1995年公開の映画『人造人間ハカイダー』の30周年を記念した上映&トークイベント「公開30周年&Blu-ray発売記念 劇場版『人造人間ハカイダー』ジャッジメントフィルム上映」が2025年9月20日、池袋 新文芸坐にて開催された。

告知が行われると、『人造人間ハカイダー』を子どものころ映画館で観た大人ファンから、幻想的な画面作りで世界的にも評価の高い雨宮慶太監督の作品ということで興味を持った若いファンまで、幅広い年齢層からの注目が集まってチケットは完売。満席となった会場では、大勢のファンが映画館の大スクリーンでハカイダーの勇姿を観ようと、熱い視線をそそいでいた。

  • 左から、鈴村展弘監督、雨宮慶太監督、竹谷隆之氏、ロボ石丸氏

    左から、鈴村展弘監督、雨宮慶太監督、竹谷隆之氏、ロボ石丸氏

『人造人間ハカイダー』とは、1972年に放送された特撮テレビドラマ『人造人間キカイダー』の大人気キャラクター「ハカイダー」を主人公にして新たな世界観を構築した、特撮アクション映画である。1993年の『仮面ライダーZO』、1994年の『仮面ライダーJ』に続いて雨宮慶太監督がメガホンを取った本作は、前2作にも増してビジュアル面での強いこだわりが見られ、ダークヒーローとしてのハカイダーの存在感を際立てている。

  • 『人造人間ハカイダー』ジャッジメントフィルム上映会 メインビジュアル

    『人造人間ハカイダー』ジャッジメントフィルム上映会 メインビジュアル

『人造人間ハカイダー』あらすじ
偽りの平和に包まれた未来都市国家「ジーザスタウン」に迫る、ひとつの黒い影。それは、孤島に封印されていた人造人間「ハカイダー」の復活を示していた。ジーザスタウンの「正義」を掲げるミカエルに対し、ハカイダーはこう言い放つ。「貴様が正義なら、俺は『悪』だ!」 自由を求めて戦い、命を散らせた少女カオルの思いを胸に、ハカイダーはジーザスタウンの支配者・グルジェフに挑む……。

  • 『人造人間キカイダー』Blu-ray BOX VOL.1(東映ビデオ)

    『人造人間キカイダー』Blu-ray BOX VOL.1(東映ビデオ)

『人造人間キカイダー』は、1972~1973年にNET(現テレビ朝日)系全国ネットで全43話を放送した東映テレビ・プロダクション制作の特撮テレビドラマ。光明寺博士が作ったジロー=キカイダーは、良心回路を備えた正義の人造人間である。しかし回路が不完全なため、悪の組織ダークの首領プロフェッサー・ギルの悪魔の笛を聞くと、ジローの体内で正義と悪がぶつかりあい、激しい苦しみに襲われてしまう。ジローは、記憶を失ってさまよう光明寺博士を捜索すると共に、博士の娘ミツ子、息子マサルの姉弟を守り、ダーク破壊部隊との果てしなき戦いの道を往く。

  • 『人造人間キカイダー』Blu-ray BOX VOL.2(東映ビデオ)

    『人造人間キカイダー』Blu-ray BOX VOL.2(東映ビデオ)

キカイダー抹殺を使命とするハカイダーは、第37話から登場。ふだんはクールな青年サブローに姿を変えており、手にした破壊剣を目の前にかざすことでハカイダーへのチェンジを完了する。破壊力に優れた専用銃ハカイダーショットの連射を得意とし、キカイダーを幾度もピンチに追い込んだ。頭部に光明寺博士の脳が組み込まれているため、キカイダーはうかつに攻撃することができない。唯一のウイークポイントは、一定時間内に脳の血液交換を行わなければならないこと。卑怯な戦い方を嫌い、正々堂々と勝負を挑む、誇り高き「悪の戦士」である。

  •  『人造人間ハカイダー』パンフレット表紙(著者私物)

    『人造人間ハカイダー』パンフレット表紙(著者私物)

『人造人間ハカイダー』は、「'95東映スーパーヒーローフェア」の1本として、『超力戦隊オーレンジャー』『重甲ビーファイター』(共に劇場用新作映画)と同時上映された。上映時間は52分。後にアクションや特撮の見せ場を大幅に増やした77分の「ディレクターズカット版」も作られている。

  • 上映イベント キービジュアル

    上映イベント キービジュアル

「劇場版『人造人間ハカイダー』ジャッジメントフィルム上映」と銘打たれた今回のイベントは、『人造人間ハカイダー』の35mmフィルムでの上映が大きな話題となった。

  • ロボ石丸氏と鈴村展弘監督

    ロボ石丸氏と鈴村展弘監督

『仮面ライダーZO』(1993年)&『仮面ライダーJ』(1994年)、そして『ブルースワット』(1994年)&『重甲ビーファイター』(1995年)をはじめ、数々の特撮映画上映イベントを企画してきた総合司会&主催(東映ビデオと共同)のロボ石丸氏と、『重甲ビーファイター』『ブルースワット』で助監督を務めた鈴村展弘監督(トークMC)。

