間もなく夏の帰省シーズンを迎えますが、高齢の親が暮らす実家が「危険地帯」になっていることに気づいている人は、まだ少ないかもしれません。総務省消防庁の統計によれば、熱中症による救急搬送のおよそ4割は「住居内」で発生しており、その半数以上は65歳以上の高齢者です。今年は6月から猛暑日が続いており、家の中にいても命にかかわる危険があります。

だからこそ、親の健康を守るためには、実家の「住環境」を見直す視点が欠かせません。エアコンの使用だけにとどまらない、具体的な対策をチェックしていきましょう。

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■1.エアコンを上手に使い、温湿度のコントロールを

年齢を重ねると、暑さを感じにくくなったり、喉の渇きに気づきにくくなったりするため、高齢者は熱中症のリスクが高まります。たとえエアコンがあっても、「風が冷たくてつらい」「電気代が気になる」といった理由から使用を控えてしまい、室内にいながら危険な暑さにさらされるケースも珍しくありません。

環境省は「室温は28度を超えないように」と呼びかけていますが、これはあくまで目安です。人によって感じ方は違うため、快適と思える温度に調整を。そのためには、まず部屋の温度と湿度を“見える化”することが大切です。目に入りやすい場所に温湿度計を置いて、「今、暑くない?」など自然な声かけをすることで、温度管理の意識が高まりやすくなるでしょう。

また、エアコンの風が直接体に当たるのを嫌がる方も少なくありません。そのような場合は、風向きを上向きに設定し、扇風機やサーキュレーターを使って空気をやわらかく循環させると、室温を快適に保ちつつ冷えすぎを防げます。扇風機の風が強く感じるときは、壁に風を当てて反射させる方法もおすすめです。

意外と忘れがちなのが、就寝時の暑さ対策です。夜になっても気温が下がらない「熱帯夜」には、寝ている間に体温が上がり、熱中症になる危険があります。「寝るときはエアコンを切る」という習慣があるご家庭も多いですが、弱冷房をつけたままにしたり、サーキュレーターを組み合わせたりすることで、室温の上昇を防ぎ、安心して眠ることができます。

■2.風の通り道をつくり、こもった熱を逃がす工夫を

築年数の経った家では、断熱材が十分でなかったり、窓や壁の気密性が低かったりすることが多く、日差しによって温められた熱が室内にこもりやすい傾向があります。こうした家では、「風をどう通すか」が暑さ対策の大きなポイントになります。

風通しをよくする基本は、空気の“入り口”と“出口”をセットで確保すること。たとえば、風が入ってくる方向(風上)の窓を開け、反対側(風下)の扉や別の窓を開けると、家の中に自然な空気の流れが生まれます。このような換気は、朝や夕方など外の気温が比較的低い時間帯に行うのが効果的です。日中にたまった熱気を抜くことで、夜に向けて室温が下がりやすくなります。

一方で、外気温が非常に高い日中に窓を開けてしまうと、かえって熱い空気を取り込んでしまう恐れがあります。そんなときは無理して風を通さず、窓を閉めたうえで遮光カーテンやすだれを使って日射を遮り、エアコンの冷気を効率よく循環させるほうが理にかなっています。

気温や時間帯に応じて「換気するべきか、遮るべきか」を見極めながら、住まいに合った風の通し方を工夫してみてください。日中にためた熱を夜まで引きずらないためにも、空気の流れを味方につけることが大切です。

■3.窓からの強い日差しを防いで、室温の上昇を抑える

夏の室内が極端に暑くなる原因のひとつが、窓を通して入ってくる強い日射しです。とくに午後から夕方にかけての西日は、部屋の温度を大きく引き上げる要因となります。

この熱を室内に入れないためには、「窓の外側」で日差しをカットするのが効果的です。たとえば、すだれや外付けのシェードを取り付ければ、直射日光をやわらげながら、風はしっかり通すことができます。実際に、窓の外側に日よけを設置することで、室温の上昇を数度抑えられるという実験結果もあります。

