
KIRINJIが前作『Steppin' Out』から約2年半ぶりとなる、通算17枚目のニューアルバム『TOWN BEAT』をリリースした。V6などへの提供曲のセルフカバーを含む全9曲は、KIRINJIとしてこの10年で突き詰めてきた現代的なサウンドメイクと、兄弟時代のキリンジを想起させるオーガニックなポップセンスが交差し、原点回帰とも近作のモードとも一線を画すユニークさを獲得している。さまざまな新機軸の数々から、キリンジの初期作を支えたマエストロ・冨田恵一との再タッグに至るまで、堀込高樹に制作背景を語ってもらった。
馴染みある新鮮さと〈タウン〉の感覚
―ニューアルバムは率直に驚きました。懐かしさを感じる部分もありますが、後ろ向きな懐古モードではまったくなくて。絶妙すぎるバランスだなと。
堀込:割と聴きやすい曲が集まってるし、革新的とか斬新みたいな感じとはちょっと違うと思うんですよね。どれもポップスとしてよく仕上がっている。ただ、ちょっとずつ新機軸を取り入れていて。例えば「ルームダンサー feat. 小田朋美」のような曲調やリズムパターン、ハーモニーを取り入れたのって実は初めてなんです。サビの中に転調があるけどキャッチーで、ステレオラブっぽい感じもあって。
『愛をあるだけ、すべて』や『cherish』の頃というのは、明らかに大きな変化があったじゃないですか。今回はそこまで変化の幅があるわけではないけど、今までやり慣れたことの中から新しいものが出てきた感じがします。馴染みがあるんだけど新鮮な感じがする。
―昨年1月の取材で、「最近はアコースティックというか、もうちょっとアナログっぽい感じに興味の対象が向いてきている」とお話していましたよね。先行シングルの「歌とギター」を制作している時期だったと思うんですけど。
堀込:(昨年3月に)「歌とギター」をシングルで出した時点では、テーム・インパラみたいなサイケ感、コンプレッサーがかかったような音がかっこいいかなと思って。ミックスもそういう感じにしてもらったんです。でも、そのあと曲作りを進めたりライブをやったりしているうちに、「もう少しナチュラルな感じのミックスがいいな」と思うようになって。(『TOWN BEAT』への収録にあたって)「歌とギター」のミックスをやり直したのもそれが理由です。今回は録り音もミックスも自然な感じにしようと。
―「馴染みがあるけど新鮮」という話を掘り下げると、昔のキリンジっぽさを感じる瞬間が何度かあって。
堀込:ありますよね。
―でも、今回の新作みたいな曲は、過去にありそうでなかったような気もするんですよね。
堀込:そうなんですよ。「素敵な夜」が「往年のキリンジを彷彿させる」みたいに言われるんですけど、こんな曲あったっけ?って(笑)。「気になる週末」だったらわかります。冨田(恵一)さんが弦アレンジをやってるし、ああいうミディアムテンポの明るいソウルっぽい曲はたしかにあったと思うので。
―今回は大半の曲で、高樹さんが自分でベースを弾いていますよね。KIRINJIがバンド体制からソロプロジェクトに移行したあとも、千ヶ崎学さんだけはほぼ専属でベースを担当していたので意外でした。
堀込:作業プロセスを変えてみたかったんですよね。アレンジは別として、書く曲そのもののスタイルが劇的に変わったりすることはないから、新鮮な気持ちで制作し続けるためには、何かしら新しいトライをしないとと思っていて。それが今回はベースだったということですね。そこまでテクニカルなことをやるわけでもないので、自分でがんばって練習して弾いてみようと。

Photo by Kana Tarumi
―『TOWN BEAT』っていうタイトルはどこから?