本イベントでは『人造人間ハカイダー』の前に、ハカイダーの原点を探る意味で『人造人間キカイダー』の第38話「ハカイダーがジローを殺す!」第40話「危うしジロー!機能完全停止!!」第42話「変身不能⁉ハカイダー大反逆」の3エピソードがスクリーン上映された。

上映後、ステージに立った鈴村監督は、「ハカイダーがダーク基地へ帰るとき、ふつうにドアからではなく必ず壁を壊して入ってくる」「そして、出ていくときは天井を突き破っていく」といった部分を指摘し、そのやみくもに乱暴なところをハカイダーの愛嬌ととらえる秀逸なコメントを残した。

  • 鈴村監督がMCを務める、雨宮慶太監督と竹谷隆之氏のトークショー

    鈴村監督がMCを務める、雨宮慶太監督と竹谷隆之氏のトークショー

  • 30年前の苦労の数々を、笑顔を交えながらふりかえる2人

    30年前の苦労の数々を、笑顔を交えながらふりかえる2人

そして真打ちとなる『人造人間ハカイダー』が上映された。現在、各サブスクにて配信されている『人造人間ハカイダー』はディレクターズカット版であり、「劇場公開版」を観ることのできる機会は意外と貴重。ハカイダー=リョウ(演:岸本祐二)の復活から、ジーザスタウンでのバイオレンス風味にあふれた戦闘、反政府ゲリラのひとり・カオル(演:宝生舞)とリョウとの交流、そして元老院に突入したハカイダーを待ち受けるミカエルとの壮絶なる戦い……と、決して長くはない時間の中に数々の印象的なビジュアルが詰め込まれ、飽きさせることがない。

上映後、雨宮慶太監督と造型コーディネートの竹谷隆之氏がステージに登場。長年、苦労を共にしてきた相棒同士の、息の合ったかけあいが詰めかけたファンを喜ばせた。

  • 「主役デザインをはじめ、全体の世界観を構築できた」と語る雨宮監督

    「主役デザインをはじめ、全体の世界観を構築できた」と語る雨宮監督

雨宮監督は『ハカイダー』を手がけるにあたって「仮面ライダーZOや仮面ライダーJと違って、今回は主役のハカイダーをはじめ、劇中に出てくるあらゆるキャラクターのデザインができたのがよかった」と語り、東映作品では初めて「主役キャラクターのデザイン」を手がけることが叶った喜びを示した。また雨宮監督は「デザインを描いたとき、竹谷からの一言を今でも覚えている。『あれ、脳みそは?』って(笑)」と、元祖ハカイダーのトレードマークたる「透明フードから見える脳」についての指摘を竹谷氏から受けたことを明かした。これに対し雨宮監督は「大丈夫。ふだんは見えないけど、光ると脳が見えるようになるから」と、発光ギミックによって「脳」が浮かびあがるテクニックを用いて竹谷氏を納得させたと話した。

また雨宮監督は「3作目なので美術・照明・操演など同じメンバーでやってきて、チームワークが出来ていましたから多少無謀なことをやっても文句を言われなかった」と、『仮面ライダーZO』『仮面ライダーJ』で培ったノウハウを活かし、さらなる映像表現に尽力できたと発言。3作目ならではの工夫の一例として、「ハカイダーのスーツ」に言及した雨宮監督は「ZOとJのスーツ素材ではオートバイに乗れないので、『乗る専用』の特製スーツを別に用意していたんです。そうすると、オートバイでやってきて、そこから降りて銃を構える……みたいな場面をワンカットで撮ることができない。どうしてもスーツをチェンジしないといけないから。そこでハカイダーではレザー製のスーツにして、アクションを担当する(岡元)次郎さんがバイクに乗ったり、バイクスタントのテルちゃん(武士レーシング・髙橋輝男)が戦闘ポーズを取ったり、臨機応変に対応してもらいました」とコメント。総合的な演出ができたことを明かした。

  • 「台本にない造型物の発注が来るのは、だいたい夜中」と竹谷氏

    「台本にない造型物の発注が来るのは、だいたい夜中」と竹谷氏

今回の作品では「造型コーディネート」とクレジットされた竹谷氏は「なんか、一歩退いて俯瞰からスタッフの作業を見るみたいな肩書をもらったのですが、忙しさは前の作品と変わりませんでした。手が足りなくなって、結局みんなで作らないと撮影に間に合いませんからね」と、常に最前線で「撮影に必要なモノ」を作らなければならない雨宮組の厳しさ(主にスケジュール面)をふりかえり、苦笑いをした。

『ハカイダー』の苦労話を聞かれた竹谷氏は、「雨宮監督から、台本に書いていないものを作ってほしいと言われ、半日とか1日とかしかない状態で作っていたこと」を挙げ、「だいたい夜中なんです。東映東京撮影所のプレハブに住み込みで作業をしていると、雨宮監督と演出部のみんながビールを持って現れる(笑)」と、雨宮監督の卓越したひらめき、アイデアを短期間で、しかも監督の満足いく「形」にして出さなければならない過酷さをしみじみふりかえった。

雨宮監督は相棒の苦労を分かった上で「ギリギリ頑張ったら間に合うようなことを依頼します」と、急なスケジュールであっても竹谷氏の腕前ならできるだろうと予測して頼んでいたと話し、「監督自身が、こういう風に作れば間に合うだろうとわかっているから、タチが悪いです(笑)」とこぼす場面も見られた。雨宮監督は竹谷氏の言葉を受け「竹谷なら、出来上がったものの仕上がりがいい。竹谷が作っているといないとではぜんぜん違うので、作ってもらうしかなかった」と、竹谷氏の造型テクニックを全面的に信用するコメントを投げかけ、お互い顔を見合わせニッコリほほえんだ。

  • 原作者・石ノ森章太郎先生の感想は……?

