そんな張り詰めた日々の中で、気持ちを楽にしてくれたのは、やはり故郷の両親。「母に電話することが多くて、たまに“この仕事は向いてないかもしれない”と弱音を吐くと、“いつでも帰ってきていいからね”という言葉をもらって、すごく楽になった思い出があります」という一方で、「“こんなことでは帰らないぞ”、“もっと頑張らなきゃ”という気持ちになった記憶があります」と、奮い立たせてくれるエールにもなった。
また、今回の福山さんにとって地元の友人との他愛もない会話が癒やしになっているように、「私も演劇をやっている友達と話すことがすごく息抜きになっていました」とも。さらに、「舞台や映画を観ることが、息抜きになると同時に“みんなも頑張ってるから、私も頑張ろう”と、いいモチベーションにもなっていました」とハイブリッドな効果になっていたそうだ。
厳しい指導にも「なにくそ!」
2人の若者の面倒を見る井上さんのような“師匠”と言える存在として挙げるのは、高校時代の演劇部の先生や、「最初に私を見つけてくださった方」とオーディションで見いだしてくれた劇作家・演出家の野田秀樹氏など。「まだ厳しい指導が残っている時代だったので、高校時代の先生にシビアなことを言われても“なにくそ!”と頑張れましたし、憧れの野田さんがかけてくださった言葉は、何でも吸収したいという思いで日々演劇に取り組んでいました」と振り返る。
そこから時代を経て、厳しい言葉で指導することが難しい世の中になったが、「自分の足りない部分を指摘してくれる人は、歳を重ねると減ってきますからね。叱ってくれる人がいるのはありがたいことだと思います」と、とらえた。
新年度最初の放送となる今回の『ザ・ノンフィクション』。この春上京した人へのメッセージを求めると、「東京はいい意味でも悪い意味でも広い街なので、自分が何をしたいか目的を明確に持っていないとすぐ迷子になってしまう場所だと感じます。だからと言ってそんなに怖がる必要はないと思いますが、新しいスタートを切るのですから、楽しいことや自分の目標や夢に向かって、まずはがむしゃらに頑張る。でも、頑張りすぎて病んでもいけないので、モチベーションをなくさないように適当な時もあっても良いのかなと思います」と呼びかけた。
●黒木華
1990年生まれ、大阪府出身。2010年、NODA・MAP番外公演『表に出ろいっ!』でデビュー。近年の主な出演作に、映画『日日是好日』『イチケイのカラス』『せかいのおきく』『アイミタガイ』、ドラマ『凪のお暇』『下剋上球児』『光る君へ』、舞台『ケンジトシ』『ふくすけ2024―歌舞伎町黙示録―』など。2025年も公開待機作が数本控えている。