堀込:「ルームダンサー」のビートがモータウンじゃないですか。
―スプリームス「恋はあせらず」ですよね。デッデッデーっていう。
堀込:だから最初、「モータウン・ビート」っていう仮タイトルだったんです。でも、その名前で作業してたら絶対モータウンのアレンジに引っ張られると思って、〈MO〉を取った「タウン・ビート」で制作を進めて。そこからアルバムタイトルを決めようとなった時に、この言葉がアルバム全体をうまく言い表しているような気がしたんですよね。ジャケットをお願いした安藤瑠美さんの写真も〈タウン〉な感じがするし、歌詞もそう。〈シティ〉というよりも学校とか団地、もっと身近なところで起きている感じがして。生活の匂いがするというか。そんなふうに条件が揃って、これしかないってなりました。

『TOWN BEAT』(左上)と先行シングル「ルームダンサー feat. 小田朋美」「素敵な夜」「ベランダから」のアートワーク
―『愛をあるだけ、すべて』『cherish』の頃はアーバンな雰囲気もありましたが、ニューアルバムは市井の日常に根ざした感じがしますよね。〈CITY POP〉とも一線を画す〈TOWN BEAT〉。そういった肌感覚は、高樹さんが埼玉県坂戸市のご出身であることも関係あるのでしょうか? 初期のキリンジにも「ニュータウン」という名曲がありますが。
堀込:埼玉生まれというのは、ずっとついて回りますよね。今は東京に住んでますけど端っこのほうですし。どこが東京の中心かは難しいところですが、港区って感じでもないし、下北沢あたりとも距離がある。そう考えると自分のマインドは〈タウン〉なんでしょうね。
新規軸とセルフカバーでの刷新
―ここからは収録曲について。まずは昨年3月に先行リリースされた「歌とギター」。この曲がアルバム全体の方向性を規定していったとも言えそうですか?
堀込:そうですね。生演奏を主体にして、キーボードやエレクトロニクスに頼りすぎないようにしようと。そこはこの曲を作っている時点で、なんとなく決めていたかもしれない。
―KIRINJIがここ数年取り組んでいる、弾き語りツアーでの心境を歌った曲ですよね。実体験がそのままリリックに反映されている部分もあるのでしょうか?
堀込:多少は脚色してますよ。〈カステラ ふた切れ〉だけじゃなくてバナナも食べますし。エスプレッソはライブ前に飲まないですね。〈ホテルのベッド〉に対して韻を踏む言葉を考えただけで、普通にドトールでコーヒーを買ってます(笑)。でも大方、ここで歌っているような感じですね。慌ただしく車に乗って(次のツアー先に)移動、みたいな感じ。
この曲は先にアレンジまで決めていってから、最後に歌詞を書いたんです。だから弾き語りの歌なのにエフェクティブだし、バンドサウンドなので矛盾している気もするんですけど、まあいっかって(笑)。仮に弾き語りをモチーフにした歌詞が先にできて、そこに寄り添ってアンサンブルを作っていったとしたら、ここまでパーカッションが鳴ってなかったと思うんですよね。それだと地味な曲で終わったかもしれない。
―mabanuaさんとの初コラボも実現しています。イントロから素晴らしいドラムですよね。プロデューサーとしての視点も感じる、曲を引き立てるプレイだなって。
堀込:そこは彼が考えてくれました。ずっとお願いしたいと思ってたんですけど、なかなかタイミングが合わなくて。今回ようやく実現しました。

2025年7月25日、フジロックフェスティバル '25にて(Photo by Kana Tarumi)
―新作の先行配信リリース第1弾は「ルームダンサー feat. 小田朋美」。小田さんがKIRINJIのライブサポートを務めるようになって早3年、こうしてフィーチャリング曲が作られたのも自然な流れだったのかなと。
堀込:「せっかく小田さんに頼むならシングル曲にしたい」と考えていたときに、ちょうど出来上がった曲ですね。小田さんとモータウン・ビートという組み合わせも新鮮だし、(小田がメンバーの)CRCK/LCKSもポップだけど、この曲にはまた違う明快さがあるから楽しいんじゃないかなと思って。
―2021年よりKIRINJIがソロプロジェクトになってから、ライブサポートの編成でしばらく試行錯誤がありましたが、近年は小田さんが定着してますよね。改めてどこがよかったのでしょう?
