女性が男性同様に働くことが当たり前になったいまでも、まだまだ女性が少ない鉄鋼業界。そんな鉄鋼業界で働く女性社員は、どのようなきっかけで入社し、どんな思いで働いているのでしょうか。

本稿では2回にわたり、日本製鉄で働く女性社員にインタビュー。第1回は、棒線事業部 棒線営業部 線材室 普通線材・銑鉄課の梅里眞麻さんにお話を伺いました。

  • 日本製鉄 棒線事業部 棒線営業部 線材室 普通線材・銑鉄課の梅里眞麻さん

    日本製鉄 棒線事業部 棒線営業部 線材室 普通線材・銑鉄課の梅里眞麻さん

■入社直後に勤務した地方の製鉄所で学んだこと

梅里さんは、日本製鉄に入社して6年目の営業社員。大学は法学部で、学生時代はベンチャー企業で長期インターンシップも経験したという梅里さん。日本製鉄を志望した理由はなんだったのでしょうか。

「鉄鋼業界に興味を持った理由は主に2点あります。1つは社会貢献という観点で、社会を支える基盤の産業であるということ。もう1つはグローバルで活躍できる舞台があるということです」(梅里さん)

社会にとって欠かせない産業に関わりたいという思いがあったという梅里さん。そこで素材に注目し、その中でも規模が大きい鉄鋼業界に興味を持ったそうです。

「採用活動の一環で工場見学に行かせていただいたときに、そのスケールの大きさと同時に、肌が痛いぐらいの暑さを感じたんです。そのような環境で働く製造現場の方々や、そこで培われる技術力を想像して興味深く感じましたし、素材を作る現場の実感を得られたことは大きな決め手になりました」(梅里さん)

こうして梅里さんは日本製鉄に入社。最初に配属されたのは、北海道室蘭市にある日本製鉄 室蘭製鉄所(現:日本製鉄 北日本製鉄所)でした。主な業務は工程管理。製造現場から顧客に製品を届けるまでのフォローやスケジュール管理を行い、また製鉄所の窓口として、工場での来客対応なども担当していたそうです。

鉄鋼に関する知識はまったくなく、入社後に一から勉強をしたと言います。

「室蘭製鉄所では製造現場に近い部署だったので、理系の技術者や製造現場の方々から、知識や製造方法、文字には起こせないようなコツなどもたくさん教えていただきました。その経験がいまの自分につながっていると思います。地方での暮らしに不安を覚える方は男女問わず多いと思いますが、数年間を嫌々過ごすのか楽しむのかは自分次第です」(梅里さん)

  • 北日本製鉄所 室蘭地区

    北日本製鉄所 室蘭地区

■社会の基盤を支えているというやりがい

日本製鉄の事務系新卒社員の配属は「本社」か「製鉄所」の2パターンがあり、基本的に全員が両方の職場を経験するとのこと。

梅里さんは、室蘭で4年間働き、現場の知見を吸収し、続いて本社の棒線営業部に異動。普通線材・銑鉄課で初の女性営業として働き始めます。

鉄鋼業における「棒線」とは、棒状の鋼材「棒鋼」と、コイル状の鋼材「線材」の総称。ベッドのスプリングやエレベーターのワイヤーロープ、タイヤの中に入っているスチールコード、自動車のサスペンション、汎用品だとネジやクギ、ボルト、ホチキスの針などが「棒線」に当たります。

「鉄を通していろんな業界と関わることができ、社会の基盤を支えているという実感を持てる瞬間にやりがいを感じます。やはり国内業界No.1という規模の大きさと、それに伴う責任のある仕事ができることが魅力ですね。『総合力世界No.1を目指す』というチャレンジングな姿勢が会社の文化として根付いていますし、その文化が社員にも浸透しているのが強みだと思います。私もいつかそうなりたくて働いています」(梅里さん)

  • 棒鋼・線材の用途例

    棒鋼・線材の用途例

そんな梅里さんの心には、ある男性上司から言われた言葉がいまも残っているそうです。

「部下のことを丁寧に指導してくださる優しい方で、どのように私たちのことを考えているのか気になったことがありました。その時に『部下といっても、それぞれが親御さんに大事に育てられた子ども。そういった人たちを預かっていると考えると、見捨てられない』という言い方をされていて、この人の部下であれば絶対に不幸にはならないと感じましたし、一緒に働きたいと思える上司でした」(梅里さん)

■入社前と大きく異なった日本製鉄の労働環境

日本製鉄に入社する前はハードなイメージや、男性社会を想像していたそうですが、入社してからは印象が変わったと言います。

「やっぱり入社前は『固い』『古い』『男性社会』というイメージはありました。しかし実際に入社してみると、そこまで堅物な感じではなく、融通が利き、物事を柔軟に考えてくれる方が多いです。自分の意見も否定されることなく、むしろ説得するために粘り強く聞いてくださる姿勢に驚きました」(梅里さん)

また、最近の採用では女性のエントリーも多く、男性中心という印象は刻々と変化していると語ります。

■日本製鉄で女性はどんな働き方をしている?

では、女性ならではのライフイベントに対応する制度はどれくらい整っているのでしょうか。

「当社はライフステージに合わせた育休・産休制度が充実しており、実際に利用して復帰された先輩女性も多数在籍しています。そういった先輩方との交流の機会もあり、仕事と育児の両立についての経験談を聞ける場があるのは、将来のライフステージの変化に備える上で心強いと思います。有給休暇も取りやすく、連休と組み合わせて海外旅行に行くことも可能です」(梅里さん)

日本製鉄では、子どもを連れての転勤、テレワーク活用、週末だけ家族のもとに帰るなど、さまざまな働き方を選択できるそうです。また単身赴任の場合は、2カ月に3回、会社負担で家族のもとに帰れる制度も用意されています。製鉄所によっては保育園も併設されており、職場の理解があれば、朝はゆっくり子供を送ってから出社し、お迎えの時間に帰宅するといった働き方も可能とのこと。柔軟な働き方ができる環境づくりへの取り組みがうかがえます。

  • 配偶者の協力や職場の理解もあって、子育てしながら時短勤務で働く先輩社員もいるという

    配偶者の協力や職場の理解もあって、子育てしながら時短勤務で働く先輩社員もいるという

■鉄鋼業界に入りたい女性へのメッセージ

普通線材・銑鉄課において、1人目の女性営業として活躍している梅里さん。女性で初めて配属されたことを喜びつつも、自身が土台となり、後輩も入ってきやすい環境を作るという責任も感じているそうです。そんな梅里さんに、これから鉄鋼業界に入りたいと考えている女性へのメッセージを伺いました。

「興味を持っていただけているのであれば、ぜひイベントや面談などに参加して、直接社員と会話していただき、実際に働いている人を見てほしいです。女性社員も必ずいますし、そういった方々の経験談を聞くことで、きっと距離感も縮まります。当社の社員はとても素直で、現場の視点を正直に話してくれますので、そういった生の声を聞いた上で判断していただければと思います」(梅里さん)

そんな梅里さん自身の目標は、「厚板」を扱う部署で仕事をすることだそう。

「現在は『棒線』という品種しか扱ったことがないので、他の品種も経験し、さまざまな業界に携わりたいと思っています。とくに『厚板』は船舶に使われることが多く、小さい頃から船が好きだったので、いつか携われたらいいなと思っています。引き続き仕事とプライベートを充実させながら、会社や社会に貢献できるよう楽しく働いていきたいです」(梅里さん)