WS初戦を託されたドジャース・スネル、“ノーコン”のイメージを覆す“優秀な…

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 いよいよ明日25日(日本時間)、MLBのワールドシリーズ(WS)が開幕する。連覇を狙うロサンゼルス・ドジャースと、32年ぶりのWS進出を決めたトロント・ブルージェイズが世界一の座をかけて戦いを繰り広げる。今回は日本ではよくスポットライトが当てられる大谷翔平ら日本人選手ではなく、WS第1戦の先発登板が予定されているブレイク・スネルに着目した。(文:Eli)

 

 

ブレイク・スネルの貢献度

[caption id="attachment_236433" align="aligncenter" width="553"] スネルの通算BB%[/caption]

 ポストシーズンで活躍を続けるドジャース選手と言えば先発しながら1試合3HRを放った大谷翔平や救世主クローザーとなった佐々木朗希が目立つが、投手Wins Probability Added(勝率加算)においてPSメジャー1位かつ唯一の1.00超えを達成しているのがブレイク・スネルだ。

 

 それも2位のウィル・ベストに0.37差、3位のタイラー・グラスノーの2倍も積み上げている。

 

 そんなブレイク・スネルはここまで21.0回を投げ防御率0.86、内容も良くFIP1.18、K%は驚異の38.9となっている。

 

 ゲーム別で見てみるとWCS初戦のレッズ戦で2失点した以外は無失点。すべての試合で6回9奪三振19空振り以上を達成する圧巻のパフォーマンスだ。

 

 ブレイク・スネルのよくある評判と言えばコマンドより球威。四球を出しても得点を許す前に3アウトを三振で獲って抑えるというものだ。事実、スネルの過去5シーズンの通算BB%11.6は500IP以上の投手の中でワースト1位、逆にK%31.7はメジャー1位となっている。

 

 

 しかしスネルが典型的な球威優先のノーコンピッチャーのように、「投げる球は速いがどこに行くかわからない投手である」、かというと、実はそうではない。

 

 ボールをどれだけ理想的なコースに投げ込めたか、を示す『Location+』において、今季のスネルはメジャー10位の112を記録。

 

 これは制球力が高く評価されている同僚の山本由伸(110)を上回り、同様にメジャートップクラスの制球力を持つとされるシアトル・マリナーズのジョージ・カービィと同じレベルだ。

 

 また、米施設『Driveline Baseball』 が発表した、意図したコースと実際に投げ込められたコースの乖離から制球力を計測する『Command+』では2024ブレイク・スネルは114を記録。

 

 山本由伸とカービィも114とスネルと同じ数値を記録した。『Location+』や『Command+』ベースで見るとスネルはノーコン投手ではなく、逆に優秀な制球力を持つ投手と言える。

[caption id="attachment_236432" align="aligncenter" width="581"] スネルの Location+[/caption]

四球は多いが”ノーコン”ではない…?

 ここで、スネルの制球力を視覚的に見てみよう。スネルの右打者への攻め方に注目する。もしスネルが自分のボールがどこに行くかわからないノーコン投手なのだとしたら、コースチャートにおいて各球種が混ざり合ったクラスターを形成しているはずだ。

 

 しかしスネルのチャートを見ると各球種、特にフォーシームとチェンジアップがそれぞれの独立したクラスターを形成している。

 

 もちろん時には外れてしまうこともあるが、フォーシームが高め~内角、チェンジアップが外角~低めをそれぞれ別々に担当していることがくっきり見える。スネルが自分の投げたいところにボールを投げられていることがよくわかるだろう。

[caption id="attachment_236431" align="aligncenter" width="885"] スネルの投球チャート[/caption]

 

 

 ではスネルが毎シーズン四球を積み上げているのはなぜだろうか。究極的に四球とはボールを4回連続で制御できなかった結果として打者に塁を与えてしまう事象の事だ。

 

 制球力がある投手が毎年のようにリーグワーストレベルの四球率を記録しているのはおかしい。

 

 米分析ツール『Statcast』のコース分類に「Attacked Zone」と呼ばれる概念がある。これは投げたコースを真ん中のHeart、ゾーンのエッジであるShadow、その外側のChase、全く外れているWasteの4つに分類したモノである。

 

 このうちHeart、Waste、Chaseに着目すると過去5シーズンにおいて5000球以上投げたピッチャーの中でスネルの割合はHeartでワースト4位、Wasteで3位、Chaseで7位となっている。

[caption id="attachment_236430" align="aligncenter" width="1088"] Statcastのコース分類[/caption]

 

 これが意味することは、スネルは自身の投球スタイルとしてゾーン、特にゾーン真ん中へ投げることを極端に嫌い、逆にゾーンのエッジ~外へ球を集中させることで打者がボール球を空振りすることを誘う。

 

 そしてこの戦略はスネルがゾーン外で高い多くの空振りを奪うことに支えられているということだ。

 

 こうすることでスネルは空振り三振を量産し、ど真ん中に投げないことで長打も打たれない。確かに副産物として四球は積みあがっていくが、いくら塁を埋めようが空振り三振で打者を打ち取る事さえできれば問題ない。

 

 デメリットとして四球・三振のサイクルを繰り返すことによる球数の増加があり、これはスネルのアキレス腱となっている。

 

 それも改善傾向にあり、キャリア初期のレイズ時代には1先発当たり平均4.1~4.2回だったのが、パドレス時代には5.0回を超え、2025年は11先発で61.1回を投げ平均して5.2回程度を消化している計算になる。

[caption id="attachment_236429" align="aligncenter" width="435"] スネルのAttacked Zone[/caption]

スネルの契約評価は”正当”…?

[caption id="attachment_236436" align="aligncenter" width="530"] ドジャースのブレイク・スネル(写真:Getty Images)[/caption]

 球威重視ノーコン型の投手はキャリアが長続きしないことが多い。年を取るごとに球速が下がっていき、制圧力が下がっていくからだ。一方で制球型の投手は衰えにより球速が下がっていても技術で抑えることができるため長持ちする可能性が高い。

 

 ドジャースは32歳のシーズンを迎えるスネルと5年1億5000万ドルの契約(後払い調整済み)を結んだ。サイヤング賞2回受賞、通算奪三振率メジャー史上トップ(min 1000IP)という素晴らしい実績を持っているスネルであっても32~36歳の契約となると失敗する可能性が高い。

 

 しかし、もしスネルが制球型の投手であり、球速が下がっても抑えることができるならスネルの契約は当初の評判を超えていくのではないか。

 

 事実、ZiPS成績予測システムが2025シーズン前に行った3年成績予測では

 

2025 133.0IP 3.38ERA 3.26FIP 3.1fWAR

2026 134.3IP 3.55ERA 3.54FIP 2.6fWAR

2027 136.0IP 3.77ERA 3.70FIP 2.4fWAR

 

 と30代前半の時点ではパフォーマンスにそれ程大きな落ちはないとしている。

 

 現在のFA市場では1.0fWAR = $9.0M~$10.0Mとされているが最初の3年間で$72.9M~$81.0Mは生み出す計算だ。これにプレーオフでのパフォーマンスを足せば、球団側にとってボロ儲けではないが、投資分は回収できそうである。

 

 

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【了】