長年の喫煙習慣から起こる病気、慢性閉塞性肺疾患(COPD)。実は自分では気づきにくく、未治療の方が多くいることが推定されています。少しでも早く気づいて治療につながるように、この病気の特徴と早期発見のポイントを解説します。

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■慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは?

慢性閉塞性肺疾患はタバコの煙などの有害物質を長期間吸入することで起こる肺の病気です。肺や気管支に慢性的な炎症が起こることによって、肺の細胞が破壊されたり、空気の通り道が狭くなったりして呼吸困難が起こります。英名のChronic Obstructive Pulmonary Diseaseの頭文字をとってCOPDとも呼ばれます。主に喫煙が原因となるため「肺の生活習慣病」「タバコ病」と呼ばれることも。喫煙者でなくても、受動喫煙や大気汚染、子どものころの肺炎や喘息が原因となることもあります。

WHOの調査では、2021年時点でCOPDは世界の死因の第4位でした。国内では男性の死因の第8位で、高齢者に多くみられます。なお、2001年に発表された大規模な疫学調査研究(NICEスタディ)によると、日本人の40歳以上のCOPD有病率は8.6%、患者数530万人と推定されています。

■COPDの初期症状

初期症状としては、長引く咳や痰、喘鳴(ぜいめい・呼吸の度にゼイゼイ、ヒューヒューと音がする)があります。そのほか、風邪をひいたあとに咳や痰がなかなか治らなかったり、繰り返したりすることや、階段や坂道をのぼるとすぐに息切れすることも、COPDのサインかもしれません。これらの自覚症状がないことも少なくありません。風邪の症状と似ていたり、風邪をきっかけに症状が現れたりするため、ただ風邪をひいただけと勘違いされてしまうことも。高齢の人に多いため、息苦しさも年のせいと考えてしまい、受診につながらないこともあります。

COPDで一度壊れてしまった肺の細胞は、残念ながら治療で元に戻すことはできません。この病気の治療は、進行を止めることを目的とするものです。自覚することは難しい場合もありますが、喫煙歴がある人は特に長引く咳や痰、喘鳴には注意が必要です。

■治療せず放置するとどうなる?

COPDは進行していく病気で、そのスピードは個人差があります。はじめは運動したときに息苦しい程度でも、進行するとちょっとした動作で息苦しさが現れるように。すると活動量が減り、食事を摂ることも難しくなっていきます。重症になると安静にしていても体内の酸素が不足するので、在宅酸素療法が必要となります。

また肺がんや喘息など呼吸器の病気を併発するだけでなく、運動不足や栄養状態の悪化から全身に影響があります。具体的にはフレイル、サルコペニア、心血管疾患、骨粗鬆症、不安・抑うつ、認知症、糖尿病、貧血、閉塞性睡眠時無呼吸などを合併することが知られています。

さらに「憎悪」といって、風邪やインフルエンザなどにかかったときなどに一時的に症状が重くなることがあります。憎悪の頻度が高くなると生存率が低下することがわかっていて、命にかかわることになります。

症状が軽いうちから治療を受けて併発しやすい病気や憎悪を予防することが重要です。

■COPD早期発見のポイント

早めに治療を開始するためには早期発見が大切です。喫煙歴がある40代以上の人で、次の症状がある場合は、内科や呼吸器科を受診して検査を受けましょう。

●注意したい症状

・咳や痰が続いて風邪が治りにくい
・咳や痰を何度も繰り返す
・階段や坂道を登るときに息切れするようになった
・COPDと併発しやすい心血管疾患、糖尿病、脂質異常症などがある

病院を受診すると、問診のほかに呼吸機能検査や胸部X線検査などが行われ、各検査の結果をあわせて診断されます。

初期は症状が出ないこともあるため、喫煙歴が長い40代以上の人は気になる症状がなくても定期的に呼吸機能検査を受けることをおすすめします。

■CODPを防ぐためにできること

最大の予防は禁煙です。すでにCOPDにかかっている人でも、禁煙が悪化の予防になります。急にやめることが難しくても、少しずつでも本数を減らして禁煙への一歩を踏み出しましょう。受動喫煙も避けてください。

風邪などの感染症にかからないように注意することも大切です。運動や栄養バランスがとれた食事も、禁煙と同様に悪化を予防することにつながります。

■長生きのためにも早めに検査を

COPDはほかの病気を併発するだけでなく、死亡につながることもある病気です。徐々に呼吸機能が低下していくため自覚症状が乏しい場合もあり、病気に気づかずに過ごしている人も多くいると考えられています。もしこの病気があっても正しく治療をして管理すれば、長生きできる可能性があります。不安がある人は初期症状を知り、心配なことがあれば早めに検査を受けて早期発見、早期治療につなげましょう。

最後にCOPDに関して、呼吸器内科の専門医に聞いてみました。

「長引く咳や息切れ、年齢のせいだと見過ごしていませんか?」

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、長年のたばこや大気汚染の影響で、肺の働きがだんだん弱くなっていく病気です。肺胞が破壊されたり、気道が狭くなったりすることで、呼吸がしづらくなり、咳や痰、息切れといった症状が現れます。特に喫煙歴のある方は要注意で、症状は風邪と似ているため見過ごされやすく、「年齢のせい」と思ってしまうことも少なくありません。

一度弱ってしまった肺の働きは、治療をしても元通りにはなりません。しかし、早期に見つけて、禁煙・吸入薬・リハビリテーションなどで適切に対処すれば、進行を防ぎ、日常生活の質を維持することが可能です。

「風邪でもないのに咳や痰が長引く」「坂道や階段で息切れがする」と感じたら、それは体からの大切なサイン。早めに呼吸器内科などで検査を受けましょう。

「今さら」ではなく「今だからこそ」。COPDは早期に対処すれば、進行を遅らせることができます。何気ない咳や息切れが、健康への分かれ道になることもあるのです。今こそ、自分の呼吸と向き合ってみましょう。

竹下 正文(たけした まさふみ)先生

一宮西病院副院長 呼吸器内科部長
資格:日本呼吸器学会呼吸器専門医 日本内科学会総合内科専門医 日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医