りそなホールディングスは、傘下のりそな銀行で提供するデビットカードを利用することで二酸化炭素(CO2)排出量が確認できるサービスを開始し、個人向けに「サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)」施策を展開する。これによって、特に若者層のキャッシュレス決済をさらに推進していくことも狙う。
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りそなデビットカードを使ってCO2排出量を可視化。中央はりそなホールディングス執行役兼グループCDIOの川邉秀文氏、左はビザ・ワールドワイド・ジャパンのプロダクト本部長・飯高和也氏、右はecolytiqのChief Commercial OfficerであるEvan Pettyjohn氏
デビットカードを使うだけで環境保全に?
りそな銀行は、ほとんどの口座契約者に「りそなデビットカード(Visa)」を発行しており、日本航空との提携による「りそなデビットカード <JMB>」や「りそなデビットカード <プレミアム>」を発行してきた。
銀行口座に直結して、口座残高の範囲内で支払いをするデビットカードは、クレジットカードのような使いすぎの危険性が少なく、若年層に受け入れられている傾向がある。りそな銀行では、発行枚数は330万枚(25年3月末)に達し、収益も25年3月期で76億円まで拡大。取扱高も5年で2.3倍に向上するなど、順調に伸びている。
背景にはキャッシュレス決済比率の伸長がある。日本全体ではコロナ禍を経て、4割を超えるところまで拡大したことで、りそなデビットカードの利用も増加した。
そうした中で、特にデビットカードは若年層の利用が増えている。こうした層はデジタルネイティブでスマートフォンアプリとの親和性が高く、体験を重視するコト消費やタイムパフォーマンス(タイパ)といった特徴もある。それに加えて義務教育に取り入れられた「SDGs」の考え方が根付いていると、りそなホールディングス執行役兼グループCDIOの川邉秀文氏は指摘する。
こうした背景を踏まえて、SDGsのうちの13番目の目標である気候変動対策を打ち出したのが今回の取り組みとなる。
川邉氏は、日本の消費者の環境意識は低く、自分の行動が気候変動に与える影響を気にする人が少ないという調査結果を紹介。この背景には、そのためにより多くのお金がかかってしまう点、より手間がかかる点、自分で何ができるのか分らないといった課題があり、行動変容に繋がらないと分析されている。
とはいえ、環境問題を意識して何らかの取り組みをしている人は93%と高く、今まで以上に環境負荷軽減に取り組みたいと考えている人も70%に達している。課題は、どう取り組んだらいいか分からない、自分の行動が何に寄与したか分からないので行動できないといった点にあることが示唆された。
そうしたことを踏まえて、新たに開始するのが「りそなサステナペイ プロジェクト(仮称)」だ。川邉氏は、「キャッシュレスのメインプロダクトであるデビットを活用して、サステナブルな社会を形作っていきたい」と話す。
りそなグループでは、SX推進のための複数の取り組みを検討しているが、今回のプロジェクトは個人のユーザーにおける環境・社会課題に配慮した消費・住生活というSX実現や、地域社会のSX実現といった点を目指したものとなる。
しかも、一方的に環境に配慮するのではなく、ビジネスと環境・社会のサステナビリティの両立がポイントで、どちらも成り立たなければ持続的ではないとして、両立させながら取り組みを推進していくことが目標だ。
そこでCO2排出量の削減に目を付けて、消費者の行動によってCO2排出量を削減し、その行動が目に見えるようにしてさらなる行動につなげる。
まずはデビットカードの利用をさらに拡大させてキャッシュレス決済を推進する。キャッシュレス推進協議会によれば、現金決済に対してキャッシュレス決済の方がCO2排出量が少ないため、使えば使うほど排出量の削減に貢献できる。
さらにりそなデビットカード利用件数に応じて、りそな側が国内の自然災害被災地や、りそなの基盤となる地域などへ、環境保全活動に対する寄付を行う。利用件数の一定割合を寄付する形で、現状では1000万円程度になる見込みだという。消費者側には負担なく、りそな側が寄付するため、日常の買い物で気軽に社会貢献ができる。これによって、デビットカードの利用拡大にもつなげたい考え。
さらに、環境問題に関心のある大学生(学生団体)との共創プロジェクトも展開。これまでの商品・サービスとは異なり、「SXは利用者がこの課題感をどのように捉えるかがポイント。メイン利用ターゲット層である大学生に企画段階から入ってもらい、柔軟な発想、発信力を取り込んで、価値提供を進めていきたい」と川邉氏は言う。
デビットカード利用推進、キャッシュレス・環境問題をテーマにしたアイデアコンテストなどを行いながら取り組みを進めていく。2025年9月にも開始する予定だ。
利用件数をベースに寄付を行う仕組みは2026年度上期にスタート。アプリによるCO2排出量の可視化も2026年度上期に開始するが、簡易ツールをサイト上に先行公開する。これは2025年10月の予定だ。
このアプリの可視化は、Visaのグローバルパートナーとして欧州や中東、北米でサービスを展開する独ecolytiqのソリューションを日本語化して提供する。アジア太平洋地域では初の提供で、Visaによって両社が引き合わせられ、今回の取り組みに繋がった。
そのecolytiqは、消費者の行動変容を促すための気候変動ソリューションとされている。金融機関のアプリや決済サービス向けに提供され、CO2排出量を可視化して消費者の行動変容を促す。今回は、りそな銀行のアプリにおいて、自身のプロフィールを登録してデビットカードを利用すると、使用項目から排出量を推定。例えば交通だと飛行機よりは電車の方が排出量が少ないなどが確認できる。
この場合、移動距離などを登録することでより詳細な排出量が推定される形で、正確な排出量を知るというよりも、消費行動における大まかなCO2排出量を可視化して、行動変容に繋げようという試みだ。
すでに提供している海外では、導入によって1週間あたりの平均取引件数が10%伸び、1週間あたりの平均支出額が6%増加するといったメリットがあったという。結果として、ユーザー1人あたりのCO2削減量が13%増加したとのことで、効果があるとecolytiqではアピールしている。
りそな側でも、実際のサービス開始まで日本の環境で適切な推定ができるかどうかを検討。ecolytiqも「日本特有の排出量モデルを構築したい」との考えを示す。
また川邉氏は、今回の施策が主に個人に向けての施策で、まずは特に若年層に利用されているデビットカードを活用するが、クレジットカードに関しても広げていく構想は持っているとしている。



















