起業したいけれど、資金やノウハウに関して不安や悩みのある方は多いでしょう。国や地方自治体では、起業を支援する取り組みを数多く行っており、積極的に利用するのもよいでしょう。

この記事では、主な起業支援の種類や具体的な取り組みを紹介します。これから起業を目指す方はぜひ参考にしてください。

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起業支援は大きく分けて3種類ある

国や地方自体が行っている起業支援の取り組みは、主に以下3つです。

  • 融資制度
  • 補助金・助成制度
  • 起業ノウハウなどのセミナー

融資制度は、事業に必要な開業資金や運営資金をまかなうためのお金を貸し出すものです。日本政策金融公庫が実施している融資制度が有名です。一般的な金融機関よりも金利が低く設定されているため、返済の負担も比較的軽くて済むのがメリットで、通常よりさらに金利を引き下げられる制度もあります。

補助金や助成金は、事業者にお金を交付する制度です。商工会議所などが実施しており、融資と異なり、返済する必要がないのがメリットです。ただし、経営計画などを事務局に提出し、審査を受けて採択される必要があります。

起業のノウハウをレクチャーしたりアドバイスを受けられたりする取り組みも。ビジネスプランの作成方法、融資や補助金を受けやすくするための方法などを教えてもらえます。

国が行う主な起業支援の取り組み

国が実施している主な取り組みを紹介します。

  • 新規開業・スタートアップ支援資金
  • 創業支援貸付利率特例制度
  • 小規模事業者持続化補助金
  • ものづくり補助金
  • IT導入補助金

新規開業・スタートアップ支援資金

日本政策金融公庫が実施している、これから起業する方を対象にした融資の事業です。創業時の資金調達で日本政策金融公庫を選ぶ方は多く、起業で利用する融資制度としては定番ともいえる人気があります。

一般的な金融機関の融資よりも低金利で利用でき、女性・若者・シニアの方、廃業歴があり創業に再チャレンジする方などは、さらに有利な条件で利用できます。

融資限度額は7,200万円(運転資金は4,800万円)です。返済期間は設備資金は20年以内、運転資金は10年以内で、据え置き期間もあるため、長期で返済していけます。

金利は年率2.1%〜4.0%で、使い道や融資期間、担保の有無などによって決定されます。

創業支援貸付利率特例制度

こちらも日本政策金融公庫が実施している制度で、融資制度での金利を下げられるものです。審査で認められれば、各融資制度の利率から0.65%が差し引かれるため、金利の負担が減ります。

たとえば融資の金利が2.5%の場合、0.65%が引かれて1.85%になります。長期的に返済していくことを考えると、経営上では大きなメリットです。また、雇用の拡大をする場合、-0.9%とさらに金利の負担を減らすことが可能です。

創業支援貸付利率特例制度を利用できるのは、新たに起業をする方、あるいは事業開始後に税務申告を2期終えていない方です。新規開業・スタートアップ支援資金などと併用することを検討するとよいでしょう。

小規模事業者持続化補助金

全国商工会連合会が行っている、小規模事業者を対象とした補助金制度です。小規模事業者の販路拡大などの取り組みの経費の一部を補助し、地域雇用や産業を支えることが目的となっています。

補助金を獲得するには、経営計画書・事業計画書を提出し、事務局の審査を受ける必要があります。審査で採択されなければ補助金は獲得できませんので、計画書の内容が非常に重要です。

小規模事業者持続化補助金は定期的に実施されており、現時点では第17会の締切が2025年6月13日の17時となっています。申請は電子申請システムのみであり、郵送では受け付けていませんので注意しましょう。

ものづくり補助金

ものづくり補助金とは、中小企業や小規模事業者がイノベーティブなサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための支援をする制度です。こちらも定期的に公募されており、電子申請で申し込みます。

補助上限額は従業員によって異なり、5人以下は750万円、6〜20人では1,000万円、21〜50人は1,500万円、51人以上では2,500万円となっています。

第18次の公募・採択の状況を見ると、申請者は5,777人、採択者は2,070人です。採択率は35.8%で、3人に1人程度は採択されたことになります。

次回の公募は20次で、公募締切日は2025年7月25日、採択発表日は2025年10月下旬頃です。

IT導入補助金

ITツールの導入を支援する補助金制度で、業務効率化やDX推進を狙いとしています。ITツールとはソフトウェアやサービスなどで、相談対応のサポート費用、クラウドサービス利用料も補助対象に含まれます。

対象となるITツールは、補助金の公式ホームページに公開されているもののみであることに注意が必要です。事前に確認しておきましょう。

主な地方自治体の起業支援

地方自治体でも、起業を支援する取り組みが多数行われています。その中から代表的なものをいくつか紹介します。

  • 東京都「女性・若者・シニア創業サポート事業」
  • 横浜市「特定創業支援等事業」
  • 千葉県「県融資制度」
  • 埼玉県「創業・ベンチャー支援センター埼玉」
  • 大阪府「大阪起業家グローイングアップ事業」

