J.U.E.L. cupとは

J.U.E.L. cup(正式名称:全日本学生英語会連盟杯争奪全日本学生英語弁論大会)は、全国の大学のE.S.S.(English Speaking Society)を引退した4回生が中心となり運営する「関東学生英語会連盟」によって開催される、大学生英語スピーチの全国大会です。出場資格は、文部科学省の定める日本の大学または短期大学のE.S.S.に所属していることのみ。団体ごとの人数制限は一切なく、志ある大学生であれば誰でも挑戦できます。

本大会は、日本中の学生が集い、その言葉で世界を動かそうと挑む「説得型スピーチ」の舞台です。説得型スピーチとは、社会の奥底に潜む課題や痛みをすくい上げ、その思いを言葉に紡ぎ、聴く者の胸に火を灯し、やがて行動、社会を変えていくためのスピーチ。単なる英語の発表ではなく、未来の景色を少しずつ変えていくことを目標とした、魂を込めたメッセージが響き合う場でもあります。

全国各地から集まった大学生たちが、それぞれの視点で未来へのビジョンを語り、聴衆の心に火を灯す――本大会は、まさに「全国No.1英語スピーカー」を決める熱き舞台です。

審査内容

本大会の予選は2段階にわたって行われます。1次予選では全国から寄せられた50名以上の応募者の原稿と音声を審査し、25名が二次予選へ進出。続く2次予選では原稿と動画をもとにさらに選抜され、最終的に8名だけが本選への切符を手にします。この2重の選考プロセスは全国のスピーチ大会でも珍しく、予選を通し、内容・構成・表現力が磨き上げられる環境となっています。

本選では、最大8分間のスピーチ発表に加え、5分間の審査員との英語での質疑応答が行われます。この質疑ではテーマ理解の深さ、即時の思考力、そして英語で論理的に意見を伝える力が問われます。事前準備だけでなく、瞬発力や柔軟な対応力も勝敗を大きく左右します。

8人のファイナリストのスピーチ

1. Break the Chains of Fear〈ブランチ瑠唯/早稲田大学〉

ブランチ瑠唯さん

ブランチ瑠唯さんは、最愛の祖母との別れを通して「恐れと向き合うこと」の大切さを語りました。新型コロナへの不安から会いに行けなかった後悔や、現実から目を背けてしまった自分の弱さを振り返り、恐れは敵ではなく心を守る存在だと気づいた経験を共有。大切な人との時間を当たり前と思わず、恐れを抱えながらも一歩踏み出すことの重要性を訴えました。

2. Those Who Were Overlooked by Society〈立石滉/法政大学〉

立石滉さん

立石滉さんは、アメリカでの留学中に出会ったホームレス支援活動をきっかけに、日本のホームレス問題の実態に目を向けました。統計上の数値は減少傾向にある一方、ネットカフェ難民など“定義外”の人々が見過ごされている現実を指摘。政府による定義の見直しとNGO支援の拡充に加え、個人としてのボランティアや寄付、声かけの重要性を訴え、誰もが孤立せずに生きられる包摂的社会の必要性を強調しました。

3.The TRUE Reconstruction〈前田菜花/法政大学〉

前田菜花さん

前田菜花さんは、ボランティアで訪れた宮城の美しい景色から、東北が物理的には復興している一方で、観光客減少や人口減少が続く「心の復興」の遅れに気づきました。放射線への誤解などの偏見が地域の再生を妨げている現状を指摘し、真の復興=「TRUE reconstruction」には、正しい知識を得る(Touch)、現地を訪れる(Reach)、支援と絆を深める(Unite)、他者に伝える(Encourage)の4つの行動が必要だと提案。被災地を“災害の地”ではなく“魅力ある街”として再認識し、持続可能な地域づくりを目指すことの重要性を訴えました。

