筆者には、料理になるとやたら口出ししてくる “自称・グルメな同居人”がいる。何か作れば「全体的に茶色いね」、カレーを作れば「スパイスから作らないと」と、とにかく一言多い。最近ではキッチンも占領され、出された手料理を黙って食べ続けてきたが、ギャフンと言わせる機会を密かに狙っていた。そんな時に「あかりを信じるレシピ」というのがSNSでバズっているのを知った。

SNSを中心に広がる “あかりを信じるカルチャー”

料理家・長谷川あかりさんの投稿に対する引用リプから生まれた言葉で、あかりさんのレシピを「とにかく信じてそのまま作れば美味しくなる」と評判に。最近では「トレンド料理ワード大賞」でも8位にランクインするなど、注目度もうなぎ上りに。

あかりさんのレシピはどれも、むずかしい作業や面倒な工程はなく、とにかく簡単に作れるものばかりだ。今回は、数あるレシピの中から特に反響の多かったレシピ2品にチャレンジすることにした。

「全体的に茶色い」などと言わせないよう色味のバランスも考慮しつつ、味つけはトマトなし、塩オンリーの『白いミネストローネ』と、Xでのインプレッションが2.6億を超えた『酒蒸しハンバーグ』と、めちゃくちゃ簡単そうなものを選択。レシピを見て、「本当にこれで大丈夫なのか?」と不安になるが、「料理で当たり前と思いがちなひと手間を省いてもおいしくできる」というあかりのメッセージを信じて、久々にキッチンの前に立つ。まずは「白いミネストローネ」から作業開始。

  • 用意した材料:白菜漬け、ベーコン、セロリの茎、じゃがいも、ローリエ、オリーブオイル、塩

    用意した材料:白菜漬け、ベーコン、セロリの茎、じゃがいも、ローリエ、オリーブオイル、塩

ベーコンと市販の白菜漬けのうまみを利用し、味付けは塩のみ。本当にそれだけでウマくなるのだろうか…。にわかに信じがたいが。工程に沿ってやっていくしかない。

まずは食材の下ごしらえから。白菜漬けは汁を切り1cm四方に、ベーコンも1cm角に切る。セロリはピーラーで筋を取ってから1cm四方に切り、新じゃがいもは皮をむき1.5cm角に切る。この料理はこの切る作業が一番大変で、あとはラクちんなので、ひたすら切りまくろう。

鍋にオリーブオイル中火で熱し、セロリ、ベーコン、塩を加える。セロリを透き通るまで炒めたら、白菜漬けとじゃがいもを加えてさっと炒めた後に、水を投入。

ローリエをちぎって入れ、沸騰したらふたをして弱めの中火で20分ほど煮込む。

そこにひょっこり現れた自称グルメ氏。開口一番、「お、料理してるの?」。状況を説明すると、「え、それだけ?」「それでうまくなるの?」と、いつものごとく口出しされるが、私はあかりを信じて進むのみだ。スープを煮込んでいる間に、「酒蒸しハンバーグ」に取りかかろう。

  • 用意した材料:合いびき肉、ベーコン、にんにくのすりおろし、牛乳、片栗粉、塩、砂糖、ナツメグ、ミニトマト、オリーブオイル、バター、料理酒

    用意した材料:合いびき肉、ベーコン、にんにくのすりおろし、牛乳、片栗粉、塩、砂糖、ナツメグ、ミニトマト、オリーブオイル、バター、料理酒

このレシピのテーマは「とにかく手を汚さないこと」だそうで、ハンバーグ作りの根幹ともいえる“手でこねる”作業がない! えっ、それは簡単過ぎやしませんか?

工程通りに合いびき肉をフライパンに投入しようとしたら、「ちょ、待てよ!」とまたもカットイン。「ハンバーグはまず材料をボウルに入れて、十分にこねないと……」とうんちくが始まりかけたが、「まぁ、見てなよ」と軽くあしらって作業を続ける。

フライパンに肉だねの材料を全部入れる。ベーコンはキッチンばさみで細かく刻んでから投入。粘りが出るまでゴムべらなどで練り混ぜる。

ラップを広げて中央にオリーブオイル少々をたらし、肉だねを2つに分けてのせる。ラップを包んで小判形に成形する。

フライパンはペーパータオルでさっと拭き、バターを入れて中火にかけ、肉だねのラップを取って並べ入れる。

3分ほど焼いて返す。ちょっと赤いけれど、この後蒸し焼きにするので、気にせずOK。料理酒を加えてふたをして、5分蒸し焼き。ミニトマトを加えて再度ふたをして、さらに5分蒸し焼きにする。赤い部分もなくなり、いい感じの焼き加減! いい香りもしてきたし、これは期待ができるぞ。

20分煮込んでいた『白いミネストローネ』と『酒蒸しハンバーグ』が、ジャストなタイミングで完成! 時間配分もカンペキで、わたし料理上手すぎませんか!? スープを器に盛りつけて、ハンバーグはフライパンごと食卓に出すことにした。カンペキな彩りに達成感がみなぎってくる。さて、自称グルメ氏はこの仕上がりにどんな反応を見せるのか。

まずは『白いミネストローネ』から。本当に塩ひとつまみしか調味料を入れていないけれど、ちゃんとうまいのだろうか? ……という不安は杞憂でした。うんま~ッ! 白菜漬けのまろやかな酸味と、ベーコンのコクがしっかりとスープに溶け込んでいて、出汁をいれたような旨みがたっぷりと引き出されている。一品で野菜がたっぷりとれるのも最高だ。

そんな反応を見た自称グルメ氏も、スープを一口すすって「……これ、こっそりコンソメ入れた?」。「塩のみで~す」と返すと、「白菜漬けって万能なんだな……旨みがすごく出てる。トマトを入れていないのにちゃんと酸味もある。それが白いミネストローネの名前の由来か……」とポツリ。

続いて『酒蒸しハンバーグ』。ちょっぴり赤く見えるのは、ベーコンなのでお気になさらず。手でこねない、空気も抜かない、そんな意表をつく工程で作ったハンバーグのお味は、これまた「うんま~ッ!!!」。しっとり柔らかくて、ジューシー。ベーコンによって肉々しさが増し、噛むごとに肉汁が押し寄せる。しみじみと旨さを堪能していると、向かいから「これやばいな!!」の声が。

「肉汁がしっかり閉じ込められていて、肉の旨みが凝縮してる。バターとトマトも良いソース替わりになっていて、香りもいい。それに、トマトの酸味がいいアクセントになってる。旨いハンバーグには、みじん切りの玉ねぎが必須だと思ってたけど、玉ねぎも使わずにこの味が出せるなんて、信じられない!」

――いや、これはもう信じるしかない。こんなにちゃんと美味しくなるなら、「あかりを信じる」が合言葉になるのも納得だ。最後に自称グルメ氏から「いろいろ小言を言ってごめん。俺もこれからは、もっと人を信じようと思う!」。いやそれ、なんの宣言だ。でも、とにかくマジであかりに感謝! 

まだ長谷川あかりさんのレシピを作ったことがない人は、まずは一度、信じて作ってみてほしい。拍子抜けするほど簡単に、美味しい料理ができあがるから。