物語のポイントは最終話につながる第1話冒頭のシーン。
2004年のクリスマス、健次は「オーロラを見る」ためカナダ・イエローナイフを訪れていた。案内人から「日本人はよく来るけど、1人で来たのはお前が初めてだよ」と言われ、「僕は1人じゃないよ」と笑顔で返す健次。彼が懐に忍ばせたプレゼントらしきものを握りしめるシーンでドラマは幕を開けた。
ネタバレを防ぐためにこれ以上は書かないが、第1話終盤、健次は由季のある秘密を知ったことで、2人の関係性が動きはじめる。
なかでも『東京ラブストーリー』を知る人々にとってうれしいのは、由季を穏やかに包み込むような健次の包容力。別の役ではあるものの、織田の真骨頂と言える「不器用でまっすぐな男」という点で健次とカンチは似ていた。似ているからこそ「13年の時を経て、煮え切らない未熟な男だったカンチが一回り年下の女性を受け止める大人の男に成長した」という印象を受けるだろう。
カンチはリカに追いかけられ、振り回されるような関係性だったが、健次は由季を見守り、時に背中を押すようなスタンス。それでいてケンカもすればまじめな相談もするなど年齢差を感じさせない関係性は健次の包容力あってのものであり、由季が引かれていく説得力につながっていた。
当作の焦点は「誰と誰が結ばれるか」ではなく、「ハッピーエンド(結婚)か、バッドエンド(破局・別離)か」。タイトルの“ラスト”の意味は「昨年」なのか、それとも「最後」なのか。それが最終話までわからないまま物語はクリスマスのクライマックスに向かっていく。
序盤は恋愛群像劇だが、中盤にそれぞれ危機が訪れ、終盤は「まったく違うジャンルのドラマになる」と言っていいだろう。この変幻自在で遊び心のある脚本は坂元裕二ならではであり、たとえ話、文学的なフレーズ、問いかけるような問題提起などを織り交ぜて飽きさせないこともネットでの一気見に最適な理由の1つだ。
キャストでは、理由はそれぞれだが、その姿をあまり見かけなくなった桜井幸子、片瀬那奈、田丸麻紀の演じる姿が見られるのもうれしいところ。さらに、まだグラビアアイドルが本業だったころのMEGUMI、11年に亡くなった児玉清さんの演技にも引きつけられる。
“織田裕二withブッチ・ウォーカー”名義でカバーした「ウェイク・ミー・アップ・ゴー!ゴー!」「ラスト・クリスマス」に加え、ワム!自身の楽曲もふんだんに盛り込んだ菅野祐悟の劇伴も魅力の1つ。視聴者に「こんな恋がしてみたい」と思わせるスタイリッシュなムードに昇華させていた。
日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。