月経(生理)ではないのに出血が起こる不正出血。不正出血はなぜ起こるのでしょうか。その原因や関連する病気、対応策をお伝えします。
■不正出血とは
一般に「月経以外の性器出血」を不正出血といいます。医学的に統一された用語はなく、不正性器出血、不正子宮出血、機能性出血、異常子宮出血などと呼ばれることもあり、さまざまな言葉が使われているのが現状です。
月経周期以外の時期に起こった性器出血は、すべて不正出血となり、過多月経や排卵の前後に起こる排卵出血も含まれます。出血の量や期間、色による区別はありません。思春期の若年女性から閉経後の高齢女性まで幅広い年代で起こり、婦人科の受診理由としても多いものです。
■不正出血はなぜ起こる?
不正出血の原因はさまざまです。主な原因として次のことがあげられます。
<ホルモンバランスの乱れ>
月経には主にエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の2つのホルモンが関係しています。何らかの原因でこのホルモンバランスが崩れることで、月経周期が乱れるだけでなく、不正出血が見られることがあります。例えば、閉経が近くなるとホルモンバランスが乱れはじめ、不正出血が起こりやすくなります。
・卵巣機能不全
女性ホルモンの分泌を担う卵巣の機能が低下することで、月経周期の乱れや無月経、不正出血が起こる状態です。過度なストレスや睡眠不足、ダイエット、加齢などさまざまな理由で起こり、原因がはっきりとわからないこともあります。
・排卵出血
月経と月経の中間、ちょうど排卵期にあたる時期に起こる出血です。少量の出血が1~3日続くことが多いといわれています。これは主にエストロゲンの分泌量が急激に増えるか、逆に減ってしまうことで起こります。
・更年期障害
閉経が近くなるとホルモンバランスが乱れはじめ、不正出血が起こりやすくなります。
<炎症>
子宮内膜や腟の炎症で出血が起こることがあります。閉経や加齢によって起こる委縮性腟炎でも不正出血が起こります。
<妊娠>
本人が妊娠に気づかず、不正出血と思い込んでしまうことがあります。経過が順調な妊娠でも、着床出血と呼ばれる出血が起こることがあるほか、流産や異常妊娠でも出血が起こります。
<外傷>
性行為によって外陰部や腟にできた外傷によって出血することもあります。
<薬の副作用>
ピルのようなホルモンを調整する薬の副作用で不正出血が起こることもあります。
<疾患>
何らかの疾患が原因で不正出血が起こることがあります。詳しくはこのあと解説します。
■症状として不正出血が現れる疾患
不正出血は一時的なものであれば問題ない場合もありますが、次のような病気が原因となっていることもあります。
<子宮の病気>
子宮腟部びらんのほか、子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、子宮腺筋症など良性の腫瘍が原因となることがあります。
<感染症>
クラミジアや淋病など、性感染症が原因となることもあります。
<悪性腫瘍>
子宮頸がん、子宮体がん、子宮肉腫、卵巣がんなどの悪性腫瘍によって出血することがあります。
上記のほか、血液凝固の異常が起こる内科的な疾患が原因となることもあります。
■不正出血があったらどうする?
不正出血の原因にはホルモンバランスの乱れから悪性腫瘍まで、さまざまなものが考えられます。下記のような場合は特に産婦人科を速やかに受診しましょう。
・不正出血が続く
・出血量が多い
・出血が止まらない
・痛みを伴う
<気になることがあれば迷わず産婦人科へ>
上記以外でも、不正出血などをきっかけに産婦人科を受診することは、今後のためにも大変意義高いことです。初経、妊娠、更年期など、女性の体にはライフステージごとにさまざまな変化が訪れます。それと同時にトラブルが起こることも少なくありません。そんなときに体のことを相談できる産婦人科医は大変心強い存在となります。
<不正出血、病院ですること>
産婦人科では、不正出血の状況を確認する問診のあと、外陰部や腟、子宮に異常がないか診るために内診を行います。必要な場合は妊娠検査(尿検査)やがん検査、超音波検査、血液検査などさまざまな検査を行うことがあります。
一度の検査では原因がわからず、時間をおいて何度か検査をしながら経時的な変化を観察する場合も。その際は同じ産婦人科を受診する必要があります。
■体からのサインを見逃さないで
不正出血の原因はさまざまで、ストレスによるホルモンバランスの乱れなど、一時的であれば問題ないこともあります。とはいえ、たとえストレスによるものでも放置はよくありません。医学的には不正出血があること自体が異常とみなされます。慎重に経過を観察し、続く場合や気になる場合は早めに受診しましょう。
最後に不正出血について、産婦人科の専門医に聞いてみました。
不正出血の原因は、子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、子宮腺筋症といった良性の器質的疾患や、子宮頸がん、子宮体がんなどの悪性腫瘍、von Willebrand病のような血液疾患による凝固機能障害、多嚢胞性卵巣症候群や甲状腺機能低下症、高プロラクチン血症、体重減少、ストレスなどによる排卵障害、ホルモン療法や抗菌薬などの薬剤性・医原性のもの、帝王切開瘢痕症候群によるものなど、非常に多岐にわたります。
婦人科では、年齢や既往歴、家族歴に加え、月経経過、不正出血の経過も参考にした上で、血液検査、エコー検査、さらに必要時にはMRI検査を行い、原因を調べます。治療法は診断結果を踏まえた上で、子宮鏡手術による内膜ポリープ切除や粘膜下筋腫切除、また腹腔鏡手術、ホルモン療法などが考えられます。悪性腫瘍の場合であっても早期に発見することで低侵襲手術である腹腔鏡手術の提案ができることがあります。
不正出血を含め、月経について困っていることがあれば、婦人科で相談していただくことを勧めます。臓器などに明らかな異常がないケースでもホルモン療法でQOLの改善が期待できる場合があります。