4. Being different is normal〈吉川吉成/法政大学〉

吉川吉成さん

吉川吉成さんは、自身が日本人と中国人を両親に持つことから、日本社会に根強く残る「日本人」と「その他」を分ける意識が、2つの国をルーツに持つ人々に劣等感や自己抑圧を生み、社会参加を難しくしている現状を語りました。外見や言語能力に基づく質問や偏見が、アイデンティティを傷つけることを、自らの体験を交えて紹介。その上で、「日本人」の定義を狭めるのではなく、日本で共に暮らし、社会に貢献する人として広げるべきだと主張しました。解決策として、日常会話での言葉の選び方の改善や、SNSや動画メディアを使った多様な生活の可視化を提案。「違い」は弱みではなく個性であり、互いの輝きを認め合える社会を共につくろうと呼びかけました。

5. Who casts magic on you?〈國分萌/法政大学〉

國分萌さん

國分萌さんは、「あきらめ」の感情が夢や目標を阻む心理的メカニズムを科学的に解説し、否定的な言葉が自己成就予言のように現実を狭めてしまう「ゴーレム効果」を紹介しました。自身のTOEIC受験の経験を通じて、夢を実現した未来の自分を言葉に出して繰り返すことが、心理的不協和を生み、行動を変える魔法の力であると示しました。言葉の力を信じて挑戦し続けることの重要性を力強く語りました。

6. Before You Get Imprisoned And Spray Poison〈白川愛姫/早稲田大学〉

白川愛姫さん

白川愛姫さんは、公共の場での喫煙による健康被害「サードハンド・スモーク(三次喫煙)」の存在と、社会の喫煙対策の遅れを指摘しました。自身の新幹線での体験から、喫煙者と非喫煙者の分離が十分な解決策でないことを訴え、国際的な禁煙の流れと比べ日本の現状の問題点を述べました。非喫煙者の健康権を守るため、周囲に理解を広げる必要性を呼びかけました。

7. The Samurai Accent〈室永怜奈/東京大学〉

室永怜奈さん

室永怜奈さんは、自身の「侍アクセント」と呼ばれる英語のアクセントに対する偏見と、ネイティブのように話せないことへの劣等感を告白しました。しかし国際大会で多様なアクセントに触れ、コミュニケーションにおいて大切なのは「伝えたい内容」と「自信」であることを学びました。簡単な英語を使い、ゆっくり話し、多様性を尊重することで、侍アクセントでも自信を持って話せると励まし、日本人のアクセントの価値を肯定しました。

7. Ms. Haruka Kakoi〈加古井晴香/津田塾大学〉

加古井晴香さん

加古井晴香さんは、自身が生まれたときに女性とされながらも、自分の性別に違和感を抱き続けてきた経験を語りました。日本社会に根強い性別によるラベリングや固定観念が、自分らしさを奪い苦しめることを訴え、ノンバイナリーという性自認を知ることで解放された過程を共有しました。敬称の「Ms.」に縛られた自身の葛藤と、それに代わる性別中立の敬称「Mx.」の導入の必要性を訴え、すべての人が自分自身の尊厳を選べる社会の実現を目指すメッセージを伝えました。

実行委員長から

第45回J.U.E.L. cupご参加いただいた皆さま、そして本レポートをご覧くださっている皆さまに、心より感謝申し上げます。 私たち実行委員会は、この大会を通じて若者の声が社会に届き、より良い未来と豊かな社会の創造へとつながることを願っています。そのためには、E.S.S.の枠を超えて、多くの方に大会の存在を知っていただき、ぜひ実際に会場でスピーチを聴いていただきたいと考えています。その大きな第一歩となる本レポートが、広く多様なコミュニティに届くことを期待しています。 

大学生であれば誰でも挑戦できるJ.U.E.L. cupで、ぜひ皆さんも自分の考えや夢を存分に表現し、社会の一員として共により良い未来を築いていきましょう。来年開催の第46回大会には、E.S.S.外の皆さまもぜひ足をお運びください。皆さまの参加と応援が、多様で豊かな社会実現への大きな力となります。

写真・文:山村菜緒(第45回 J.U.E.L. Cup実行委員長)
編集:学生の窓口編集部

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