東京都「女性・若者・シニア創業サポート事業」

東京都内での女性や若者・シニアの方の創業を支援するため、以下3つの支援をパッケージ化して提供する取り組みです。

  • 低金利の融資
  • 創業後の経営サポート
  • 事業計画のアドバイス

東京都内の信用金庫や信用組合、地域の創業アドバイザーも連携し、創業者をサポートします。融資だけでなく、事業計画書の作成や経営でのサポートを受けられるのがメリットです。

関連のセミナーも開催されており、創業支援セミナー、シニア向け座談会セミナー、事業計画書作成支援セミナーなどが定期的に開催されています。無料で参加できるため、まずはセミナーに申し込むのもよいでしょう。

横浜市「特定創業支援等事業」

地域の創業を促進させるため、横浜市で実施している取り組みです。「経営」「財務」「人材育成」「販路拡大」などの知識を学べるセミナーを開催しており、セミナーを受講した創業者や創業希望者は、以下のようなメリットを享受できます。

  • 登録免許税の減免を受けられる
  • 横浜市の融資制度「創業おうえん資金」を事業開始6ヶ月前から利用できる
  • 「創業おうえん資金」の融資利率が軽減され、保証料率が全額助成される
  • 日本政策金融公庫の貸付利率引き下げの対象になる
  • 「空き店舗開業助成事業」に申請可能になる

融資や助成金などで有利になる特典がさまざまあるため、横浜市で起業しようと考えている方におすすめです。まずセミナーを受講して、認定を受けましょう。

千葉県「県融資制度」

千葉県で実施している、低金利の融資制度です。千葉県内で事業を営む中小企業の経営者または新規創業する方が対象です。

設備資金・運転資金ともに年率1.4%〜2.0%の低金利で融資を受けられ、返済期間は最大10年以内となっています。

創業資金に関しては、創業後5年未満までの方が対象となっています。創業から4年経過した方でも利用できるため、すでに創業した方でも融資が必要な場合は利用を検討するとよいでしょう。

県融資の対象にならない業種、資金使途があることに注意が必要です。業種では農林漁業や金融・保険業などは対象外で、資金使途では投資資金や借換え資金には利用できません。

埼玉県「創業・ベンチャー支援センター埼玉」

こちらは埼玉県の公的な創業支援の総合相談機関です。創業を検討している方、創業後の経営状況に悩みのある方などをサポートしています。

支援メニューとして、創業個別相談、セミナー・イベント、女性起業支援ルームCOCOオフィスなどがあります。創業個別相談は事前予約制で、無料で相談可能です。創業・経営・事業拡大・IT・金融などの専門家が相談に乗ってくれます。

相談時間はおおむね1時間程度、1人あたり2枠まで相談予約ができます。「創業・ベンチャー支援センター埼玉」の公式サイトで予約できるほか、電話でも受け付けています。

大阪府「大阪起業家グローイングアップ事業」

大阪で起業する方に対し、一貫した支援を組み合わせて支援する取り組みです。有望起業家の発見、補助金の支給、ビジネスプラン策定など幅広い範囲に及びます。

ビジネスコンテストでは優勝者には補助金100万円)、準優勝者には50万円が支給されます(いずれも年間上限、かつ補助率1/2)。また優勝者・準優勝者ともに、中小企業診断士などによる伴走型支援を3ヶ月受けられます。

セミナー・イベント・交流会も定期的に行われています。2025年7月・8月に行われる創業セミナーは、1日目が経営・販路開拓、2日目が財務・人事をテーマとし、座学だけでなくワークとグループ討議も実施します。

2日間とも交流会を行い、参加自由で参加費は無料です。起業家同士のネットワークを広げたい方、人脈を作りたい方には魅力的でしょう。

起業支援を受ける際に押さえておきたいこと

起業支援を受ける際には、以下の点を押さえておきましょう。

住まいの自治体の情報をよく確認する

多くの都道府県では、低金利の融資や経営アドバイスなどの起業支援を行っています。ただし、制度の利用条件などは自治体によって異なる点に注意が必要です。

他の都道府県の事例を見て参考にするのはよいですが、居住または事業を営む地域の自治体の情報を必ず確認するようにしましょう。

補助金や助成金は専門家への相談もおすすめ

補助金や助成金は事務局の審査を受け、採択される必要があります。経営計画やビジネスプランなどを、魅力的かつ説得力のあるように説明しなくてはなりません。

初めて申請する場合、どのように資料を作成すればいいか、わからないことも多いでしょう。自分一人では申請が難しいと感じるなら、団体や専門家などに相談することもおすすめです。