フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)が、1995年10月の番組スタートから30周年を迎えた。これを記念して、話題を 集めた作品と「その後」の物語を、5週連続で放送している。
26日に放送される第4弾は、今年3月に亡くなった女装愛好家、キャンディ・H・ミルキィさんを追った「女装と家族と終活と~キャンディさんの人生~」(2021年放送)と「その後」の終活と最期の日々を追った作品。亡くなる4時間前の姿や、葬儀の模様まで公開している。
取材したのは、キャンディさんとともに映像制作もしていた込山正徳ディレクター。その最期の日々を、心に刻まれた言葉とともに振り返った――。
亡くなる3日前の集中治療室で懸命に歌う大好きな歌
1990年代、原宿の歩行者天国で人気者だったキャンディさん。「コスプレ」や「LGBTQ」といった言葉がなかった時代から、差別や偏見に屈することなく女装を愛し、“自分らしく生きる”ことを貫いてきたが、5年前、特発性間質性肺炎という難病と診断された。
外出する時も酸素ボンベが手放せなくなったある日、羽田空港近くの川沿いで飛行機が飛んでいくのを見て、「いやあ、いいね。やっぱり生きていればの醍醐味だよねえ」と、しみじみ語る姿。また、体調が悪化したと聞いて自宅を訪ねると、横になりながら「生きてるってことは当たり前じゃない。生きてさえいれば99%幸せだって」と、力を振り絞って遺言のように語る姿…。
そんなキャンディさんを、込山Dは「命の残りを宣告された方が、どういうことを考えるのかというのを、キャンディさんがちゃんと言葉に表してくれたのが印象に残りました。悲しくてグッとくるものがあったんだけど、貴重な話を聞けたという思いもあったんです」と振り返る。
亡くなる3日前の集中治療室内の映像にあったのは、お別れの挨拶とともに、苦しい息づかいの中で大好きな『キャンディ・キャンディ』の主題歌を懸命に歌う姿。これには、「人に対してサービスをしたいという気持ちが、すごくある方なんです。でも、まさかあそこで力を振り絞って歌い出すとは全然予期していなかったです」と、カメラを回しながら驚かされたという。
さらに、長男が撮影した亡くなる4時間前の映像でも、手を動かして何かを伝えようとする姿が映し出されている。
30年前の反響と比べて感じる時代の変化
『キャンディ・キャンディ』は、主人公の女の子が偏見にめげず、周囲の愛情を受けて成長していく物語。それは、キャンディさんの歩んできた人生に重なるようにも見える。
込山Dが最初にキャンディさんを取材したのは、94年放送の情報ドキュメンタリー番組『今夜は!好奇心』(フジテレビ)。当時と2020年代の反響を比べて、「30年前は女装や“オカマ”と呼ばれた人々をイロモノとして見ていた風潮がありましたが、そういう趣向の方が一定数いて、認められるべきだという形に変わったのを、本当に感じます」と受け止める。
自分が好きなことをして家庭を崩壊させたことに、少し後悔の念を抱く場面も見られるキャンディさんだが、息子たちは晩年、父を高級寿司店に連れていき、亡くなった後には女装の衣装を引き取って保管しているといい、「決して見捨てられていたわけではなく、家族からは本当に愛されていたのだと感じました」と捉えた。
また、女装趣味が嫌で別れた元妻も、息子を通じて近況を聞いていたのだそう。キャンディさんの葬儀に参列しており、「きっとキャンディさんのことを心底嫌いではなかったのではないでしょうか」と推察した。
●込山正徳
1962年、横浜生まれ。日本大学芸術学部卒業後、アジア貧乏旅行を経てフリーのディレクターに。90年頃から主にドキュメンタリー番組を制作し、『春想い 初めての出稼ぎ』(フジテレビ)でギャラクシー選奨受賞。『生きてます16歳 500gで生まれた全盲の少女』(同)でATP賞・総務大臣賞受賞。『ザ・ノンフィクション』では、「われら百姓家族」のほか、「天国で逢おう」「女装と家族と終活と ~キャンディさんの人生~」などを手がけている。05年には、自身の体験を記録した著書『パパの涙で子は育つ シングルパパの子育て奮闘記』を出版。11月には映画『はだしのゲンはまだ怒っている』が公開される。