堀込:まずはルックス、佇まいがいいですよね。そこは重要。もちろん歌もいいし、楽器も上手い。厄介なフレーズを(鍵盤で)弾きながらコーラスもできたりするので。さらに、ライブのアレンジを聴いて「どれがいる、いらない」みたいなことも提案してくれるんですよ。そこは宮川純くん(Key)とのコンビネーションも大きくて、同期音源を用意してみたけど、二人が弾いてくれるのでいらなくなったということが結構あるんですよね。それくらい音楽に対して積極的で、そこが非常にありがたいです。

左から小田朋美、So Kanno(Dr)、堀込高樹、宮川純(Key)。2025年10月14日『KIRINJI × ハナレグミ』、Zepp DiverCity(TOKYO)にて(Photo by Kana Tarumi)
―「ルームダンサー」のコーラスも、小田さんが7割ほど用意してくれたそうですね。
堀込:7割どころじゃないかも(笑)。特にサビ前のコードはちょっと複雑なんですよ。そこのOoh Ahhの白玉(長く伸ばす)コーラスも、普段だったら自分で頑張って歌うんですけど、小田さんがバッチリなものを上げてきてくれて。お願いした箇所のほかにもたくさん声を入れてくれて、それによって曲が華やいだから本当に助かりました。
―ザ・スミス的なギターのアルペジオ、というのもポイントだったとか。
堀込:そうそう、「This Charming Man」みたいな。本当にスミスっぽいかはわからないですが(笑)、エレキのアルペジオがイントロに入った曲を最近やってなかったなと思って。
―〈人には見せられない〉ダンスを家で踊る、という歌詞のモチーフについては、TikTokのダンスブームも念頭にあったのかなと。
堀込:そうですね。今の時代は踊ってる動画をアップする人がたくさんいますが、「上げてないけど踊ってる人」も絶対にいるはず。でも、動画が上がらなければみんな気づかない。本当はいるんだけど目についていない人、見えないダンサーについて歌った曲ですね。
―〈タウン〉感のあるモチーフですね。作詞にも小田さんのクレジットが入っています。
堀込:曲の後半、小田さんが歌ってるパートの〈●●のダンス〉を考えてくれました。
―〈御自愛ダンス〉や〈めんそーれダンス〉は小田さん発案ということですね。他にもさまざまなダンスが登場しますが、絵的にはどんなイメージですか?
堀込:ピナ・バウシュみたいな感じですかね。抽象概念を踊るようなモダンダンス。

2025年11月8日、広州・太空間Livehouseにて(Photo by Kana Tarumi)
―小田さんはもう一曲「LEMONADE」にもフィーチャーされています。2017年に『アイドルマスター』シリーズへ提供した楽曲で、KIRINJIのライブ人気曲としてもお馴染みです。
堀込:お客さんからのウケもいいですし、依頼をいただいて書いた曲なので、普段の自分がやらないことをやってるのが新鮮で。他の曲にはないキャッチーさもあるし、以前から気に入ってたんです。
―今になってセルフカバーしたのはどういう理由が?
堀込:一番大きな理由は、収録曲の数が足りなかったから(苦笑)。でも、ずっと正式なレコーディング作品を作りたかったんですよね。過去にライブ映像/音源ではリリースしてきましたけど。ただ、その時と同じアレンジでスタジオ録音をするのはテンションが上がらないので、テンポ感を生かして人力ドラムンベースみたいな感じにして、ハーモニーもジャズっぽい感じに変えようと。
この曲のベースは僕が打ち込んだもので、伊吹文裕くんがドラムを叩いてるんですけど、二人だけでオケを仕上げてもつまらないかなと思って。Gaku Kanoというジャズの若手に参加してもらいました。
―彼のシンセやボコーダーが効いていて、個人的にはロバート・グラスパー・エクスペリメントのドラムンベース曲「Let It Ride feat. Norah Jones」を少し連想しました。どういう経緯で知り合ったんですか?
