三井不動産はオリィ研究所と共同で9月11日より、分身ロボット『OriHime』を活用した観光体験「OriHime 日本橋ガイドツアー」を提供している。遠隔地にいるパイロット(操作者)がロボットを介して観光ガイドを務めるユニークなサービスだ。
■どんなサービスなの?
OriHime 日本橋ガイドツアーは、分身ロボットカフェ DAWN 2021の公式サイトから予約できる。提供プランは、お勧めのルートを1時間かけて歩く、という内容。ツアー催行人数は2人以上で、料金は1名あたり3,300円となっている。
OriHimeパイロットを務めるのは、病気、障がい、子育て、介護など様々な理由で外出が難しい人たち。現時点で100名近くのメンバーが待機している。
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こちらが分身ロボット『OriHime』。カメラ、マイク、スピーカーが内蔵されており、ツアー参加者と同じ目線に立ってガイドする
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参加者は、総重量3kgちょっと(うちロボットの重さは600~700g)のリュックを背負う。中にロボットが数時間動き続け、通信も維持できる容量のバッテリーが入っている
オリィ研究所の吉藤オリィ氏は「サービスを開始するにあたって、これまでいくつもの課題を乗り越えてきました」と振り返る。例えば、日本橋を歩いたことのないOriHimeパイロットも多い。そこで街を知り、道順を覚えるための研修を重ねた。その結果、いまでは地図なしでも道に迷わなくなった。また道中には電波(通信)の弱い箇所もあったが、リアルタイムのやりとりが途切れないよう、万全の対策を施した。
パイロットには名所をガイドできるだけの語学力も求められる。これについてオリィ氏は「私たちは今、一所懸命に英語を覚えているところです。部屋にカンニングペーパーを貼って頑張っているパイロットさんもいます」と笑顔を見せる。
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ツアーのイメージ。福徳神社(芽吹稲荷)は、江戸時代に富籤(とみくじ)が行われていた神社で、金運が上がるご利益があるとされている
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手水鉢の使い方(とその意味)、二礼二拍手一礼の作法などもOriHimeが解説する。訪日外国人にも喜ばれることだろう
もともとカフェでも英語を使った接客が増えていた。そしてある時期、多言語に対応しようと翻訳アプリ、AIなどを試したこともあったそうだ。しかしデジタルを駆使すればするほど、人と人が交流している感覚は希薄になってしまう。カフェを訪れた外国人からも「パイロットの皆さんが得意ではない英語を使ってコミュニケーションを図ろうとしてくれるのが嬉しいんだ」という声が寄せられた。その後、翻訳アプリやAIは使わなくなった。
ガイドツアーはデパートの中も巡る。パイロットのひとり、まちゅんさんは「私も顔なじみになれたんでしょうか、店舗ではOriHimeに手を振って挨拶して下さるスタッフの方も増えました。この仕事のやり甲斐、魅力はそんなところにも感じています」と声を弾ませる。
日本橋の街中を案内するだけなら、メガネ型の端末にカメラとスピーカーを付けてガイドすることもできる。しかしロボットであることで多くの人の注目が集まり、ときには話しかけられ、そこに異文化コミュニケーションが生まれる。オリィ氏は「学校帰りの子どもたちにもよく囲まれます(笑)。そんなカワイイ交流も含めて、ひとつの新しい体験を提供できているのでは、と自負しています」と話す。
ちなみにロボットは顔と両手を動かすことができる。「そんな機能はいらないと思われるかも知れませんが、例えば左手を動かして頬をペチペチすることも可能です。これがスキンシップと言いますか、意外とお客様に喜ばれています」(オリィ氏)。
■日本橋再生計画に合致
メディア説明会において、オリィ氏は「皆さんは寝たきりになってしまった後のキャリア、身体を動かすことができなくなってしまった後の生き方、人生を想像したことはあるでしょうか」と鋭く問いかける。
実は、過去に寝たきりの親友を亡くしており、自身も病気が原因で小学校5年生~中学校3年生まで学校に通えない辛い毎日を過ごしていた。外に出ることができない日々は「圧倒的な孤独感に襲われる」と表現する。「この時期、私を介護していた母も仕事を辞めざるを得ませんでした。このように家族の介護のため離職を余儀なくされる方は、現在も数多くいらっしゃいます」。
そのうえで「基本的にこの世の中は、身体を動かせる人たちのためにデザインされたものです」と指摘する。というのも現在、外出が難しい”移動困難者”は全国で3,400万人に上るにも関わらず、満足な仕事が用意されていない。「オリィ研究所ではOriHime 日本橋ガイドツアーを通じて、こうした社会課題の解決に貢献していきます。あらゆる方の就業機会を創出し、社会との接点を広げます。D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進するだけでなく、観光業における人材不足にも対応していきます」と力を込める。
オリィ氏から、分身ロボット『OriHime』の開発の経緯、および社会課題の解決に向けた強い思いを聞いて「深い感銘を受けた」と話すのは、三井不動産 日本橋街づくり推進部グループ長の菊永義人氏。
「三井不動産では、創業の地である日本橋エリアにおいて官民地域一体となった街づくり『日本橋再生計画』を推進しております。これまで「共感・共創・共発」の考え方のもと、様々なプレイヤーと連携してきました」とし、オリィ研究所によるOriHime 日本橋ガイドツアーは正に三井不動産の理念に合致したものだった、と説明する。そして「両社は今後とも、日本橋を『すべての人が安心して訪れ、誰もが活躍できるインクルーシブな街』にできるよう協力して取り組んでいきます」と宣言した。









