1970年代から実に半世紀近くにわたって怪獣やロボット、メカなどを描き続け、今や「怪獣絵師」の異名を取り、日本だけでなく世界各国に根強いファンが存在するイラストレーター・開田裕治氏。

このたび、開田氏の「オリジナル作品」を集めた初めての画集が「マヴォ出版合同会社」にて企画され、このたび「クラウドファンディング」方式(MotionGallery)で出版資金を募ることがわかった。同クラウドファウンディングは、12月16日12:00より「MotionGallery(モーションギャラリー)」にてスタートする。

  • 「開田裕治オリジナル作品集」A4版ソフトカバー表紙見本

    「開田裕治オリジナル作品集」A4版ソフトカバー表紙見本

「開田裕治オリジナル作品集」クラウドファンディング始動

画集のタイトルは「開田裕治オリジナル作品集」。 少年時代から『ゴジラ』『モスラ』などの東宝怪獣映画をはじめ「特撮」作品の熱烈なファンだった開田氏は、70年代の終わりごろ地元・大阪から上京。美大出身のスキルを活かして怪獣映画や特撮ヒーロー作品、ロボットアニメ作品のキャラクターイラストを多く手がけて評判をとった。

80年代には『ゴジラ』『三大怪獣 地球最大の決戦』をはじめとするビデオソフトのパッケージ画や、『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』などのLD(レーザーディスク)ボックス画、バンダイのプラモデル「The特撮コレクション」シリーズ箱絵、LPレコード『ゴジラ伝説』ジャケット画など、「SF・特撮・怪獣・アニメ」といったジャンルの作品を愛するファンたちの心に突き刺さる、リアリティとダイナミズムに満ちた数々のアートを発表し、人気を高めていく。

  • 本画集に収録される作品「鬼神の太刀」

    本画集に収録される作品「鬼神の太刀」

50年近くにわたる開田氏の画業生活においては、既成の映画・テレビ作品によらない純粋なイマジネーションの産物となる「オリジナル」の怪獣やロボットを描いたイラストもたくさん存在する。今回、マヴォ出版の代表を務める竹熊健太郎氏により、そんな開田氏のオリジナル作品を一冊の画集にまとめるため、クラウドファンディング(MotionGallery)による支援を募ることとなった。いくつかの支援コースに応じて、創意工夫に満ちた魅力的なリターン品も準備されているという。「開田裕治オリジナル作品集」は、開田氏のファンはもちろんのこと「SF・特撮・怪獣・アニメ」のアートを愛する多くの人々から、熱い視線がそそがれるものになるだろう。

  • 開田裕治さん近影

    開田裕治さん近影

開田裕治氏 インタビュー

――開田さんはイラストレーターとしてプロデビューされてから、特撮やアニメのキャラクターイラストを多く手がけられてきました。そもそものきっかけから教えてください。

幼いころから特撮映画・怪獣映画が大好きでした。東宝の『宇宙大戦争』(1959年)や『モスラ』(1961年)あたりを映画館で観たのが原体験ですね。やがて、1975年に関西の特撮ファンサークル「セブンスター」を作り、ファンジン「衝撃波Q」を発行しました。最初は自分たちの怪獣好きな気持ちを「本」の形にするだけで嬉しかったのですけれど、本にするのならそれらしく体裁を整えないといけないよな、ということで、『ゴジラ』の本多猪四郎監督や作曲家・伊福部昭先生のところにおうかがいして、インタビュー記事を作ったりしていました。やがて美大(京都市立芸術大学)を卒業し、1年ほど街の印刷屋に勤めていたのですが、先に東京へ出て編集・ライターの仕事をしていた聖咲奇くんから「こっちにはいろんな仕事があるで」と声をかけてもらい、特に目論見や勝算があったわけでもないのに、無謀にも上京を決意しました。1977~1978年ごろの話です。

東京へ出てくると、主に児童向け雑誌のイラスト仕事をたくさんいただきました。聖くんや安井ひさしさんたちが手広くやっていて、仕事が途切れなかったのがありがたかったですね。初めて絵で報酬をいただいたのが、朝日ソノラマ・ファンタスティックコレクション「空想特撮映像のすばらしき世界 ウルトラマン・ウルトラQ・ウルトラセブン」(1978年)での「科学特捜隊本部/地球防衛軍基地」の内部図解でした。同じころ、まだアニメ誌になる前の月刊「OUT」(みのり書房)で『スター・ウォーズ』関連のイラストを描いたり、東映の特撮テレビ番組『バトルフィーバーJ』(1979年)で5人のヒーローのデザイン原案を描いたりして、ごく初期の企画に携わっていましたね。

――ゴジラやウルトラマン、仮面ライダー、ガンダムといった既存のキャラクターイラストをたくさん描かれる一方で、開田さんオリジナルの幻想的なSF・ファンタジーアートも生み出されていますね。1980年に朝日ソノラマから創刊されたSF・特撮雑誌「宇宙船」初期号の表紙イラストには、まさにそんな開田さん独自の世界が創り上げられていました。

