俳優の横浜流星が主演を務める大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)。23日に放送される第12回「俄なる『明月余情』」では、吉原で行われる「俄(にわか)祭り」が100名以上の出演者によって壮大なスケールで描かれる。同回の演出を担当した小谷高義ディレクターに見どころや裏側を聞いた。

  • 大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』第12回「俄なる『明月余情』」の場面写真

江戸時代中期の吉原を舞台に、東洲斎写楽、喜多川歌麿らを世に送り出し、江戸のメディア王にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く本作。脚本は、『おんな城主 直虎』(17)以来、8年ぶり2度目の大河ドラマとなる森下佳子氏が手掛ける。

第11回で蔦重が出演をオファーした“馬面太夫”こと富本豊志太夫(寛一郎)(※第12回からは『富本豊前太夫』)も参加する俄祭りは、蔦重が出版した絵本『明月余情』をもとに映像化。小谷氏は、本から祭りのスケールや蔦重の熱意を感じ、ドラマでも丁寧に描きたいと思ったという。

「俄は30日間続く祭りで相当なお金と労力がかかるものです。その祭りを題材に『明月余情』は3冊出ていて、一気刊行ではなく、1編のあとに2編、そのあとに3編という風に出版されているようなんです。描かれている絵は今にも動き出しそうで実況中継みたいだなと。蔦重が吉原を盛り上げたいという思いで、祭りの面白さを伝えようとしているんだなと感じましたし、森下さんも祭りの多様な面にフォーカスされていたので、映像として豊かなものを目指しました」

また、芸者や禿(かむろ)が出し物の主役で踊るというのが俄祭りの特徴だという。

「歌舞伎を男性ではなく女性がやるというのもなかなかないし、さらに子供に演じさせるというのも珍しい。そこは特徴のひとつだと思うので、描きたいと思いました」

そして、吉原を挙げての祭りということで「規模感を大切に、他で見られないものにしたい」とディテールにこだわった。

「芸能指導の先生や所作指導の先生に音曲や舞を作ってもらって。絵のほかにはなかなか詳細は残っておらずほぼ1からご相談させてもらって、見るだけでも楽しめるものにしたいというのが大前提でした」

また、「吉原がものすごいお金と人を投入して30日もかけて俄をやるのは、客を呼びこみたいというのがすべて」ということも、もう一つの前提として大切に。

「吉原にとっては大きな賭けをしてリターンを得ようとしたるものだということを無視できません。それで言うと、女郎さんは出し物に一切出ないんです。祭りの期間であろうと、客の横で相手をするのが仕事で、出し物で楽しませる必要はないというのが、厳然たる吉原の姿で徹底しているなと。映像としては俄の祭りを楽しんでほしいという思いがありますが、画面の端々にいる女郎は茶屋にいても沿道にいても隣には必ず旦那客がいる……吉原の俄を描く上で大きな要素でした」