屋外に設置するのが難しい場合でも、遮熱機能のある厚手のカーテンや遮熱コーティングされたブラインドを使えば、ある程度の効果が期待できます。さらに、折りたたみ式の断熱ボードや吸盤で貼るタイプの簡易シェードなど、工事不要で使える製品も多く市販されています。

こうしたアイテムはホームセンターやネット通販でも手に入りやすく、価格も数千円程度からあるので、気軽に導入しやすいのも魅力です。帰省時に一緒に設置してあげることで、親御さんが負担なく使い続けやすくなります。

■4.涼感アイテムを賢く使う

窓からの熱を遮る工夫に加えて、家の中で使える暑さ対策グッズを取り入れることで、体感温度をさらに下げることができます。たとえば、窓ガラスに貼る「断熱フィルム」や「断熱シート」は、太陽光による熱の侵入を抑え、紫外線もカットしてくれる便利なアイテム。とくに日差しが強く当たる窓に使えば、窓際の温度上昇を軽減し、部屋全体の暑さをやわらげる効果が期待できます。

寝苦しい夜におすすめなのが、接触冷感素材を使った寝具です。ひんやりとした肌ざわりのシーツや敷きパッド、冷感タイプの枕カバーなどは、エアコンとの併用で睡眠の質を高めてくれます。価格も1,000円台から手に入り、夏だけ使える季節限定アイテムとしても重宝するでしょう。

また、エアコンが苦手な方や、冷房設備がない部屋では、「冷風扇」や「ミストファン」などの送風機器を取り入れるのもひとつの方法です。これらは水の気化熱を利用して空気を冷やす仕組みですが、湿度が高い環境では十分な冷却効果が得られにくくなることがあります。さらに、長時間使い続けると室内の湿度が上がり、換気が不十分な場合にはカビや結露の原因になることもあるため、使う際は環境に応じて適切に調整しましょう。

そのほか、冷却ジェルシートや凍らせた保冷剤を入れるネッククーラー、冷感スプレーなど、身体を直接冷やせるグッズもあると安心です。とくにエアコンのない空間では、これらのアイテムが命を守る「もうひとつの冷房」として機能します。

■5.住宅改修も将来の選択肢に

暑さ対策は、エアコンや冷却グッズだけでは十分とは言えません。実は、家そのものの「つくり」も大きく関係しています。とくに築年数が経った住宅では、断熱材が十分でなかったり、壁や天井から外の熱がじわじわ伝わってきたりと、暑さがこもりやすい傾向があります。

そうした場合、本格的な対策として有効なのが、「内窓(二重サッシ)」の設置です。既存の窓の内側にもう1枚ガラスを加えることで、窓からの熱や冷気の出入りを抑える効果が高まり、夏の暑さだけでなく冬の寒さにも対応できます。冷暖房の効率が上がり、光熱費の削減にもつながるメリットがあります。 また、屋根や外壁に断熱材を加えたり、天井裏に換気ファンを設けたりすることで、家全体の熱のこもりの軽減につながります。こうした改修はまとまった工事費が必要なため、すぐの対応は難しいかもしれませんが、将来的な選択肢として知っておくだけでも安心です。

まずは無理なく始められる対策からでも十分です。たとえば「冷房のない部屋にポータブルエアコンを設置する」「サーキュレーターで空気を循環させる」「窓のすき間に気密テープを貼って外気を遮断する」など、道具を使った簡単な工夫でも体感温度は変わってくるでしょう。

さらに、自治体によっては高齢者向けの住宅改修に対して補助金や助成制度を設けているケースもあります。市区町村の窓口やホームページなどで、対象となる制度がないか確認してみるとよいでしょう。


暑さから親の健康を守るには、実家の住環境を“暑さに強い住まい”に整えることも、大切な備えのひとつです。すだれや温湿度計など、ちょっとした工夫だけでも、住環境の安全性は大きく変わります。離れて暮らす家族だからこそ気づける視点で、できることから始めましょう。