テレビ画面を注視していたかどうかが分かる視聴データを独自に取得・分析するREVISIOでは、11日に放送されたNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(総合 毎週日曜20:00~ほか)の第18話「歌麿よ、見徳は一炊夢」の視聴分析をまとめた。

  • 『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第18話より (C)NHK

    『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第18話より (C)NHK

もはや少女の頃の面影はない

最も注目されたのは20時39~41分で、注目度77.0%。誰袖(福原遥)の艶やかな花魁道中のシーンだ。

日暮れの吉原では花魁道中が行われていた。花魁のあまりの美しさに多くの見物客が歓声を上げる。道中の中心にいる誰袖に、もはや少女の頃の面影はない。

その頃、駿河屋では、蔦重(横浜流星)が朋誠堂喜三二(尾美としのり)が書いた『見徳一炊夢(みるがとくいっすいのゆめ)』を読んでその出来栄えに大喜びしていた。腎虚の際に見た悪夢を糸口に書き上げた作品である。

喜三ニの息子も絶好調だなどとくだらない話をしていると、誰袖が喜三ニを迎えにやって来た。一作書き上げた喜三二への蔦重からの報酬である。「どうぞ、兄さんもご一緒に」蔦重は抜かりなく誘いをかけてくる誰袖を軽くかわしてその場を去った。

  • 『べらぼう』第18話の毎分注視データ推移

「小悪魔的な色気が出ていい!」

注目された理由は、瀬川(小芝風花)とはまた違った風情の誰袖の花魁道中に、視聴者の視線が「クギづけ」になったと考えられる。

前回、初登場を果たし、オフモードで暴れまくっていた誰袖だが、今回は初めてスイッチの入ったオンモードの姿を披露した。花魁として堂々たる風格を備えていた。女優はすごい。しっかりと稽古を積み、花魁にまで上り詰めたその姿は、瀬川とは違った魅力にあふれた見事なものだった。

SNSでは、「誰袖さんの花魁道中、あどけなさが残りつつも小悪魔的な色気が出ていい!」「花魁モードの誰袖ちゃん、昼間とはまた違う印象があるね」「瀬川は粋でクールな色っぽさだったけど、誰袖ちゃんはキュートで愛らしいって感じ」といったオンオフのギャップや、瀬川との対比に言及するコメントが集まった。

瀬川を演じた小芝風花の評判が非常に高かったため、福原遥には相当のプレッシャーがあったと推察されるが、福原の素晴らしい好演によって視聴者は誰袖の虜となっているようだ。

女郎は細かく階級が分かれており、花魁の中でも3つのランクがある。上から呼び出し、昼三、附廻だが、誰袖は史実では呼び出しなので、まさに大文字屋のナンバーワンと言えそうだ。一般の女郎は格子戸のある部屋の店先に座り、外を通る客に自分の姿を見せて客引きを行った。これを張見世という。しかし呼び出しは駿河屋のような引手茶屋を通じて客に指名され、花魁道中を行って直接迎えに行く。

喜三ニがてんやわんやの末に仕上げた『見徳一炊夢』は、友人である恋川春町(岡山天音)の執筆した『金々先生栄花夢』とよく似た構成の話で、短い時間の中で見た夢が壮大な物語になっている。主人公の清太郎という金持ちの息子が、親の金を盗んで夢を買い、日本中で豪遊。夢の中で70歳になった清太郎は家に戻るが、その時には家は没落していた。しかし実際は、放蕩三昧をしたことも、実家が落ちぶれていたことも、清太郎がそば屋に出前を頼んでそばが届くまでの短い間に、居眠りをして見た夢にすぎなかったという話だ。この作品は蔦重にとって後々大きな意味を持つようになる。