年末年始に帰省し、久しぶりに顔を合わせたことで、離れて暮らす高齢の家族の体力や生活ぶりに不安を覚えた人もいるはず。一方、玄関まで小走りで迎えてくれる犬やこたつで丸くなる猫が日々のそばにいる実家では、その存在が運動習慣や気持ちの張りをつくり、結果的に健康を支えている可能性があるといいます。

今回は、「飼い主の入院や死亡により犬猫が飼育放棄されないようにしたい」をテーマにペット後見について解説する『自分の死後も愛犬・愛猫を幸せにする方法』(ワニブックス)の内容から一部を抜粋してご紹介。

高齢者のペット飼育が健康にもたらす3つの効果

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ペットの飼育で得られる高齢者の健康効果

高齢者のペット飼育と健康の関係性は全世界で研究され、効果が証明されています。

第一の効果は運動機能の維持です。

65歳以上の日本在住の男女約7,900人を対象に、犬猫の飼育と、高齢者のフレイル(虚弱)発症の関連を調べた研究では、犬を飼っている高齢者は、犬を飼っていない高齢者に比べ、フレイルの発症リスクが16%低下することが示されています(Taniguchi et al., 2019)。犬を飼うと毎日散歩に行かねばならないという使命感が生まれます。1回30分の散歩で2000〜3000歩、2回ならその倍の歩数になります。この毎日の運動習慣が健康の維持にプラスに働きます。別の研究では1日5000歩以上歩く人のフレイル発症リスクは、5000歩未満の人に比べて約半分になる事が示されています(Atsumu et al., 2019)。

第二の健康効果は、認知症の発症リスク低減です。

米国在住の50〜100歳の637人の中高年齢者(平均年齢68.3歳)を対象に、ペットの飼育と認知機能の変化との関連について長期間(最大13年間、平均7.5年間)にわたり追跡調査を行ったところ、ペットを飼っている高齢者は、飼っていない人に比べて、記憶力、注意力、言語能力、処理速度の低下が緩やかになるという研究結果が得られました。さらに、犬の散歩をしている人は、していない人に比べて、注意力や短期記憶の低下が有意に遅いこと、また猫を飼っている人は、記憶力や言語能力の低下が遅い傾向が見られました(Friedmannet al., 2023)。

国内では、65歳以上の日本在住の男女1万1194人を対象に、ペット飼育と認知症発症リスクの関連を調査した研究があります。その研究結果では、犬を飼っている高齢者は、飼っていない人に比べて認知症の発症リスクが約40%低下し、犬を飼っていて定期的な運動習慣がある人は、犬を飼っておらず運動習慣がない人に比べて認知症発症リスクが約50〜60%低下することが示されています(Taniguchi et al., 2023)。この研究では猫の飼育の有無と認知症のリスクについても評価されていますが、猫については有意な差は見られなかったとのことです。

第三の健康効果として挙げたいのが精神への好影響です。

「病は気から」は古くからある言葉ですが、誰もが一度は思いあたる経験をしているでしょう。散歩をともなう犬の飼育が健康に良いのは理解しやすいですが、猫の飼育でも健康が増進されるのはなぜでしょう。これは研究というより個人的考察ですが、言葉は通じなくてもペットとともに生きることで心は癒やされます。この子のためにしっかりしようという使命感や責任感が生まれ、それによって生きる意欲が増します。そうした精神への影響が、健康増進に強く作用していると私は考えます。

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著者:奥田 順之
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