かつてドラマの7月期は「ひと夏の恋」を描いた作品が多かったが、時代とともにほぼなくなってしまった。ただ今夏、そんな古き良き「ひと夏の恋」をほのかに漂わせているのが『愛の、がっこう。』(フジテレビ系 ※FODで配信中)。

当初は“まっすぐすぎる教師と夜の世界でNo.1を目指すホストのラブストーリー”というコンセプトに「荒唐無稽すぎる」「見る気がしない」などの拒否反応が見られたものの、徐々に感情移入する声が増え、今夏のイチ押しにあげる人が増えている。

その立役者は、11年前の夏に『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(フジ系 ※FODで配信中)を手がけた脚本家・井上由美子×演出家・西谷弘の再タッグ。ここではあらためて『昼顔』の魅力を振り返るとともに、『愛の、がっこう。』との共通点と、11年もの時を経た変化のポイントを、ドラマ解説者・木村隆志が掘り下げていく。

  • 『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(C)フジテレビ

    『昼顔~平日午後3時の恋人たち~』(C)フジテレビ

ラブストーリーへの興味に変化

『昼顔』の主なストーリーは、ある日の午後、笹本紗和(上戸彩)が勤務先のスーパーで滝川利佳子(吉瀬美智子)と知り合い、車上荒らし事件をきっかけに不本意ながら不倫のアリバイ作りに協力させられてしまう。さらに、車上荒らしの犯人だった高校生の担任教師・北野裕一郎(斎藤工)と出会い、徐々に引かれ合うが、ともに既婚者だった。紗和は不倫を繰り返す利佳子のような「平日昼顔妻」になるのか……互いのパートナーを含めた濃厚な四角関係が描かれた。

一方、『愛の、がっこう。』は前述したように高校教師・小川愛実(木村文乃)とホスト・カヲル(ラウール)のラブストーリーでどちらも独身。愛実には父親が決めた婚約者・川原洋二(中島歩)がいるが明らかに小物扱いであり、三角・四角関係を形成するような恋人や片想いの人物はいない。つまり、『昼顔』は2対2、『愛の、がっこう。』は1対1のラブストーリーという大きな違いがある。これはラブストーリーへの興味が時代とともに「最後にどちらの男性・女性を選ぶか」から「1人の相手と結ばれるか別れるか」に変わったことを意味しているのではないか。

それでも両作は同じ脚本家と演出家が手がけただけあって、比べたくなるようなどこか似たムードが漂っている。

「ひと夏の恋」を思わせるはかない恋模様、メインの1人が高校教師で生徒の事件をきっかけに出会う、禁断の関係がバレるかバレないかのハラハラドキドキ、2人の愛を試すような試練、ヒロインが揺れ動く気持ちを明かすモノローグ、時折はさまれる青空や海・川などの夏らしいさわやかな映像美、菅野祐悟の音楽と青木カレンの歌声など、ベースとなるところの共通点が目白押し。

脚本・演出のクオリティそのものも、『愛の、がっこう。』は「名作」と言われた『昼顔』に遜色ない仕上がり。同じフジの木曜22時という放送枠であることも含め、「『昼顔』を楽しんでくれた人が多かったから、似たムードの漂う『愛の、がっこう。』も楽しんでもらえるだろう」というマーケティング上の狙いが感じられる。