突然死の原因にもなる心筋梗塞。急に発症するイメージがありますが、実は発作の前に前兆が出ることがあります。ところが意外な症状が出る場合もあり、別の病気と思い込んでサインを見逃してしまうことも。この機会に心筋梗塞の初期症状をチェックしておきましょう。

心筋梗塞とはどんな病気?

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心筋梗塞を発症すると、突然の胸の痛みのあとに心不全や心破裂が起こり、重症になると心停止を起こします。何の前触れもなく発症することもあり、致死率が高い怖い病気です。

冠動脈が詰まって心筋が壊死する

心臓は筋肉でできた袋状の臓器で、拍動して全身に血液を送るポンプの役割を担います。心臓の筋肉(心筋)にも、冠動脈という血管を通じて酸素と栄養が必要です。心筋梗塞は、その冠動脈が詰まることで起こります。主因は動脈硬化で、プラーク(悪玉コレステロールなどが血管壁にたまってできる隆起)や血栓が血管をふさぎ、先の心筋に酸素や栄養が届かず壊死してしまいます。

致死率が高い「心疾患」の代表格

日本人の死因第2位は心疾患で、その半数を心筋梗塞と狭心症が占めます。心筋梗塞は代表的な心疾患の1つで、致死率は約40%といわれます。一方で、病院へ搬送された場合は90〜95%が救命されています。発症時は一刻も早く救急搬送し、救命措置を受けることが大切です。

また、心筋が壊死すると命が助かっても元には戻りません。後遺症を最小限にするためにも、本格的な発作の前段階で受診して検査・治療を開始できるのが理想です。

初期症状はどんなもの?

冠動脈に血栓ができてから完全閉塞に至るまでの時間はさまざまです。1日で進行する場合もあれば、数日〜数週間かかることもあります。複数の調査で、心筋梗塞患者の約半数が「1カ月以内に前兆となる初期症状があった」と回答しています。初期段階は症状が軽く、数分〜10分程度で治まることが多いため、この時点で受診しないケースも少なくありません。

胸の圧迫感・締め付け感

代表的なのは、胸の圧迫感や突然締め付けられるような強い痛みです。「絞られるよう」と表現されることも。痛みは胸の中央〜全体に広がります。

肩・首・腕への放散痛

胸の痛みが肩・首・腕に広がることがあります。典型的には左肩・左腕に出やすいのが特徴です。

息苦しさ・冷や汗・吐き気

息苦しさ、冷や汗、吐き気を伴うことがあります。発症1週間ほど前から、運動で苦しくなる訴えがみられる例も。傾向として、男性は冷や汗、女性は息苦しさや吐き気が目立つことがあります。

まさか、これも前兆!? 胸の痛みだけではない、意外なサインに注意

上記以外にも、一見心臓と関係なさそうな部位にサインが現れることがあります。

歯の痛み・あごの痛み

まれですが、歯やあごに痛みが広がることがあります。歯科的な異常がないのに痛みが続き、他の症状も伴う場合は、心筋梗塞の可能性を考慮しましょう。

胃の不快感と勘違いすることも

胸やけを「胃の不調」と誤解してしまうことがあります。胸部症状と合わせて注意が必要です。

女性や高齢者に多い“典型的でない症状”

前兆があっても典型的な胸痛がないケースがあります。特に女性は「強い胸痛」ではなく「胸の違和感」程度で、息苦しさ・吐き気・背中の痛みなどを伴うことがあり、診断に時間を要することも。高齢者や糖尿病のある人では、症状がはっきり出ないことがあります。胸痛がなくても、ここまでの症状に注意しましょう。

心当たりはない? リスクを高める生活習慣

高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満などは動脈硬化を促し、心筋梗塞のリスクを高めます。次の生活習慣は発症リスクに関わるため、できることから見直しましょう。

喫煙

循環器病の既往がない人を11年間追跡した研究では、喫煙者は非喫煙者に比べて心筋梗塞発症リスクが約4倍と報告されています。ニコチンや一酸化炭素が心臓・血管に負担をかけ、血管内皮を傷つけ血液粘度を高め、動脈硬化を促進します。さらに喫煙は善玉コレステロール低下・悪玉コレステロール上昇を招き、脂質異常を悪化させます。なお、禁煙効果はおおむね2年以内から現れます。

運動不足

運動不足は基礎代謝低下や内臓脂肪型肥満につながります。肥満に生活習慣病が重なるとメタボリックシンドロームとなり、心筋梗塞や狭心症のリスクが上がります。

脂質や塩分の多い食生活

脂質過多は脂質異常や肥満の原因に、塩分過多は高血圧の原因になります。継続するとメタボリックシンドロームにもつながります。

予兆を見逃さず、早めに受診を

心筋梗塞の初期症状は多彩で、前兆段階では「大したことない」と見過ごされがちです。ここで挙げた症状が、これまでになく急に現れ「心筋梗塞かも」と不安を感じたら、できるだけ早く循環器内科を受診しましょう。

また、初期症状が続く(30分以上)、痛みが非常に強い、意識が遠のくなどの場合は、すでに心筋梗塞が起きている可能性があります。迷わず救急車を呼びましょう。

最後に心筋梗塞の初期症状に関して、循環器科の専門医に聞いてみました。

心筋梗塞は命にかかわる病気で一刻を争います。症状があれば早急に病院を受診していただくことが必要で、症状が強ければ遠慮せずに救急車を呼んでください。

典型的な症状は突然の胸痛で、前胸部全体に締め付けられるような、重苦しいような痛みが起こり、持続します。冷汗や吐き気を伴うことが多いです。胸だけでなく、背中や腕やあごに痛みが波及する方もいます。典型的でない場合は、気分不快や嘔気のみであったり、胸ではなくみぞおちの痛みが前面に出る方もいます。高齢者や糖尿病の方は症状が出にくい場合もあります。

前兆として狭心症の症状がある方もいますが、半分以上の方は特に前兆がなく突然発症します。狭心症の症状とは「労作時胸痛」で歩いたり階段を上ったり、重いものを持ち運んだり体に負荷がかかった時に胸の締め付けられるような痛みが起こり、休むと徐々に治まっていきます。

心筋梗塞も狭心症も高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、肥満などの素因がある方に起こりやすいので、そのようなリスクファクターがあり上記の症状があれば早急に病院を受診されることをおすすめします。

寺村 真範(てらむら まさのり)先生

一宮西病院 循環器内科 部長/カテーテル室長
資格:日本内科学会 総合内科専門医、日本循環器学会 循環器専門医