
メジャーリーグ 最新情報
通算223勝96敗、2855.1イニングを投げ、3052回の三振を奪ったロサンゼルス・ドジャースのレジェンド、クレイトン・カーショーが今季を持って引退することになった。エースとして活躍し続けた左腕は、ドジャースで多大な実績を積み上げてきた。そこで今回は、カーショーのこれまでの偉大な軌跡、後継者となり得る投手について分析した。(文:Eli)
際立つクレイトン・カーショーの”凄さ”
今季22登板で防御率3.36(メジャー31位)、FIP3.55(メジャー26位)とまだまだやれることを示したカーショーだが、「追い込まれてからではなく、自分の条件で引退する」ことを信条としており、それに従って今季での引退を決断した形だ。
近年は故障が多く活躍の場を減らしていたことからカーショーの偉大さが過小評価されている感があるが、改めて数字を眺めると希代の大投手だったことが分かる。
1947年以降に合計2500イニング以上を投げた投手の中での防御率2.53は1位。しかも2位のWhitey Ford(1950-1967)の2.75を大きく離している。
またキャリア防御率2.53、FIP2.85を今年の投手に当てはめるとサイヤング2位は確実なレッドソックスのギャレット・クロシェが最も近い。
言い方を変えればデビューから黎明期をへて全盛期、そこからベテラン時代まですべてをまとめてもサイヤング2位クラスの投手だったということだ。
カーショーはチームにも計り知れない貢献を残した。同時代にはザック・グリンキー、ウォーカー・ビューラー、柳賢振ら多くのエース級投手がドジャースに在籍したが、シーズンfWARで並べてみると、カーショーが上位1〜6位を独占。まさにドジャースを象徴する存在だった。
今季もブレイク・スネル、タイラー・グラスノー、佐々木朗希と次々に先発投手が故障で倒れていく中で山本由伸に次ぐfWAR2.5を積み上げた。まさにいつまでも頼れる存在だったのである。
究極の技巧派 クレイトン・カーショー
カーショーの武器といえば、多くのファンが「カーブ」と答えるだろう。オーバースローのリリースから大きく落ちるカーブで打者が空振りする映像は、MLBファンなら一度は目にしたことがあるはずだ。
しかし、カーショーの18年に及ぶキャリアで投じた43,213球のうち、カーブはわずか14.4%にすぎない。最多はフォーシームの53.9%であり、残りの約30%を占めるのが、彼の真の武器といえる「スライダー」だ。
デビュー当初、カーショーのピッチミックスはフォーシーム70%、カーブ25%、チェンジアップ5%という構成だった。
だが、キャリアを通じて自分に合ったチェンジアップの握りを見つけられなかったことから、実質的には2球種しか持たない先発投手だったと言える。
このままではメジャーで通用しないと、当時のジョー・トーリ監督、リック・ハニーカット投手コーチ、そしてドン・マッティングリー打撃コーチから指摘を受け、キャリア2年目の2009年に習得したのが、その後のキャリアを支えることになるスライダーだった。
カーショーはオーバースローの投球フォームゆえに、スライダーに大きな横変化を与えることはできない。さらに、100マイル(約160キロ)の剛速球で力押しできるタイプでもなかった。言い換えれば、大谷翔平のように剛速球と大きな横変化のスイーパーで打者を制圧するスタイルは取れなかったのである。
そこでカーショーが磨き上げたのが「ピッチ・トンネル」と呼ばれる技術だ。これは速球系と変化球の軌道をできる限り似せ、打者に見極めを困難にさせるものだ。
リリースから150ミリ秒後の軌道を比較すると、大谷のスイーパーは早い段階でフォーシームの軌道から分離していくのに対し、カーショーのスライダーはフォーシームに極めて近い軌道を描き続ける。
さらにカーショーのフォーシーム/スライダーコンボは球速差も小さい。解析ツール『Statcast』導入後、キャリア500イニング以上投げた投手の中で球速差4.3マイル(約6キロ~)は歴史上5位の数値だ。
しかもこの2球種を見分けようと目を凝らしていると全く違った軌道、球速でカーブが飛んでくる。2020年代に入り速球の平均球速が90マイル(144キロ)を切り始めても2022年にカーショーが実力でオールスターゲーム先発登板を勝ち取る要因にもなった。
この“見え方”こそが、カーショーのスライダーを武器たらしめているのである。
カーショーの後継者となるのは…?
さて、クレイトン・カーショーというレジェンド投手が去ったドジャースだが、その後継者となるのは誰となるだろうか。
そもそもの問題としてカーショーが歩んだ高校からドラフト1巡目指名→20歳でデビュー→18年で200勝のようなキャリアをドジャース投手が再現することは不可能に近い。ドジャースの補強姿勢ではドラフト1巡目指名権を持つことすら困難だからだ。
そんな中で今後のドジャース投手陣を引っ張っていく存在になるのはやはり山本由伸だろう。2024年シーズン前に結んだ12年3億2500万ドルの超大型契約によりオプトアウトを行使しなければドジャースのフランチャイズプレイヤーとなることは既に確定していると言って良い。
山本の制球力が維持する前提であれば契約が終了し38歳となる2036年にもメジャーで現役を続行することが可能かもしれない。
メジャー2年目で規定達成&防御率2点台前半を達成しており、将来的にも23歳でサイヤング賞受賞最有力のポール・スキーンズという大きな壁はあるものの、日本人投手初のサイヤング賞受賞が既に射程圏内に入っていると言える。
他の選手に目を向ければ今季大きな進歩を見せたのがエメット・シーアンだ。トミージョン手術から6月に復帰するとK%30.6(ギャレット・クロシェが31.3)、SwStr%16.9(タリク・スクバルが16.6)と驚異的な打者制圧力を見せ、既に来年の先発スポットを確保するくらいのレベルだ。
また今季はトミージョン手術からのリハビリで終わったリバー・ライアンは平均96マイル(約154キロ)の速球に加え平均を上回る変化球を2つ持っている。
カーショーのような歴史に名を残すような大エースとして期待するのは難しいが、チームとしてリーグトップクラスの投手陣を構築することは十分可能だろう。
【関連記事】
【了】