東武鉄道株式会社と株式会社日立製作所は11月13日、都内ホテルで会見を開き、両社が提供する生体認証サービス「SAKULaLa(サクララ)」を鉄道改札や店舗決済、入退管理といった多様なシーンに拡大することを発表した。同会では、拡大に至った経緯やSAKULaLaの活用方法などが語られた。

労働力不足にも貢献か

  • 東武鉄道 執行役員 経営企画本部長 竜江義玄氏

    東武鉄道 執行役員 経営企画本部長 竜江義玄氏

まず、東武鉄道 執行役員 経営企画本部長の竜江義玄氏が登壇した。SAKULaLaを通じて社会課題の解決を目指すと述べ、「加盟店の店舗では、生体認証を通じて会員情報や年齢の確認を厳格かつ速やかに行うことができるようになります。これまで係員が対面で行っていた確認作業が省力化・効率化でき、労働力不足の解消の一助になると考えています。また、会員証の貸し借りによる“なりすまし”やカードの偽造といった不正防止にも役立ちます」と説明する。さらには「1度ご登録いただくと、加盟店どこでも利用できるという利便性の高さがあります」と加盟店だけでなく利用者にとってのメリットも強調した。

  • デジタルアイデンティティを生体認証と紐付けて管理

    デジタルアイデンティティを生体認証と紐付けて管理

SAKULaLaの2つの特長を紹介。「1点目は、(公的証明書や診察券など)複数のデジタルアイデンティティを生体認証と紐付けて管理できることです」「2点目は、1度の生体登録情報で業種を横断し、手ぶらでさまざまなサービスが利用可能となる業務横断型のプラットフォームであることです。利用シーンに応じて住所やポイント番号など、その場で必要な情報のみ活用できるという特性があります」と述べる。これまで実施してきた指静脈認証も継続し、複数の生体認証を組み合わせることで、さらなる利便性の向上につながるとした。

具体的なサービス内容

  • 顔認証を活かした新サービス

    顔認証を活かした新サービス

また、竜江氏は「切符や交通系ICカードを使用せずに顔認証で通過できる改札」「国内の決済端末設置台数の約50パーセントを占めるJET-SシリーズにSAKULaLaの機能を搭載した顔認証決済サービス」「オフィスなどの会員制施設で、SAKULaLaと連携することによる顔認証による入退館」など、具体的なサービスを紹介した。

  • 着実に広がる顔認証サービス

    着実に広がる顔認証サービス

上記のサービスは、すでに東武ストアや東京スカイツリー オフィシャルショップなどでも導入しており、2025年度には上新電機や東武宇都宮ホテルでのセルフチェックイン機の導入が完了したと話す。続けて、同日から東武宇都宮線の改札でもサービスを開始したという。そして2026年度以降はファミリーマートでの導入を予定しており、「本日から始まる顔認証サービスの拡大は、その布石となる大きな1歩であると考えています。今後のSAKULaLaの拡大にぜひご期待いただきたいと存じます」と語気を強めた。

利用範囲の拡大を目指す

  • 東武鉄道 取締役常務執行役員 鉄道事業本部長 鈴木孝郎氏

    東武鉄道 取締役常務執行役員 鉄道事業本部長 鈴木孝郎氏

次に東武鉄道 取締役常務執行役員 鉄道事業本部長の鈴木孝郎氏が、東武鉄道における活動計画を説明。鈴木氏は「近年、公共交通における利便性向上が求められる中、非接触で安全性の高い利用体験という点で、私たちも注目しています。今回の導入は、将来的な鉄道利用のあり方を見据えた取り組みになります」と導入の背景を述べる。

  • 顔認証改札

    顔認証改札

現状は独立型のタブレットを改札近くに設置しているが、2026年春にはカメラを内蔵した自動改札機の設置を予定。「こうした取り組みを通じて、より多くのお客様に便利でスマートな駅の利用体験を提供していきたい」と語り、加えて利用できる範囲を徐々に広げていく予定だという。また、現在はPASMO定期券が対象だが、今後は定期券以外の乗車券への対応も予定しており、さらに他の鉄道会社への導入を促すため、導入コストや設置スペースといった課題解消にも取り組むとした。

指静脈認証と顔認証の組み合わせでさらなる利便性向上

  • AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット 事業執行役員 マネージド&プラットフォームサービス事業部 事業部長 石田貴一氏

    AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット 事業執行役員 マネージド&プラットフォームサービス事業部 事業部長 石田貴一氏

AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット 事業執行役員 マネージド&プラットフォームサービス事業部 事業部長の石田貴一氏がSAKULaLaの価値を解説。「コンビニや店舗での決済など、利用者の明確な意思表示が必要な場合は指静脈認証。鉄道改札などスピードが求められる場合は顔認証。高い機密性を有する施設やシステムにアクセスする際には複数認証を統合したマルチモーダル認証を使うことができます」と説明した。

  • 快適な手ぶらライフが可能

    快適な手ぶらライフが可能

SAKULaLa普及後の生活をシミュレーションし、「家を出て、駅ではモバイル端末をかざすことなく顔認証で改札を通過します。通勤途中にコンビニやコーヒーショップに立ち寄り、片手が塞がった状態でも手ぶらで購入し、スマートにオフィスへ入室します。業務では多要素認証で安全かつ便利にセキュア環境へアクセス。午後は出張先でスムーズにチェックインし、懇親会後も手ぶらで法人向け決済サービスによる支払いを終えます」という。そして、「異なる業界の事業者が発行するデジタルアイデンティティをSAKULaLaがハブとなってつなぐことで、手ぶら化社会が加速度的に広がります」と語った。

実現を目指す3つのレス化とは

  • 株式会社ジェーシービー 執行役員 ソリューション営業推進部長 榊原英人氏

    株式会社ジェーシービー 執行役員 ソリューション営業推進部長 榊原英人氏

両社は今回、株式会社ジェーシービーとSAKULaLa加盟店拡大に向けて協力することで合意。同社の執行役員 ソリューション営業推進部長 榊原英人氏も舞台に上がり、SAKULaLaが決済業界に与える影響を説明する。

  • 3つのレス化

    3つのレス化

まず、キャッシュレスをより進化させるために「スマホレス・ポイントカードレス・本人確認レス」の3つの“レス化”を掲げ、「生活者のストレスを劇的に軽減し、店舗のオペレーション効率を飛躍的に向上させます」と口にする。そして「決済は今や鉄道と人々の暮らしを支える重要なライフラインです。この決済革命に向け、ジェーシービーは果敢に挑戦を続け、日本の未来の決済体系を創造してまいります」と力強く語った。

近未来はもうすぐそこか

後半では、担当者による鉄道改札や決済端末など、実機を使用したデモンストレーションを実施。実際、スマートフォンや交通系ICカードを取り出すことなく、カメラを搭載した改札機をウォークスルーで通過する様子が披露された。

また、コーヒーショップの会計時に「SAKULaLaでお願いします」と告げ、顔認証ですんなり会計する様子も実演。いずれも、手ぶらでスムーズに移動や買い物をしており、“近未来”がすぐそこまで来ていることを実感させた。