た〜か〜の〜つ〜め〜」でお馴染みのアニメーションシリーズ『秘密結社 鷹の爪』の20周年キックオフイベントが東京・六本木のTOHOシネマズ六本木ヒルズで開催された。

  • アニメーションシリーズ『秘密結社 鷹の爪』の20周年キックオフイベントが東京・六本木のTOHOシネマズ六本木ヒルズで開催

    アニメーションシリーズ『秘密結社 鷹の爪』の20周年キックオフイベントが東京・六本木のTOHOシネマズ六本木ヒルズで開催

今年20周年を迎える『秘密結社 鷹の爪』は2026~2027年を「鷹の爪 20th ANNIVERSARY YEAR」と位置づけ、年間を通してさまざまな記念プロジェクトを展開していく。その幕開けとして、これまで数多くのイベントを開催してきた鷹の爪団の聖地とも言える六本木ヒル​ズにて『2​0周年だよ 団員集合! ギヒルズ実験劇場〜AIインタラクティブMOVIE上映会〜』を実施した。

  • AIインタラクティブ映画システム「HAIRICOM(ハイリコム)」を導入し、観客がリアルタイムで映画に参加できる

このイベントでは、本作品を展開するディー・エル・イー(DLE)とスタートアップ企業であるAI VOLTが共同開発した独自のAIインタラクティブ映画システム「HAIRICOM(ハイリコム)」を使った作品『犯人はあなただ! でも間違ってたらごめんなさい』を上映。これまでもFlashアニメーションの地上波放映、映画のサブタイトルをネーミングライツ化、協賛企業の提​供獲得大作​戦など、常識破りなアイディアを実現してきた『秘密結社 鷹の爪』だが、今回は、劇場内でスマートフォンを操作し、リアルタイムで映画に観客が参加できるという新しい体験を提供していた。そこで具体的にどんなことが行われていたか、簡単に解説していこう。

まず、参加者は事前に特設サイトにて登録を行う。登録終了後、簡単なアンケートに回答し、アバターの作成に入る。このアバターが、映画本編に登場し、キャラクターの一人として物語の中に組み込まれるというわけだ。アバター作成は、まず、自分の顔写真を撮るところから始まる。続いて名前などアバターの属性を決めるアンケートに答えていく。質問では出身地や職業を聞かれるが、サンプルの回答が「島根」や「戦闘主任」など、実に鷹の爪団らしいものになっている。作成途中に挟まる解説動画も鷹の爪団・戦闘員の吉田くんが登場するなど、ファンなら見逃し厳禁ものだ(スキップも可能となってはいるが)。このアンケートは劇中の台詞に反映されるので、真面目に答えたければ真面目に答えて良いし、ネタを投下したいのであれば、ネタっぽい回答を心がけたいところである。最後に音声登録(録音)を行う。ここでは第5期『秘密結社鷹の爪EX(エクストリーム)』の第29話「冬の冷やし中華」を起こしたテキストを読み上げる。全部読むには10分弱かかるが、途中でやめても音声は生成される。もちろん全部読んだほうが精度は上がる。

  • 写真を撮ってアバターを生成

    写真を撮ってアバターを生成

  • 属性アンケートのサンプルも実に鷹の爪団らしい

    属性アンケートのサンプルも実に鷹の爪団らしい

  • 音声収録には第5期『秘密結社鷹の爪EX(エクストリーム)』の第29話「冬の冷やし中華」を起こしたテキストを読み上げる

    音声収録には第5期『秘密結社鷹の爪EX(エクストリーム)』の第29話「冬の冷やし中華」を起こしたテキストを読み上げる

これら3つの作業が反映されて、アバターが作中に登場する。メディアおよび関係者向けに実施された試写では、上映前にFROGMAN監督(DLE代表取締役CEO・CCO)から、もし自分が登場したら、驚きの声をあげてもらって構わない、それであらかじめ用意したのでなく、リアルタイムで生成されているのが分かると思うのでと説明する一幕も。

  • 予算がどの程度使われているのか、ゲージで表示される「バジェットゲージ」シ​ステムに「投げ銭」システムを導入

今回の試みで目玉はもう一つ、「投げ銭」システムの導入だ。これまでの映画版『秘密結社 鷹の爪』では、予算がどの程度使われているのか、ゲージで表示される「バジェットゲージ」シ​ステムが利用されてきた。これは、豪​華な演出な​どが施されると急激に​ゲージが下​降する、企​業の宣伝な​どを入ると​ゲージが上​昇するとい​った具材に映​画の予算が​今どの程度​残っている​のかを作品​を鑑賞しながら視認で​きるというものだ。

今回はシステム登録時やグッズ購入で付与されるポイントを、映画内で「投げ銭」のように使うことで、バ​ジェットゲ​ージが上が​り、投げ込​まれたポイ​ントに応じ​てシーンが​分岐し、映画​で視聴でき​るシーンに​影響を与え​る。また、支援ポイントに応じてイラストが動くエフェクトが購入でき、映画内に表示できるほか、エンドロール中の大​きさが変わ​るなど、観​客の行動が​直接映画を​変化させる​仕掛けが盛り込まれている。

もともとDLEは大手のアニメーションスタジオでなく、オルタナティブな制作レーベルとして出発し、その時代その時代において新しい技術を取り入れ発展していったという経緯があり、その流れを汲んでのAI導入は説得力がある。FROGMAN監督自身、AIには大いなる可能性を感じているようで、それにより映画の鑑賞スタイルも変わっていくのではないかという考えを示している。従来は席に座って、スクリーンの映像とスピーカーから流れてくる音を受動的に鑑賞するだけだだったが、双方向の参加型への転換が図れるのではないかということだ。

