身体的・精神的・社会的に満たされた幸福な状態を指す言葉“ウェルビーイング"。近年、ビジネスシーンにおいて注目を集めており、仕事を通して幸福感を得られるかどうかの重要度は増している。しかし、ウェルビーイングの実態はまだまだ周知されていない。ウェルビーイングの実態を知ることが、ウェルビーイングを高める第一歩になる。
株式会社パーソル総合研究所が10月中旬に発表した「はたらく人のウェルビーイング実態調査 2025」の調査結果を踏まえた勉強会が開かれ、同社の上席主任研究員・井上亮太郎氏が多角的にウェルビーイングに関する分析を論じた。
親の働く姿が子供に与える影響
まず学生1041人を対象に「親のはたらく姿は、幸せそうに見えるか?」と質問すると、36.2%が「幸せそうだ」、23.3%が「幸せそうではない」と回答したという。そして、「幸せそうだ」と回答した学生ほど仕事に対するポジティブなイメージを持ち、その一方で「幸せそうではない」と回答した学生はネガティブなイメージを持ちやすいことがわかったと説明。井上氏は「因果関係を明示しているわけではないが、親の姿を見て、子どもの労働観・キャリア観に影響を与える可能性があると考えています」と語った。
次に就業者5000人を対象に「私は、はたらくことを通して、幸せを感じることは大事なことだと思う」と聞いたところ、「そう思う」と回答した人ほど幸福度が高まる傾向が見られた。そうした人ほど、自分自身がどのような時に幸せを感じられるのかを理解しており、さらには幸せに働けるよう工夫をしていることもわかり、ウェルビーイングに対する“追求姿勢(クラフティング)"があることが明らかになった。
幸福感には予想外な因子が関連している
ウェルビーイングに影響する因子も紹介する。幸せの因子には「自己成長」「チームワーク」などの7つ、不幸せの因子には「自己抑圧」「疎外感」などの7つが存在しているという。それぞれの重要度に順位付けすると、幸せ因子では自分の仕事にポジティブな意味を見出している状態「役割認識」、不幸せ因子では仕事に追われて心身ともに過剰なストレスを受けている状態「オーバーワーク」が1位となった。
就業者側が重要視している因子と、実際に幸福度に影響を与える因子をまとめた結果、「役割認識」「オーバーワーク」などは必ずしも幸福度に強く影響しないことが判明した。一方で、他者や社会に役立っていると思える状態「他者貢献」や、強みを活かせず抑制されている状態「自己抑圧」など、重要視されていないものの幸福度への影響力が強い因子は少なくなく、井上氏は「こういった因子はやや過小評価される傾向があり、このあたりも意識されるようになると良いなと思います」と語った。
幸せの要因は変化する
自分のウェルビーイングに影響する要因が時間とともに変化する“ウェルビーイング・トランジション"についても解説する。4人に1人がウェルビーイングの要因の変化を感じており、男女ともに30代以降で顕著で、その背景には転職や育児、出産などが影響しているという。
さらにウェルビーイング・トランジションを深掘りする。幸せの7要因のうち、私生活が安定している状態「リフレッシュ」は20~30代が重視する傾向が高い。60代になると「役割認識」をはじめ、仲間とのつながりを感じられている状態「チームワーク」、周囲から好ましい評価を受けている状態「他者承認」など、個人ではなく集団に関連した因子を大切にする人が増える。
不幸せの7要因に目を向けると、20代ほど「オーバーワーク」に対する意識が高く、60代では正当に評価されていないと感じている状態「評価不満」や「自己抑圧」が重視されていることがわかった。
若年層が「リフレッシュ」を重視する理由
若年層ほど「リフレッシュ」や「オーバーワーク」など、心身の安らぎやストレスに関連した因子を重視する背景を探る。「リフレッシュ」を幸せだと感じるようになったきっかけとして「体調悪化」や「結婚」が主に挙げられ、「オーバーワーク」を不幸せだと感じるようになったきっかけでも「体調悪化」が上位に入っている。「楽をしたい」という考え方にとどまらず、自身の健康状態や職場での経験に基づき、「リフレッシュ」や「オーバーワーク」への関心が高まっている可能性がうかがえた。
最後に井上氏は、ウェルビーイング向上に向けた提言を語る。「自分のウェルビーイングの源泉を理解して追求する姿勢は大事ですが、過大評価には注意が必要です」と述べ、「リフレッシュ」や「オーバーワーク」が重視されているものの、それだけでは得難い喜びや楽しみも存在すると示す。続けて、ウェルビーイングの源泉は変化するため、「定期的に振り返ることが有効になってきます」と話した。