    原作者・石ノ森章太郎先生の感想は……?

映画のクライマックスは、重戦車と合体したミカエルがハカイダーを襲う、大迫力の特撮アクションシーン。ボロボロになりながらもミカエル重戦車とグルジェフを葬り、ジーザスタウンを後にするハカイダー。ここでは、白一色の部屋に無数の羽が舞い散る中、破壊されたミカエルの頭部がキカイダーを連想させる「青と赤」のカラーリングに変化するという印象的なカットがあった。

このビジュアルになった理由は「ハカイダーの最大の敵はキカイダーしかいない」という発想から生まれたそうだが、雨宮監督は「石ノ森章太郎先生が試写をご覧になっていて、もしも『キカイダーの冒涜だ』と怒られたら……」と、一抹の不安を抱いていたという。

「もしも石ノ森先生からお叱りを受けたら、竹谷が勝手に青と赤に塗りましたって言おうかと思っていた(笑)」とジョークを飛ばしながら雨宮監督は「内心ヒヤヒヤしていましたが、先生からは、『あのカット(ミカエルの最期)いいね!』と褒めていただきました。よかった!」と、キカイダーオマージュが問題なく石ノ森先生に通じていたことに安堵した思い出を語った。

  • フォトセッション時の4名

    フォトセッション時の4名

トークイベントの最後に、お2人の近況が語られた。竹谷氏は、現在ホビージャパン誌で連載中のエッセイ『漁(猟)師の家に生まれましたが、継げませんでした。』が2026年初めに単行本化されるとのこと。そして雨宮監督は、10月17日から公開される『牙狼<GARO>』シリーズ最新作『牙狼<GARO>TAIGA』を熱烈プッシュ。

「その時代時代でいちばんめんどくさい作り方をしてきています」と制作面の努力と苦労がいつの時代でも変わらないと語りながら「『牙狼<GARO>』にも『ハカイダー』の魂が入っています!」と話して、『人造人間ハカイダー』および『牙狼<GARO>』シリーズへの強い愛着と出来栄えへの自信をのぞかせた。

  • 竹谷氏造型のハカイダー像

    竹谷氏造型のハカイダー像

ロビーには、竹谷氏の造型による超絶リアルでカッコいいハカイダー像が展示された。

  • マクラウドより発売「人造人間ハカイダーTシャツ」

    マクラウドより発売「人造人間ハカイダーTシャツ」

マクラウド・ブースでは特撮キャラクターTシャツの最新作として「人造人間ハカイダー」Tシャツを販売。ブラック(左)と墨ブラック(右)の違いを見比べてほしい。どちらもハカイダーのアナーキーな迫力が十二分に打ち出されている。

  • 『人造人間ハカイダー』コンプリートBlu-ray ジャケット

    『人造人間ハカイダー』コンプリートBlu-ray ジャケット

  • 東映ビデオブースでは『人造人間ハカイダー』Blu-rayを販売

    東映ビデオブースでは『人造人間ハカイダー』Blu-rayを販売

上映30周年記念『人造人間ハカイダー』Blu-rayは【通常版】のほか、特製アクリルスタンド2種類(ハカイダー/ミカエル)が付属した【限定予約版】が販売された。いずれも「劇場公開版」と「ディレクターズカット版」をはじめ、劇場予告やメイキングといった映像特典を収録。

  • エレベーター前に配置された上映イベント・ポスタービジュアル

    エレベーター前に配置された上映イベント・ポスタービジュアル

池袋 新文芸坐は定期的に特撮映画のフィルム上映や関係者トークイベントが行われ、特撮ファン、映画ファンから熱い視線が注がれる劇場である。

商品詳細

通常版 「人造人間ハカイダー コンプリートBlu-ray(発売中)」

  • 仕様:BSTD210489,900円(税込)COLOR129分2層1.主音声:リニアPCM(ステレオ) 2.音楽+効果音:リニアPCM(ステレオ)16:9【1080p Hi‐Def】2話収録
  • 収録話:「人造人間ハカイダー」(1995年4月公開/52分)、「人造人間ハカイダー ディレクターズカット版」(1996年製作/77分)
  • 封入特典:ブックレット(20P)※雨宮慶太監督 新規インタビューを掲載
  • 映像特典:劇場予告、劇場未公開予告編、海外用予告編、海外用ノンスーパー予告編、The Making of 人造人間ハカイダー 雨宮慶太が語るハカイダーのすべて

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