三谷幸喜氏が民放GP帯連続ドラマの脚本を25年ぶりに執筆したことでも話題のフジテレビ系ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(10月1日スタート、毎週水曜22:00~ ※FODで配信)。プロデュースするのは、『監察医 朝顔』『PICU 小児集中治療室』『うちの弁護士は手がかかる』など、最近のフジテレビドラマの話題作を多く手掛けている金城綾香氏だ。
『古畑任三郎』の大ファンでフジテレビに入社した金城Pが今作で三谷氏に声をかけたきっかけや、その執筆力への驚き、さらには主演・菅田将暉の魅力やテレビドラマの常識を打ち破る巨大オープンセットへのこだわりなど、今作にかける思いを語った――。
長年チャンスをうかがっていた三谷作品
三谷氏は2000年7月期に放送された『合い言葉は勇気』を最後に、大河ドラマやスペシャルドラマ、またオムニバス形式の連続ドラマの執筆はあっても、民放GP帯の連続ドラマは長らく執筆がなかった。
そんな三谷氏へどのような経緯で脚本の依頼をしたのかを聞いたところ、「私がAP(アシスタントプロデューサー)として、初めてドラマのプロデュース業務に携わったのが、三谷さんの書かれた『オリエント急行殺人事件』(2015年)だったんです。その時は一番下のAPだったので、例えば三谷さんへ台本を送るだとか、番宣のときのタクシーを呼ぶだとか、そういう仕事をしていました。そのつながりで、自分がフジテレビに入社したきっかけが『古畑任三郎』大好き!ということだったので、先輩プロデューサーからの紹介で直接ご挨拶をさせていただきました。三谷さんはその時の私を全く覚えてないとおっしゃられたんですけど…(笑)」と苦笑いで振り返る。
「そこからずっと三谷さんと作品を作ってみたいな…という思いがあって、都度手を挙げつつもチャンスが巡ってこないという感じが続いていました。ですがある時、三谷さんが連続ドラマに興味があるらしい…という話を小耳にはさんだので、交渉に行ってみたんです」
あまた来るであろうオファーの中から、三谷氏はなぜ金城Pのラブコールを受けたのか。
「三谷さんは“そこまでオファーは来ないよ”とおっしゃってます(笑)。オファーを引き受けていただいた本当の理由は分からないのですが、三谷さんは舞台などスケジュールがすごく埋まっている方なので、脚本を書いてくださるタイミングとか、放送する時期とか、そういうバランスを私たちが自由に組めたからなのかなと思っています」
画面上では分からなかったすごさ
『古畑任三郎』が好きでフジテレビに入社したという金城P。一番好きな回は、鈴木保奈美のゲスト回「ニューヨークでの出来事」だそうだが、改めて三谷脚本の魅力を聞いてみると、「登場人物全員が、おかしみとかちょっと駄目な部分があるところですね」と語る。
「『古畑』も今泉(西村まさ彦)なんて実際にいたら結構ヤバい人じゃないですか(笑)。だけどそれこそが三谷さんの優しい目線だと思うのですが、そういう人がいてもいいんだよと、みんなを許容している世界があるんです。だから、そんな目線でみんなも他の人を見てあげれば、この世界もちょっと平和になるんじゃないかと思うんです」といい、今回の作品でも、「みんなちょっとずつ駄目な人たちなので、そういう世界観が色濃く出ています」と反映されている。
実際に三谷氏と仕事をしてみると、画面上では分からないすごさを感じた。
「私やスタッフの感覚で、“今の話は尺が長いじゃないか?”と思っていても、三谷さんが“これはピッタリ収まる”とおっしゃったものは、実際に撮ってみるとその通りピッタリなんです。きっと役者さんのセリフの間やテンポも把握されているんですね。それがすごいなと思いました」
さらに、「どんな作家さんでもうまくいかないことがありますが、三谷さんは“書けない”と言うことが絶対なかったです。むしろ、“AパターンとBパターン、どちらにしますか?”と相談されたのですが、どちらのパターンもすぐに書けてしまう。そこで悩んで筆が止まることがないというのもすごかったですね」と舌を巻く。
三谷氏の劇場映画初監督作品『ラヂオの時間』(97年)は、役者やスポンサーなどの事情で、ラジオドラマの脚本が生放送中に次々と書き換えられてしまうコメディ作品。さすがにそのレベルのムチャぶりはしなかったというが、「例えば、“この商品はこの台本のシチュエーションではお借りできないので、こういう要素を足してほしいんですけど…”という要望に対しても、“はいはい”ってすぐ書けちゃうんです。すでに出来上がった台本でも、その場でパパって書き込んで返してくれるくらい、その筆の速さは素晴らしかったです」と驚かされた。