堀込:昨年6月にイベントに出たとき、戻り際にファンらしき方に彼の新作CDをもらったんです。「かっこいいので、ぜひ聴いてください」という感じで。ということがありつつ、別の収録曲のリズム録りを終えたあと、帰り道の車で宇多丸さんのラジオ(「アフター6ジャンクション2」)を聴いてたんですよ。そのスタジオライブのコーナーにKanoくんが出ていて。「あ、あのCDもらった人だ。かっこいいな」と思ったんですよね。それで急きょ参加してもらうことにしました。あとから分かったのですが、あのファンらしき人は彼のレーベルの社長だったようなんです(笑)。
Gaku Kanoのアルバム『Experimental Jazz』(2024年)
―もうひとつのセルフカバーが「素敵な夜」。2021年リリースでV6への提供曲、NHK『みんなのうた』のために書かれた曲です。
堀込:当時、井ノ原快彦くんが『みんなのうた』60周年アンバサダーを務めていて。V6が解散する直前だったのもあって、井ノ原くんが僕に頼もうと言ってくれたみたいです。
―『みんなのうた』で流れたのは2番までですが、3番の歌詞はアダルティで衝撃的でした。
堀込:でも、いいんじゃないかなと思ったんですよね。V6のみなさんも大人ですし。
―改めて世に出るにあたって、随所に改変が加えられてますよね。
堀込:リズムを早くしました。LAGHEADSの「どうして髭を? feat. KIRINJI」に参加したとき、あの曲のテンポ感がよかったなと思って。それもあって伊吹くんと宮川純くん、山本連くん(Ba)をお呼びしました。
―LAGHEADSの4人中3人、若いメンバーが集まった曲が「昔のキリンジっぽい」と言われるのも不思議ですね。「昔のキリンジっぽくして」なんてリクエストがあったはずもないでしょうし。
堀込:もちろん言ってないです。「ファンキーな感じでよろしく」でしたね。
―イントロがやや「車と女」っぽいのと、宮川さんが弾くオルガンに因るところが大きいのかもしれないですね。
堀込:ああ。隠し味的には使ってきましたけど、あそこまでオルガンをウワモノの中心に据えた曲は最近やってなかったですね。
―歌詞も少し変えてありますよね。
堀込:オリジナルは「いろいろあったけど、みんな楽しくやろう」みたいな感じでしたが、ちょっと唐突な感じがして。こっちはモヤっとさせたまま終わるバージョンにしようと。
―その不穏なムードも昔のキリンジっぽいというか。
堀込:まあ、そうかもしれないです。
冨田恵一との再タッグ、郷愁とアイロニー
―冨田さんの参加には驚きました。キリンジとして最後に共作したのは2012年ですよね。
堀込:「早春」っていう曲(『SUPER VIEW』収録)でストリングスのアレンジをやってもらったのが最後でしたね。でも、冨田さんの作品に歌や作詞で参加したりもしていたので、そこまで久しぶりという感じでもなくて。「気になる週末」と「ベランダから」はストリングスを入れたいなと思って。誰に頼もうか考えたとき、一番話が早いというか、やりやすくて間違いないのは冨田さんだなって。
「ベランダから」については、カエターノ・ヴェローソの『Livro』が念頭にありました。あちらはもっと大編成ですけど、あんなふうにしたいんですよねという話をして。たとえば木管について「フリューゲルもあったほうがいいですかね?」「でも、ハーモニーを補強するんだったらクラリネットとフルートがいいよ」みたいなやり取りをして、編成についても冨田さんの意見を聞きながら決めていきました。
―高樹さんのブラジル音楽好きはよく知られてますが、こういう形でアウトプットされたのは初めてのような気がします。
堀込:たしかに。もともとハーモニーとかメロディの点で影響を受けてきましたけど、こういう空気感の曲はなかったですよね。ドラムはいわゆるラテンポップの主流のパターンですが、パーカッションが絡んでくると、ブラジルやアフロっぽくも聴こえて。そこに木管とストリングスのアンサンブルが乗る。しかも、メロディは和っぽいじゃないですか。自分のなかでも面白いものができたなと。
―音階は日本的ですが、郷愁を歌っているという意味ではブラジル音楽のサウダージにも通じるものがありますね。〈帰りたくとも帰れない季節〉という歌詞のモチーフはどこから?