上映された作品は、単に面白いというだけでなく、映画の「形式」を問うものになっていた点も興味深い。劇場も例えば、MX4Dのようなアトラクション型の機構を導入したりといった歴史があるが、本作は、上映の形態そのものを問いかける内容に仕上がっていた。

  • 上映だけでなく、トークや展示も

  • トークに登壇したAI VOLTの代表取締役・軍神未来氏

イベントは、上映だけでなく、FROGMAN監督とAI VOLTの代表取締役である軍神未来氏のトーク、作中のキャラクターである総統、吉田くん、レオナルド博士の着ぐるみに、FROGMAN監督との記念撮影、『秘​密結社 鷹の爪』の人気回「ポイポン」や「ジェイポン」にまつわる展示など20周年のキックオフにふさわしい鷹の​爪団の魅力​が詰め込ま​れた内容となった。

イベント終了後、FROGMAN監督にいくつか質問をぶつけてみた。

  • FROGMAN監督

    FROGMAN監督

ーーまず、出てくるキャラクターが変わる、物語の展開も変わる、エンドロールも変わるとなると、映画自体の尺が毎回変わるのではないだろうか。

FROGMAN 変わります、毎回変わります。上映回ごとに尺が微妙に違うんですよ。その場合、終映時間が毎回変わるってことにもなりますが、解決法として、例えば、今日も観客の方と吉田くんの掛け合いがありましたけど、ある程度の話す言葉の内容を、基本こういう切り口で質問してください、それに対してはこういう切り口で返してくださいといった風に、話のベクトルは決めてあるんですよ。だから明後日の方向に広がって長くなることはまずありなく、1分で済むところが20分になるといったことは起こりません。例えば、観客の皆さんの名前が長いのと短いのがあると思うんですけども、1分が1分5秒になるくらいの差でしかないので、そこは映画館での上映なら許容範囲になるのかなと。テレビだと厳しいと思いますが、上映開始時間に変更が求めらるような問題にはならないような策は施してあります。

ーー上映の際、映写技師とは異なる特別なスキルを持ったスタッフが必要なのだろうか。

FROGMAN 今の段階はそうですね、特別な技術というか、今回に関してはもう初めてのことなので、どうしても専属のスタッフがいないと成り立ちませんでした。おそらく1年後、2年後の段階ですと、まだ専任のオペレーターは1人つけなきゃいけないと思われます。ただ、それは使い方を覚えている、少し知識のある方でも対応ができるレベルですね。ビジネス的に成立するなら、将来的には全自動で中央コントロールみたいな感じで遠隔操作するような形にはできるのではないかと思います。

ーーただ、上映作品の終わりにもあったよう、2027年には『秘密結社 鷹の爪』最後の映画を制作する旨が伝えられている。となると、現状では、各上映劇場に人員を派遣するということになると予想されるが。

FROGMAN 痛いとこついてきますね(笑)。 一方で、果たして今までのような、特に鷹の爪団みたいな作品を全国150館開けるべきなのかどうかという議論もありまして。いわゆる東名阪ぐらいのところを開けた上で、僕ら考えているのは実はオンラインでの上映だとか、もうそういうふうに割り切っちゃってもいいんじゃないかと。例えば組む相手がいきなり大手のストリーミングサービスで、そこのオリジナルでやってもいいんじゃないとか、そこら辺はすごく柔軟に考えています。

ーーまた、特別なスタッフを派遣することで、その人件費が鑑賞料金に跳ね返ってくることも予想される。

FROGMAN その辺は未だ何とも言えないというか、実際に劇場さんとやりましょうという話はしていないので、そこに関しては僕らも分からないです。おそらくですが、上映とイベントがくっついているような形式になるので、そうするとお土産付きとかで多少料金を上乗せするとかで相殺する格好になるんじゃないかなと。特に映画って、今までの鑑賞するものから体験するものになってきて、作品と言うよりはイベントになってきている。ライブコンサートなどとあまり変わらないようなことになってきていますよね。鷹の爪団みたいなお祭り映画は、単に作品を1,800円とか2,000円で鑑賞してくださいというのではなく、オマケが付いてお土産付くのだったら5,000円でもいいよとか、キャラに会えるんだったら1万円でもいいよという傾向があるので、料金に関してはあまり普通の映画の作品とは同じ並びで考えられないという認識でいます。

なるほど、これはつまり「体験」を売りにするという発想だ。一つ前の質問ではオンラインでの上映も想定していると発言してはいるが、劇場に来てもらうこと、劇場でしか得られないものを大事にしているという印象を受ける。FROGMAN監督は、今回の上映には、完成度で言うとまだ正直70点ぐらいと漏らしていた(BGMのフェードアウトの仕方がもう少し気持ちよく終わらないかなとか、カットの繋ぎも0.2秒後ろにズラしたいなとか、細かい点で気になることが結構あるそう)が、満足度で言うと100点満点なのだそうだ。となれば、あとはそれら細かい点を追い込んでいくだけなので、2027年公開の最終作(某アニメ映画監督を意識しているそう)にも大いに期待したいところである。始まったばかりのアニバーサリーイヤーは、DLEにとって、鷹の爪団にとって、新たな挑戦の年となることだろう。