東海テレビ・フジテレビ系「土ドラ特別企画」として、2週連続で放送されるスペシャルドラマ『介護スナックベルサイユ』(22日・29日23:40~)。物語の舞台は、タイトルの通り「介護スナック」。一見、雰囲気のあるスナックだが、昼間はケアマネージャーや看護師として働くスタッフがそろい、点滴が“ボトルキープ”され、客の体調に合わせた料理を出すという立派な介護施設だ。

要介護の高齢客たちがこの店に足を踏み入れた途端、見違えるように元気になり、生涯に一度、一杯だけ味わえるという特製のワインを飲めば、若かりし日にやり残したことや置き忘れたものを取り戻す幻想の世界へ。そして締めには、人生を振り返って一番の思い出の料理が提供される――“介護”という現実的なワードとは相反するようなファンタジーなイベントが次々に起きるが、こうして彼らの人生の一端を垣間見ることによってどの世代にも生きる活力を与えてくれる作品になっている。

劇中でそれを体現するのは、他人を信じない新入り従業員・小日向柊(尾碕真花)。ママ・上杉まりえ(宮崎美子)らとの交流を通して、成長する姿が描かれていく。マイナビニュースでは、実際に営業しているスナックで行われた撮影現場に潜入し、舞台裏をレポートする。

  • 『介護スナックベルサイユ』に出演する尾碕真花(左)と宮崎美子

    『介護スナックベルサイユ』に出演する尾碕真花(左)と宮崎美子

ワインのシーンはハイスピードカメラで撮影

撮影が行われたのは、東京・青梅市の住宅街のど真ん中にある小さなスナック「径花」。外観から雰囲気を感じさせる築40年超という平屋の建物だ。扉を開けると棚に狭しと並ぶボトルキープ、カウンターに置かれた手作りの梅干しなどが目に飛び込み、昭和にタイムスリップしたかのような古き良き“ザ・スナック”の空間が広がる。

この日行われていたのは、客としてやってきた割烹料理店の元店主・三俣史郎(石倉三郎)のシーン。ラベルに「SEE YOU IN MY IN MY DREAMS (夢の中で会いましょう)」と書かれたワインを飲み干し、人生の終わりにどうしても会いたかった人に会う――というファンタジックな場面だ。

ママ(宮崎)が注いだグラスのワインを見つめて「見事なワインレッドや」とつぶやく三俣(石倉)。そして、グラスを口に運び、目をつぶって味わうように飲み干すと、「うまいなあ…」と至福の表情を浮かべる。そんな石倉の姿を、横に座って優しいまなざしで見つめる宮崎も印象的だ。

こうして、“会いたかった人”に会えたものの、悔いの残る別れになってしまった三俣。その姿に思わず「気まずっ…」と漏らすのは、カウンターに立つ柊(尾碕)だ。幼少期のトラウマにより高齢者が苦手なキャラクターを、この一言と絶妙な表情で体現していた。

三俣がワインを飲むシーンは、ハイスピードカメラでも撮影。様々な角度から丁寧に映し出していき、今作において重要な場面であることが伝わってくる。台本のト書きには「次第にボックスの空気が変わり、夢の世界へ」とあるが、これがどのように映像化されたのかにも注目だ。

ただ、スタジオではない本物のスナックでの撮影では、狭いスペースでカメラに映り込まない場所に逃げていく十数人のスタッフたち。特にワイングラスにフォーカスするカットは、グラスに反射して思わぬ場所が映ってしまうため、筆者を含め各々が自分のスペースを確保するのに苦労していた。