ドジャース、山本由伸は日本人初のサイ・ヤング賞に輝ける…?白熱するサイ…

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 ロサンゼルス・ドジャースの山本由伸が、20日(日本時間21日)に行われたアリゾナ・ダイヤモンドバックス戦で先発登板し、7回1安打無失点9奪三振の好投を披露。今季はここまでリーグ屈指の成績を残し、サイ・ヤング賞候補にも挙げられている。そこで今回は、サイ・ヤング賞を争っている投手たちの成績を分析した。(文:Eli)

 

 MLBアドバンスメディアのシニアデータベースアーキテクトを務めるトム・タンゴ氏はサイ・ヤング賞受賞者を予想する簡単な式を考案した。イニング数、自責点、奪三振数、勝利数を基にしたこの式は2020年まで高い確率で高い精度でサイ・ヤング賞受賞者と投票数順位を予測できている。今回は、この式を近年の投票傾向を基に米分析サイト『Fangraphs』がFIP(三振・四球・ホームランによる防御率推定指標)型に調整した式を用いる。

 

 

ナショナル・リーグのサイ・ヤング賞争いの行方は…?

 

 ナショナル・リーグではシーズン前、昨季の新人王ポール・スキーンズと、過去6シーズンで5度のサイ・ヤング賞投票入りを果たしたザック・ウィーラーがトップを争うと予想されていた。2人とも期待通り上位に位置しているが、現時点ではサイ・ヤング賞争いの先頭からはやや遅れをとっているのが現状だ。

 

 代わって現在、激しい争いを繰り広げているのがヘスス・ルザード、ローガン・ウェブ、そして山本由伸の3人だ。

 

 ルザードはオフシーズンに再建中のマイアミ・マーリンズから優勝候補のフィラデルフィア・フィリーズへ移籍。球速が1.0マイル(約1.6キロ)アップし、スイーパーを新たに加えるなど投球内容が大幅に改善された。

 

 ただし、トップレベルの投手としてはハードヒットを許す傾向があり、防御率1.95に対してxERAが3.09と、多少運に恵まれている印象がある。このため、シーズン終盤まで賞レースに残れるかは微妙なところだ。

 

 ウェブはサンフランシスコ・ジャイアンツのエースとしてシンカーとスイーパーを武器に、過去3年間でMLB最多の613.0回を投げるなど、量的な面ではリーグ屈指の存在だった。

 

 しかし、ゴロピッチャーという特性から制圧力にやや欠け、「優秀なイニングイーター」の評価に留まっていた。ところが、今季はシンカー以外の全ての球種で空振り率が向上し、K%も昨年の20.5%から今季27.4%まで急上昇した。

 

 ジャイアンツ守備陣にはリー、チャップマン、アダメス、ベイリーといった名手が揃っており、シーズンを通して良いリズムで投げられれば、念願のサイ・ヤング賞獲得に一気に近づくはずだ。

 

 山本は4月に防御率0.38を記録し、月間MVPを獲得するなどMLB2年目でさらなる飛躍を見せている。5月前半にはやや調子を落とし、ルザードとウェブからは一歩後退していたが、5月20日の登板で7回ノーヒットの快投を見せ、再び賞レースに食らいついてきた。

 

 当初4月は中6日登板だったため、イニング数が不足してサイ・ヤング賞は難しいと予想されていたものの、5月に入るとチーム事情により中5日での登板が続き、イニング数も順調に積み上げられている。

 

 奪三振や打球指標などの内容面でも目立った乖離はなく、実力に見合った成績を残している。この調子を維持できれば、シーズン最後までサイ・ヤング賞争いに加わる可能性は十分にあるだろう。

アメリカン・リーグのサイ・ヤング賞争いの行方は…?

 アメリカン・リーグでも新顔3人がトップ争いを繰り広げている。昨季サイ・ヤング賞を受賞したタリク・スクバル、ホワイトソックスからトレードされ、ボストン・レッドソックスと6年1億7000万ドルの契約延長を結んだギャレット・クロシェがサイ・ヤング賞筆頭候補であったが、この2人を抑えてベテラン2人と若手2人が躍動している。

 

 

 トップを走るのはハンター・ブラウンだ。平均96.9、最速99.6マイル(約154~159キロ)のフォーシームとシンカーを軸に今季ブレイク。AL2位の奪三振率(K%)32.2%、AL1位のFIP1.92を記録し、打球指標も良好でALトップのxERA2.73を誇る。

 

 過去2シーズンを見て耐久性にも問題はなく、26歳にして初のサイ・ヤング賞獲得も十分可能だろう。

 

 ブラウンを追うベテラン勢はマックス・フリードとネイサン・イバルディだ。フリードはニューヨーク・ヤンキースと8年2億1800万ドルの大型契約を結び、ヤンキースの投手分析力を生かしてシンカーとスイーパーを改良し、防御率を4月、5月とも1点台に抑えている。

 

 イバルディは35歳のベテランで、かつてのような100マイル(約160キロ)のフォーシームはなくなったが、経験に裏打ちされたカーブ、カッター、スプリットを駆使し、防御率1点台の好成績を残している。

 

 そして、これらの投手を追うのがクリス・ビュービッチだ。2024年の大半をトミージョン手術のリハビリに費やし、リリーフとしてのみ登板していたが、今季は先発として復帰。

 

 好調なスタートを切り、防御率1点台、K%25.0%(AL10位)、xERA3.05(AL7位)と実力を証明している。

 

 武器のフォーシームは92.3マイル(約148キロ)とやや遅いが、高めに集中させる優れた制球力とフラットな軌道で空振り率31.2%を記録。

 

 この球速帯での好成績維持は未知数だが、昨季の今永昇太のような例もあり、サイ・ヤング賞争いに絡む可能性は十分にあるだろう。

ドジャースが迎える“重要な課題”は…

 最後に両リーグの隠れサイ・ヤング候補を挙げる。ナショナル・リーグはアトランタ・ブレーブスのスペンサー・シュワレンバックだ。シュワレンバックはフラットなフォーシームを含む4球種を操り、優れた制球力も備えている。

 

 今季は61.1回で防御率3.52とまずまずだが、昨季123.2回、防御率3.35、今季序盤に16イニング連続無失点を記録するなどブレイクの兆しを見せている。

 

 

 アメリカン・リーグからはテキサス・レンジャースのジェイコブ・デグロムを挙げたい。2度目のトミージョン手術から復帰したデグロムは、防御率2.29、xERA2.83、K%26.6をマーク。

 

 平均球速97マイル(約157キロ)のフォーシームと89.3マイル(約143キロ)のスライダー、リーグトップの制球力(Location+116)を誇り、Pitching+126はリーグ最高レベルだ。健康面さえ保てればサイ・ヤング賞獲得も十分可能だろう。

 

 

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【了】