとめ「成熟社会の共感都市再生ビジョン」を公表。ここでも、都市再生の今後の方向性として、シビックプライドなど"地域の個性と価値"に着目したまちづくりを掲げている。
同社は2008年より、シビックプライドに関する研究を行っている。関東・関西の調査・ランキングは定期的に実施していたが、今回初めて全国規模、278自治体の調査を実施した。
総合ランキング1位は「中央区」
総合ポイントは、「愛着(この街に愛着を持っている)」「誇り(この街に誇りを持っている)」「エンゲージメント(この街と自分の人生は切り離せない)」の3指標のスコアを足し上げ300点満点化、小数点第2位までを算出したものとなる。
総合ランキングでは、2021年にトップだった東京都中央区が、初の全国調査でNo.1に返り咲いた。中央区といってまず思い浮かぶのは、日本を代表するショッピングエリア・銀座や、勝どき・晴海エリアのタワーマンションが林立する近未来的な都市の風景、超都心ならではの抜きんでた交通アクセスの良さ、日本橋エリアに残る歴史的建造物や、歌舞伎座などの伝統文化がある。これらに関する評価が高かったのはもちろんだが、今回No.1獲得を牽引した要素は「歩きたくなる個性豊かなまちの魅力」と「公共施設や公園に対する評価の高さ」だった。例えば人形町や八重洲、八丁堀などは江戸時代から受け継がれてきた小路や老舗もあり、商店街や個人商店も充実しているなど、歩いて楽しく、個性豊かで人に寄り添った街並みが多く残っている。また、2022年にオープンして人気の「本の森ちゅうおう」をはじめ、住民がボランティアとしてサポートしている公民館やスポーツ施設での習い事支援、整備され快適な憩いの場になった「隅田川テラス」、「太陽のマルシェ」「大江戸まつり盆踊り大会」に代表される地域イベントの存在は、日々の暮らしを豊かに彩っている。これらが結果として住環境やワークライフバランスに対する満足度の高さ、継続居住意向の高さなどに繋がり、シビックプライド向上に貢献していると考えられる。外から見ると華やかな商業都市のイメージが先に立つ中央区だが、その実、毎日の暮らしに寄り添った生活者目線の丁寧なまちづくりがなされていることがわかる。
高槻市(大阪府)が3位に大きく躍進
過去3回は30位以内に名を連ねながらも、上位進出には及ばなかった高槻市。初の全国調査で評価が高まり、全国3位へ躍進。関西ではこれまでTOPだった西宮市(今回全国6位)を抜き、堂々の1位となった。
これまで高槻市は、大阪・京都のベッドタウンとして、交通利便性や生活利便性の高さから「住み続けたい」街として評価されていた。今回さらに、「遺跡」という歴史資産を活用して街の魅力を伝える"ストーリー性"が高まった点に加え、かねてより進行している駅前再開発、地域密着型のショッピングセンターの開業、府内初となる子どもの医療費完全無償化など、暮らしやすさをアップデートしつづけている点がランキング向上に貢献したと考えられる。
ウェルビーイングに関するほとんどの項目について全国平均を大きく上回った高槻市は、コンスタントな努力の積み重ねにより、すべてがバランスよく整った街として住民の評価を獲得した街といえる。
20代・30代のTOP3は関西圏の都市が独占
20代・30代TOP3は、1位高槻市、2位明石市、3位西宮市と関西圏の都市が占めた。逆に50代以上の場合、1位中央区、2位文京区、3位渋谷区と東京都心で占められ、年代によって対照的な結果だった。TOP3の関西都市における20代・30代が、地域へのコミットメント(地産地消や地域のための活動参加、地元企業応援)が高いのに対し、50代以上のTOP3の都市は、自分好みの過ごし方ができるか(お気に入りの風景がある、散策や散歩をする)が若年層に比べて高い傾向にある。
また20代・30代ランキングでは、TOP10内に3つ、九州エリアの都市が入るなど(鹿児島市、福岡市、那覇市)、東阪以外の都市の台頭が目立つ。
男性1位は「文京区」、女性1位は「港区」
総合では7位だった文京区が男性でTOPに。女性1位は総合2位だった港区だった。文京区では、地域との関わりや伝統・歴史・文化の豊かさが高く評価され、港区は新しい変化や刺激・情報に触れることができるという点で平均を大きく上回る評価を得た。また男性では、総合26位だった高崎市(群馬県)が4位に順位を大きく上げるとともに、TOP10のうち5つが関西圏の都市だったのに比べ、女性ではTOP10に関西圏の都市は2つのみ、札幌市や函館市など北海道エリアの都市が入るなど、男女でランキングの顔ぶれが異なる結果に。
今後もこの街に住み続けたいTOPは「鎌倉」に
定住に関わる「今後もこの街に住み続けたい」のTOPは「鎌倉市(神奈川県)」だった。鎌倉市は「この街と自分の人生は切り離せない」「この街をもっと良い街にしたい」もTOPと、住民とまちとのエンゲージメント・まちへの関与意向の高さが継続居住意向につながっているといえる。
また、サンプル数が少ないので参考値ではあるが、鎌倉市は人口10万人以上の278自治体において、女性でTOP、20代・30代でもTOPと、若年女性の地域住民からの支持が高い点も特徴だ。


