2025年12月、米動画配信サービスのNetflixが、米メディア大手のワーナー・ブラザース・ディスカバリーを買収すると発表した。動画配信サービスを中核にメディア業界の再編がアメリカで進む中、日本のテレビ局が運営するサービスはどのように未来を見据えているのか。
FODの野村和生氏(フジテレビプラットフォーム事業センター室長)が、Huluの香川翔兵氏(HJホールディングス事業開発室長)、TELASAの渡辺章太郎氏(TELASA編成局次長)とともに、11月に開催されたメディア総合イベント「Inter BEE 2025」のセッションに登壇し、国境を超えたメディア戦国時代を生き残るための構想を語った。
アニメ、BL、長期シリーズドラマが人気ジャンルに
各サービスの特性について、日本テレビグループのHuluは「見られるジャンルとしてはドラマ・バラエティだけでなく、近年はアニメが非常に強い印象です」(香川氏)と紹介。
FODは「日本のドラマが非常によく見られています。中でもBL(ボーイズラブ)が非常に充実していまして、このジャンルにおいては国内No.1かなと思っています。漫画家さんからFOD指名でドラマ化を希望されることもあるくらいです」(野村氏)と信頼を得ている。
テレビ朝日グループのTELASAは「『相棒』や『科捜研の女』、『ドクターX』、『緊急取調室』、『警視庁・捜査一課長』、『遺留捜査』など長期シリーズのドラマが多いので、新シリーズが始まる直前で前のシリーズを遡って見てくれるユーザーも多いです」(渡辺氏)と、ストック型サービスの強みを感じているそうだ。
韓国では国内動画配信サービスが苦境
NetflixやPrime Videoなど、圧倒的な資本力を持つ海外プラットフォームがある中で、テレビ局が自社のプラットフォームを持つ価値について問われると、野村氏は「一番は視聴データが取れることだと思います。それを制作現場にフィードバックできるのが大きいです。外部のプラットフォームに販売しても、視聴データはほとんど開示されないんです」と意義を解説する。
その上で、韓国ドラマ業界の事例を紹介。『イカゲーム』など世界的なヒット作が生まれたことで制作費が異常に高騰し、トップクラスの俳優や脚本家らがNetflixと契約。制作費が捻出できないテレビ局ではドラマ枠が減少し、国内の動画配信サービスが巨額の赤字を抱える苦境にあえぎ、Netflixの一人勝ち状態になっているという。
翻って日本では、これまでテレビ局が最大のプラットフォームだったために優秀なクリエイターを囲い込むことができたが、NetflixやPrime Videoなどの日本進出によって力関係が変化。プラットフォーム側としてはコンテンツを囲い込みたい一方、クリエイター側としては多くの人に見てもらって評価されたいというジレンマが生じている。
そこで掲げるのは、「フジテレビとしては、日本国内プラットフォームの最大化を目指したい」(野村氏)という方針。FODでは映像作品の原作となるオリジナルコミックを投入しており、「IP(知的財産)の“根元”を自分たちでコントロールして、ドラマや映画がヒットした時に大きな収益が得られる、一気通貫の仕組みを作っていきたい」と意欲を示した。
プラットフォームとして海外進出へ…ショードラアプリの狙い
そして国内展開だけでなく、「海外に出ていくにあたり、プラットフォームとして進出しないと、得られる果実は少ないのではないかと思うんです。生殺与奪を外資のプラットフォーマーに握られるのは良くないと思うので、自ら進出する道を残りの人生を懸けてやっていきたい」と語る野村氏。
これを受け、香川氏は「テレビ局はこれからコンテンツメーカーとして、国内外に良いものを提供し続けることの比重が高まると思っていましたが、プラットフォームとして海外に進出するという考えは目から鱗だなと思いました」と反応し、渡辺氏も「我々はライバルではありますが、海外進出なら一緒にできるかもしれないですね」と可能性を感じたようだ。
FODでは、縦型ショートドラマアプリ「FOD SHORT」を25年7月にリリースしたが、野村氏は「(FOD本体と)別アプリにしたのは、グローバル展開を前提にしています。来年度くらいには予定しています」と狙いを説明。「海外展開は以前、真剣にやろうとしたましたがリソース不足で断念した経緯があります。これはリソースをかき集めて本気でやりたいので、一緒にやりたいという方がいらっしゃったら、ぜひお声がけしてほしいです」と呼びかけた。