堀込:どこか日本的な情緒が欲しくて何かないかなと考えたとき、花火が浮かんだんです。自分が知ってる昔の花火大会は、今みたいに席取りとかもなかったし、もっと緩さや儚さがあった気がする。そういうかつての光景を、今の自分がふと思い浮かべるというイメージです。花火は目の前で上がっているのに、意識は昔の方へ行ってしまって。駅に向かう人混みのなかに昔のパートナーの姿を見出してしまう。ベランダっていう生活の場にいながら、意識のなかで今と昔が交差していく。そういうモチーフがいいかなと思って。
―やはり〈タウン〉的ですね。かたや「気になる週末」は、歌詞だけ読むとポリス「見つめていたい」っぽくもあるのかなと思ったりしましたが。
堀込:いやいや、ストーカーの曲ではないです(苦笑)。好きな女の子がいて、自分の気持ちを伝えたいけど伝えないでおこう。伝えられないけど、でも……っていう曲ですね。関係がハッキリしていないときって、みんなこういう心境だと思うんですよ。とにかくキモくならないようにってことだけを意識しながら書きました(笑)。
―思春期らしいエモさもありますね。〈好きバレしたくないけど 見つめてしまうよ〉とか。
堀込:〈好きバレ〉って言葉が強烈だから、最初はそれをタイトルにしようかなと思ったんですけど、みんな「やめた方がいい」という空気だったのでやめました(笑)。本当はもっと明快なラブソングにしたくて、とある作詞家の方に頼もうとしたんですよ。
―え!?
堀込:お声がけもしたんですけど今回は実現しなくて。この曲って明るいし抜け感もある。だったらストレートなラブソングの方が気持ちよく聴けそうな気がしたんです。でも、自分はそういうのは得意じゃないので、もっと上手な方にお願いしようと思ったんですよね。気の利いたひねりも入れてもらったりしたら、いい塩梅になるかなと思って。
―高樹さんに「作詞を委ねる」という発想があったことにビックリです。
堀込:ただ今回は難しいということで、自分なりに比較的ストレートに書いてみました。

2025年11月9日、上海・バンダイナムコ上海文化センター ドリームホールにて(Photo by Kana Tarumi)
―「デートの練習」はTOKYO FMの番組に出演された際、SNSの投稿にメロディをつけたのが下敷きになった曲。
堀込:メジャーデビュー25周年ライブでも「猫の声」というタイトルでやっていて、そのとき先にオケを作っちゃったんですよね。お話自体はそこで完結しているから、2番を書き足すのは蛇足だなと思って。歌詞はイチから書き直しました。
ウチの次男が、昨年の春から男子校に進学したんですよ。それで入学式のあと、家で「女子がいない、女子がいない……」とつぶやいてて。
―いるわけないのに(笑)。
堀込:学校見学にも行ってたのに、そこまでショックなんだって(笑)。それをヒントに〈女子なんていない〉という曲を書いてみようと思ったんですよね。
―「反省と後悔」は、「善人の反省」につづく反省ソング。高樹さんが歌、ギター、鍵盤、打ち込みまで一人で全部手がけているのも珍しいですよね。
堀込:この曲は最初に4小節くらいのメロディが浮かんで、それをモチーフにしたインストのインタールードを作ろうと思ったんです。でも歌詞を思いついたので続きを書き足していって。声を重ねながらアレンジしていくうちに、アンビエントなブライアン・ウィルソンみたいになっていきました。エレクトロな質感も面白いし、自分の中では手応えがあって、こういう傾向の続編を何曲か作ってみたいです。
―そしてある意味、一番尖ってるのは「flush! flush! flush!」。個人的にはヘアカット100などのファンカラティーナを連想しました。
堀込:ああ、なるほど。アコギがジャカジャカ鳴ってるニューウェーブみたいなイメージで作りました。トーキング・ヘッズっぽくもあるけど、ハーモニーはジャズ的でもあって。
―大井一彌さんが参加してますね。個人的にも大好きなドラマーです。