「ファンタスティックコレクション」を手がけられていた朝日ソノラマの村山実編集長から「こんど宇宙船という雑誌を作るから、その表紙イラストを描いて」といきなりご依頼を受けたんです。東京に来てからずっとペン画の仕事が中心で、初めてフルカラーのイラストを頼まれたものだから最初は戸惑いました。どんな絵を描けるのか、自分でもわからないので、いろいろな写真集などを参考に、「岩なら描ける」「雪山なら描けるな」「メカもこうやって描けば大丈夫だな」と、当時の自分が描ける絵を組み合わせて、できたのがあの創刊号の「未開の惑星を探査しているロボットが、奇妙な物体(植物?)を採集している」SFイラストでした。あのロボットはファンのみなさんから「創刊号ロボット」と呼ばれて長く愛され、数年前にもフィギュア化してくださった方がいて、ありがたいなと思いますね。

  • 季刊「宇宙船」創刊号(1980年冬号)表紙。

    季刊「宇宙船」創刊号(1980年冬号)表紙。

――東宝ビデオの怪獣映画パッケージイラストや、プラモデルのボックスアートなどに顕著ですが、開田さんが描かれるゴジラやキングギドラ、メカゴジラ、ウルトラ怪獣などのイラストは映画のワンシーンを想起させつつ、独自のアングルや色彩感覚を用いてイラストならではの迫力や美しさを強調しているように見えます。怪獣やメカを描くとき、開田さんが心がけているのはどんなことでしょうか。

たとえば『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964年)で、黒部谷に落ちた隕石の中から燃え上がる炎をまとってキングギドラが誕生する、特撮映画史上屈指の名場面があるじゃないですか。あの迫力をイラストで再現するにあたって、画面の「その先」はどうなっているのか、別な角度からあの誕生を目撃したらどうなるのかなど、いろいろ想像・妄想をめぐらせてみるわけです。そんな気持ちにさせるだけの魅力が、東宝怪獣映画にはたくさんありました。伊福部昭先生の東宝怪獣映画音楽を井上誠さんがシンセサイザーで演奏したLPレコード「ゴジラ伝説」(1983年/キングレコード)のジャケットアートを頼まれたときは、新宿の街を歩いていたとき目にした高層ビルをヒントにして「ミラー状のビルの壁にゴジラが写り込んでいる」構図を思いついたんです。すでに29年という歳月を経ている『ゴジラ』(1954年)の音楽を、電子楽器を用いてリニューアルした「ゴジラ伝説」のコンセプトにピッタリ合致するなと確信しました。

――今回、開田さんがこれまでに描かれてきた「オリジナル」の怪獣、メカ、ファンタジーイラストを一冊にまとめる画集の企画が立ち上がったことについて、詳しくお話を聞かせてください。

企画を出してくれた竹熊健太郎さんとは以前からの知り合いで、このたび初めて一緒にお仕事をすることになりました。僕はこれまでいろいろなイラストを描いてきましたが、既成のキャラクターではないオリジナルアートがかなりの数になってきたので、そろそろこれらの作品を画集という形で残したい、という思いを抱いたんです。しかし、本にするとなるとゴジラやウルトラといったメジャーなキャラクターでないと、なかなか商業出版のベースに乗りにくいのが現状です。「自主製作の特撮映画」のポスターやキービジュアルとか、なかなか世に出すことのできないようなイラストや、自由な発想で好きなように描いたイラストを最良のかたちで残し、たくさんの方々に楽しんでもらいたいと思っています。

――クラウドファンディングでは、選択コースの金額に応じて、開田さんのイラストをメインとする「リターン品」が準備されているそうですね。先ほどのお話に出てきた「宇宙船」創刊号ロボットなど、数点のイラストを「ポップアップ」にしたポストカードなんて、とても興味をそそります。

以前から、海外製のポップアップ絵本の複雑かつ迫力のある仕掛けが好きで。自分のイラストが立体的に構成し直されるとどんな風に見えるのか、大いに興味を持っていました。ポップアップ絵本を多く手がける作家の「さくらいひろし」さんと組んで、面白いものを作りましたので、ぜひクラウドファンディングに参加していただき、現物を手にしてほしいです。

  • クラウドファンディング限定ポップアップカードA

    クラウドファンディング限定ポップアップカードA

  • クラウドファンディング限定ポップアップポストカードB

    クラウドファンディング限定ポップアップポストカードB

  • クラウドファンディング限定ポップアップポストカードC

    クラウドファンディング限定ポップアップポストカードC

  • クラウドファンディング限定ポップアップカード

    クラウドファンディング限定ポップアップカード

――最後に、開田さんが描かれる「怪獣イラスト」で特に大切にされている「思い」を聞かせてください。

僕は昔から、ビル街とか工場地帯とかを眺めながら「ここに、こんな怪獣が出てきたらどうなるんだろう」と想像することが大好きでした。大学生になってからも、大阪の住まいから阪急電車に乗って京都の大学へ行く際、窓から見える景色に怪獣を当てはめてずっと空想していました(笑)。もしもほんとうに僕が巨大怪獣の出現場所に居合わせたとしたら、怪獣の巨体を地上から見上げることになるだろうか? それとも、山の上とかに避難して、そこから怪獣を見下ろすのだろうか? そんな風に、自分の頭の中で思い浮かんだイメージを、忠実にイラストとしてかたちにしたいと思い、ずっとイラストを描き続けてきました。僕の中では、現実世界の延長上に「怪獣」が息づいているんです。


「MotionGallery(モーションギャラリー)」開田裕治オリジナル作品集クラウドファンディングは、12月16日12:00よりスタートしている。