尾道海技大学校徳島阿南校の訓練生が実習に用いる帆船「みらいへ」の乗船体験イベントが、10月3日と4日の2日間にわたって小松島市小松島町の徳島小松島港で開催された。

合わせて本イベントには日鉄物流の貨物船「れいめい」の船内見学会も行われ、1日目となる10月3日には徳島県内の小学校2校が乗船。2日目の4日には両船の一般公開が実施され、多くの人で賑わいを見せた。

帆船「みらいへ」乗船体験、今年は小松島新港で初開催

海と船の魅力を知ってもらうため、「ふなどころ阿南まちづくり協議会」が開催している帆船「みらいへ」乗船体験イベント。今年で5回目を迎え、今回は初の小松島新港での開催となった。

「みらいへ」は一般の人が自由に乗船できる日本で唯一の練習帆船。6級海技士養成など船員の研修・実習に使われているほか、セイルトレーニングを通じた海洋学習や体験航海などの一般向けの催しでも活躍している。

日本には現在「みらいへ」に加え「日本丸」「海王丸」の3隻の帆船が運航しているが、全長110メートルほどの「日本丸」「海王丸」に対し、「みらいへ」は全長52メートルと半分ほどの大きさの帆船だ。

「ふなどころ阿南まちづくり協議会」による帆船「みらいへ」の乗船体験イベントの一般公開における見学者は、令和3〜6年の過去4回の開催で延べ892名。同じく有料チケット制の体験航海の一般参加者は、延べ490名に上る。

また、今年は日鉄物流の貨物船「れいめい」が本イベントに初参加。1日目には新野小学校・新開小学校(5年生・約45名)の児童を対象に、「みらいへ」に乗船する体験航海と貨物船「れいめい」の船内見学会が実施された。

最初に「みらいへ」へ乗船したのは、新野小学校の全校児童(約66名)。出港の合図となるドラを鳴らし、船が海へ出たところで、さっそくセールと呼ばれる帆を広げる体験が行われた。

「みらいへ」には13枚の帆があり、子どもたちがこの日広げたセールは前方のデッキにある比較的小さな三角形のセール。「ツー・シックス・ヒーブ」という掛け声で力を合わせて、ロープを引いていくと1〜2分ほどでセールが張られた。

スペースの限られた船上では「ツー・シックス」で前方のロープを掴み、「ヒーブ」の掛け声でロープだけを後ろへ受け渡すようにして引くのがコツ。セールはすべてクルーの手作りで、9名ほどのクルーだけで13枚すべての帆を広げるには2時間ほど掛かるという。

「ツー・シックス・ヒーブ」はイギリス海軍で使っていた号令のひとつ。イギリス海軍では仕事の役割ごとに番号が振られ、2番と6番の人は大砲を動かすロープの係りだったらしく、「2番・6番、ロープを引け」という意味の号令が、帆船でロープを引く際の掛け声に採用されているそうだ。

日常でも使えるロープワークを学ぶ

その後は、3グループに分かれて「見る」「学ぶ」「体験する」をテーマにした各プログラムを実施。「体験する」プログラムでは、「八の字結び」(エイトノット)や「本結び」(リーフノット)などのロープワークを学んだ。

大きな結び目をつくれる「八の字結び」は、ロープを引っ掛けたり玉留めしたりして他のロープや道具に取り付ける時などに使う結び方。「みらいへ」ではメインマストなどからロープが抜け落ちないようにする際などに、この結び方を使うそうだ。

リーフノットは長さの足りない2本の紐を結び合わせるときなどに使うロープワーク。雑誌や本を捨てる時に使うとしっかりと“きびる”ことができ、解き方さえ知っていれば簡単に解けるという便利な結び方だ。

現在も船乗りになるには学校でロープの結び方を習い、試験に受かる必要があるとのこと。「みらいへ」にはセールを動かすためのロープだけで約110本あり、係留ロープや予備のロープなどなども含めると150〜 200本弱のローブがあるという。

「見る」のプログラムではレーダーや計器類といったブリッジの設備や実習生などが寝泊まりする部屋などを見学した。クルーとは別に最大40人のゲストや実習生が宿泊可能で、修学旅行や国際交流のプログラムなどで子どもたちが泊まることもあるという。

通常の船よりも大きな貯蔵庫や汚水処理機など、国際航海に必要なスペックを備えており、昨年はオセアニアのパラオ共和国にも航海したそうだ。

実務型練習船「れいめい」の内部を見学

「学ぶ」のプログラムでは、この後に見学する貨物船「れいめい」を例に貨物船や船員の仕事がクイズを交えて紹介された。

飛行機やトラック、列車に比べてたくさんの重たい荷物を運べて、地震の被災地に救援物資を迅速に届けやすく、環境にやさしい輸送手段である貨物船。陸上では見られない美しい景色が見られることも船員の仕事の魅力だという。

1時間半ほどの「みらいへ」の体験航海を終え、新野小学校の児童たちは「れいめい」に乗船。30分ほどかけてブリッジやエンジンルーム、貨物倉といった船内を見学した。

「れいめい」は船員の研修トレーニングにも用いられる日鉄物流の実務型練習船。自動車の車体などの素材になる鋼材コイル、ときには人工衛星ロケット「みちびき」や新幹線「はやぶさ」まで、5人の乗組員で1600トンの荷物を運べる。

プロペラを回すメインエンジンは1800馬力。燃料はすべてA重油を使用し、夏場のエンジンルームの気温は45度にもなるそうだ。

新幹線の車両を2両積めるという船倉の開口部のハッチカバーは、ローラーで巻き取る仕組み。船倉の下に木板が敷かれているのは、鋼材などの鉄製品に傷がつかないための仕様だという。

一般公開の2日目、悪天候ながら2時間で250人以上が来場

「ふなどころ阿南まちづくり協議会」主催の本イベントには、2022年4月に同協議会が友好協定を締結した「上天草市海運業次世代人材育成推進協議会」が招かれ、両団体の活動報告会も行われた。

「上天草市海運業次世代人材育成推進協議会」は、民間の海運事業者が抱える課題解決のために産学官で構成された組織。船内見学会や八代港の見学会などを毎年開催し、今年11月の「Out of KidZania in くまもと」では、操船シミュレーターを使った企画を行う予定だという。

一方、「ふなどころ阿南まちづくり協議会」は次世代船員の育成、海運業の認知度向上、地域雇用の創出の3つを主目的に、阿南市の内航海運事業者が中心となって2017年4月に設立された。

令和3年2月には四国で初となる民間の6級海技士養成施設として「尾道海技大学校 徳島阿南校」の誘致に成功。同校の実習で用いられている「みらいへ」の体験乗船などを開催している。

両協議会は地域を跨いだ交流を持つようで、未来の内航海運業をテーマにした意見交換会や「みらいへ」船上での懇親会も本イベントに合わせて実施された。

一般公開日となる4日は、イベント開始前から60名近くの一般見学者が集まった。残念ながら悪天候の影響で午後に予定していた一般向けの「みらいへ」体験航海は中止となったが、午前中の2時間で250人以上が同船の船内を見学。「れいめい」にも100人以上が訪れ、船内設備などの説明に耳を傾けていた。

また、海の景色を360°見渡しながら、乗船気分を疑似的に味わえるVR体験も用意。長崎や鹿児島の海を航海する船の甲板上からの臨場感溢れるVR映像を多くの人が楽しんでいた。