堀込:この曲で演奏してもらったらかっこいいかなと思って。(「MUSIC AWARDS JAPAN」で)YMOのトリビュートバンドにも参加してましたし、彼がメンバーであるyahyelもエレクトロの要素がありますよね。やはりバッチリでした。イントロで鳴ってる竹っぽいパーカッションも持ってきてくれたり、アイデアマンでもある。同じ日に録った「気になる週末」にも参加してもらったんですが、ソウルっぽい16ビートもうまく叩けるんですよね。何でもできるんだなって。
―この曲の歌詞では、〈ニッポンのトイレって so good〉という話と、日本社会がどんどんまずいことになってるという話が、表裏一体で描かれてますよね。
堀込:日本のトイレは最高じゃないですか。「外国人に聞いてみました、日本のスゴイところは? トイレ!」みたいな動画を、SNSでもよく見かけますし。ただ、ウォシュレットのことだけで一曲作るのは無理だと気づいて(笑)。だったら、トイレの先に続いてるものまで歌にしたら広がりが出るかなと思ったんです。ガワは綺麗かもしれないけど、インフラは結構ヤバいことになってるし、日本の社会全体もおかしなことになってるよね、みたいな。
―「日本スゴイ」系へのアイロニーでもあると。KIRINJIの近作はどこかしらで日本の暗部について歌ってますよね。
堀込:普通に生活していて「日本ヤバいかも」と思ってない人はいないんじゃないですか。景気もずっと悪くなる一方ですし。
―そういう意味でも、生活に根ざした〈タウン〉のアルバムですね。このあと1〜2月には、7人編成でのワンマンツアーも控えています。
堀込:新作にはパーカッションが入ることで締まる曲が多いので、松井泉さん(Perc)に参加してもらいます。いつも以上に賑やかなグルーヴを追求していく感じになりそうです。あとはニューアルバムの曲を中心に、しばらくやってない曲もやろうかなと思っています。

2025年7月25日、フジロックフェスティバル '25にて(Photo by Kana Tarumi)

KIRINJI
ニュー・アルバム『TOWN BEAT』
2026年1月9日(金)リリース
3,850円(税込) / 紙ジャケット仕様
※syncokin OFFICIAL STORE限定セット(インストCDが別途付属):4,400円(税込)
syncokin OFFICIAL STORE:https://starsmall.jp/shops/KIRINJI
【収録曲】
1. ルームダンサー feat. 小田朋美
2. 気になる週末
3. 素敵な夜
4. flush! flush! flush!
5. LEMONADE feat. 小田朋美
6. デートの練習
7. 反省と後悔
8. ベランダから
9. 歌とギター (Remix)
〈KIRINJI TOUR 2026〉
1月12日(月・祝) 福岡・Zepp Fukuoka *SOLD OUT
1月23日(金) 愛知・名古屋DIAMOND HALL *SOLD OUT
1月25日(日) 大阪・Zepp Namba
2月11日(水・祝) 東京・NHKホール *SOLD OUT
一般発売中(先着)
イープラス:https://eplus.jp/kirinji/
ローソンチケット:https://l-tike.com/kirinji/
チケットぴあ:https://w.pia.jp/t/kirinji/
oversea sales:https://eplus.tickets/kirinji
〈ライブ・メンバー〉
堀込高樹(Vocal, Guitar)
小田朋美(Synthesizer, Vocal)
シンリズム(Guitar, Chorus)
千ヶ崎学(Bass)
So Kanno(Drums / from BREIMEN) *福岡・愛知・東京公演
伊吹文裕(Drums) *大阪公演
宮川純(Keyboard)
松井泉(Percussion)