京王電鉄は、新型通勤車両2000系のデビューに先立ち、1月17日に報道関係者向け試乗会を実施した。若葉台車両基地から橋本駅まで京王相模原線を走行して1往復し、ひと足早く新型車両の乗り心地を体験した。2000系は1月31日の運行開始を予定している。
新型車両2000系は10両固定編成。2027年3月までに計40両(10両編成×4編成)を導入し、旧型車両の7000系を置き換える。「もっと、安全に、そして安心して、これからもずっとのっていただける車両を。全ての世代に、やさしく、そして、ワクワクしてもらえる車両を」というコンセプトを掲げ、前面・側面ともに円をモチーフにしたデザインが特徴となっている。
このデザインは、京王線ユーザーや社員に行ったアンケートや座談会をもとに決定したコンセプトに合わせ、車両メーカーのデザイナーが数点製作。その中から「感性AIアナリティクス」(京王グループ会社の感性AIが提供)を活用し、コンセプトに最も適したデザインとして採用に至った。「感性AIアナリティクス」の活用は京王電鉄において初とのこと。
京王電鉄初であり、2000系における最大の特徴といえる大型フリースペース「ひだまりスペース」は5号車に設置された。京王線の各駅でエレベーター設置率の高い位置が5号車付近となっていることによるものだという。子育て世代からシニア世代まで、あらゆる年齢層の利用者が安全・快適に利用できるように、座席ではなく、手すりと衝立を設置している。窓を大型化し、こどもたちが車窓風景を楽しみやすくなるようにした。
「ひだまりスペース」の愛称は、2025年5~6月に行われた愛称投票で最も多くの票を得たことにより決定。大型窓を採用し、たくさんの光が集まる「ひだまり」となること、利用者の心が休まるような「ひだまり」となることをイメージした名前になっている。
環境性能においては、フルSiC素子のVVVFインバータ制御を搭載。非VVVF車両と比べて省エネ性能を約70%、7000系のVVVFインバータ制御と比較しても約20%向上させている。各車両に「ナノイーX」(パナソニック)方式の空気清浄機を2台ずつ搭載している。
当日は試乗に先立ち、京王電鉄の佐々木昌氏(鉄道事業本部 車両電気部 車両企画担当課長)が概要説明を行い、質疑応答にも対応した。窓に関して行った施策として、こどもが立っていられるように、「ひだまりスペース」に太めの手すりを設置。当初から想定していたわけではないとはいえ、混雑時には窓の保護にも寄与するかもしれないとのことだった。2000系では、「ひだまりスペース」に加え、乗務員室後方の窓も縦に拡大している。こどもたちが少しでも車窓の景色を見られるように考慮したという。
京王電鉄は従来の優先席・フリースペースに「おもいやりぞーん」という名称を用いている。2000系も「ひだまりスペース」以外の優先席・フリースペースに「おもいやりぞーん」の名称を引き続き使用するとのことだった。
車両概要の説明等が終わり、若葉台車両基地から2000系に乗車。車内も外観と同じく、円をモチーフにしたデザインを随所に取り入れている。ドアの前や、一般席・優先席間の床の色も弧を描いた境目になっている。座席はオレンジ色(優先席はピンク色)のモケットに水玉模様を配したデザインで、弾力がありつつも適度にしっかりした座り心地で身体を支える。同じメーカーが製造したE131系(JR東日本)や71-000形(りんかい線)と似た座り心地を感じた。
5号車「ひだまりスペース」の通路中央に、動線と機能性を考慮した波形の衝立が設置されている。佐々木氏の説明通り、大型窓にも手すりが設置されているので、手すりにつかまったり、衝立に腰掛けたりしながら車窓風景を眺められる。ちなみに、各車両の優先席・フリースペースの中で、「ひだまりスペース」の床のみクレヨン風の丸い模様が描かれていた。
車両基地を発車した2000系は、若葉台駅に入線した後、進路を切り替え、橋本方面へ発車。ホームの乗車位置で列車を待っている人々も、2000系に珍しそうな視線を向けていた。この先、車両基地に戻るまでドアは開かないが、通常の特急と同じ停車駅で運転停車しながら進む。VVVFインバータ制御装置は日立製作所製で、5000系とほぼ同じ音を発していた。音が気になる場合は、モーターのない1・4・5・7・10号車に移るといくらか静かに過ごせると思う。
20分程度で橋本駅に到着し、すぐに折り返した。相模原線はアップダウンの多い丘陵地帯や高架区間を走行する分、車窓からの見晴らしが良く、速度も速い。「ひだまりスペース」の大型窓から、流れる車窓風景を大画面のように楽しめるだろう。京王堀之内駅を通過する直前、沿線住民と思われる親子が2000系に駆け寄る場面も見られ、沿線から注目されていることもうかがえた。橋本駅から約20分で若葉台駅および若葉台車両基地へ到着した。
今回の試乗会には、「ひだまりスペース」や乗務員室後方の窓サイズをわかりやすくするため、都営新宿線沿線に住む男の子と父親、西武線沿線に住む女の子と母親の2組が、こどもたちを代表するモデルとして同乗していた。2人のこどもたちに「ひだまりスペース」の感想を聞いたところ、2人とも「とても楽しかった」と話していた。男の子からは、「車いすの人などに便利だと思う」との発言も。乗務員室後方の窓に関して、女の子は線路が見えなかったと話していたが、遠くの景色は2人ともよく見えたとのことだった。
2人の親からも、こどもたちが景色を見たがるということで、「手すりにつかまって(景色を)見られたので安全」「親から見ても安心して楽しめる」といった感想を聞くことができた。2組とも「こどもが鉄道好き」あるいは「電車移動が多い」とのことで、今回、2000系に試乗できると知ったとき、こどもたちは非常に喜んでいたとのことだった。
新型車両2000系は1月31日に京王線で運行開始する予定。同日から「京王アプリ」に車種表示モードが追加され、2000系・5000系の列車走行位置が各車両のアイコンで表示される。スマートな外観と上品な内装を有する5000系とは対照的に、2000系は明るい色とラウンドデザインが個性的で、かわいらしい車両と見受けられた。鉄道ファンのみならず、沿線住民らの注目も広く集まるだろう。
ただし、運行開始直後は「ひだまりスペース」に多くの利用者が集まることも予想される。大勢で固まってしまうと通行の妨げにつながるため、譲り合っての利用をお願いしたい。

















