高知県出身の漫画家やなせたかしさんと妻・暢さん夫妻をモデルに描かれる連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか ※土曜は1週間の振り返り)の「第1回を見る回」と題したパブリックビューイングが31日、やなせさんの出身校である高知県立高知追手前高等学校のホールで開催。北村匠海演じる柳井嵩の母・柳井登美子役の松嶋菜々子がゲストとして登壇し、『あんぱん』の撮影裏話を語るとともに、これまでの朝ドラ出演作を振り返った。

  • 松嶋菜々子

    「連続テレビ小説『あんぱん』第1回を見る会」に登壇した松嶋菜々子

第1回では、暢さんをモデルにしたヒロイン・朝田のぶ(今田美桜)と、やなせさんをモデルにした柳井嵩の幼少期からスタート。時代は昭和初期で、ハチキン(高知の方言で勝ち気な女性を表す)ののぶ(永瀬ゆずな)が、駅で仕事帰りの父・結太郎(加瀬亮)を迎えに行った際に、柳井嵩(木村優来)や母・登美子(松嶋菜々子)と出会うシーンが描かれた。

松嶋は高知の感想を聞かれると「イベントの3日前から高知へ入って、レンタカーを借りていろいろと回らせていただきました。魅力がたくさんあって、大好きになりましたと」と語り、牧野植物園や坂本龍馬記念館、桂浜、モネの庭、やなせたかし記念館、五台山など、いろいろと車で回ったことを明かし、会場を驚かせた。

松嶋といえば、『あんぱん』の脚本家・中園ミホ氏によるドラマ『やまとなでしこ』(2000年/フジテレビ)で主演を務めていたこともあり「アンパンマンというキャラクターは私も大好きで、子供にも読み聞かせをしたりして親しみのあるキャラクターでもありますが、やはり中園ミホさんが『(登美子役を)ぜひやってください』とおっしゃってくださったことが光栄でした」とオファーを快諾したそうだ。

『ひまわり』で得た自信「この先なんでも乗り越えられると…」

1996年度前期の連続テレビ小説『ひまわり』のヒロインに抜擢され、一躍人気女優となった松嶋は、『あんぱん』で朝ドラ出演は3本目となる。2019年度前期の『なつぞら』では、広瀬すず演じる奥原なつの育ての母役を演じたが、今回は柳井嵩の母親役を演じることに。

松嶋は、「『ひまわり』が初主演で、演技の仕方を何から何まで教えていただいたのはNHKの方々なので、そういう意味で原点と言いますか、そういうものです」と『ひまわり』を回顧。

「撮影がとても過酷で、弁護士役だったので、すごく台詞も多くて。起きてるのか寝てるのかがわからないような撮影で、家に帰って台詞を覚え、台本を胸の上にのせたまま寝ていて、起きたらまた現場に行かなきゃいけなくて。あれほど過酷なことはなかったけど、これを乗り越えられたんだったら、この先なんでも乗り越えられると思いました。それが私の自信にもなったので、とても大切な作品です」としみじみ語る。

また、「当時『次はお母さん役だね。大河ドラマもやってね。それで最後、お母さん役で戻ってきてね』なんて言葉をよくかけられていたので、『この先も精進します』と言っていました。『なつぞら』でそれが叶い、自分でも感慨深いものがありました。『ひまわり』でのお母さん役が夏木マリさんでしたが、私がもう夏木さんの役をやるのか! と思った時、すごく自信がなくなるというか、お母さん役という大役を、私が務められるんだろうかという緊張感もありました」と振り返る。

そんな朝ドラについて「私にとって大切なもので、役者をやるという人生の中での節目になっている作品でもあります」と述べ、「大河(『利家とまつ~加賀百万石物語~』)でも主演をやらせていただき、(2作で)お母さんもやらせていただいていますので。だから大河や朝ドラの出演俳優として、それに恥じないような仕事をしていきたいという気持ちです」と襟を正す。

今回演じる登美子については「史実にもあるように、息子を夫の弟に預けて、自分は再婚していなくなるわけですが、最初に説明を受けた時、1人目の子どもを養子に出し、2人目も預けて自分はいなくなるというのが、なかなか難しい感情だなと思いました。最初はどういう人物なんだろう? と思いましたが、台本が上がってきて台詞にすると、もっともっと理解に苦しむというか、難しい役柄だなと思いました。でも、そこには子供や夫への愛情もあったんだなと思い、自分の気持ちの焦点を当てていくと、自然といろんな事柄に整合性がついてきて、台詞にもすごく意味を持たせられるので、そこがやっぱり原点なのかなと思って演じています」と語った。

  • (C)NHK

2度目の親子役・北村匠海は「人間としての器を醸し出している方」

嵩役の北村匠海とは、ドラマ『王様に捧ぐ薬指』に続いて2度目の親子役となる。北村はビデオメッセージで松嶋について「自分のお母さんという立ち位置でドラマに参加するのは2回目です」と語り、登美子については「松嶋さんとのシーンは、どこか悲しいものが多いですねと、現場で話したのが印象的です」と話した。

松嶋は北村について「北村さん自身が持っている雰囲気自体が、すごく包み込むような雰囲気なんです。こんな母でも許せる、許してくれてるというオーラが出ている方で。そんな嵩役でもあると思いますが、やはり北村匠海さんは、人間としての器みたいなものを醸し出している方だなといつも思っています」と印象を述べた。

さらに今後について、「養子に出した千尋が養子先になついていることにちょっとジェラシーを感じ、育ての母(戸田菜穂演じる柳井千代子)と生みの親とのバチバチのやり取りも描かれます」と予告。

最後に、松嶋は「このたび、みなさんが大事にされている、やなせたかしさんの物語を演じさせてもらうことになりまして、とても緊張しておりますが、大事に大事に演じていきたいと思いますので、みなさん温かい目で見ていただけましたらと思います」と締めくくった。