
7度のグラミー賞を受賞したことのある世界を代表するバンド、Coldplay(コールドプレイ)の10thアルバム『Moon Music』に新たに10曲が追加されたデラックス・エディション『Moon Music (Full Moon Edition)』。そこに収められた新曲のうちの1曲「Man in The Moon」のミュージックビデオの世界最速上映会がシンガポールのランドマークのひとつであるマリーナベイ・サンズ・スカイパークの最上階で開催された。
2月5日、シンガポールの美しい景色が一望できる56階建ての建物の最上階に集まったのはアジア各国のコールドプレイファンやインフルエンサー、メディア関係者たちだ。コールドプレイのツアーTシャツを着用した熱心なファンの姿も目に入る。司会を担当するsupercatkeiが登場し、「今夜はとても特別な夜です。なぜなら私たちが世界で一番最初に『Man in the Moon』のミュージックビデオを観ることになります!」と口にすると大きな歓声が上がった。なぜイギリスのバンドであるコールドプレイのプレミアムなミュージックビデオがここシンガポールで初上映されるのか。「Man in The Moon」のミュージックビデオはシンガポールの観光局とのコラボレーションのもと、シンガポール各地で撮影されたからだ。ミュージックビデオに出演したキャストもこのパーティに来ているということがsupercatkeiから伝えられた。
ミュージックビデオ本編が流れる前にまずはビハインド映像が流れた。「Man in The Moon」のミュージックビデオは「Music of the Spheres」ワールドツアーのシンガポール公演中、2024年5月に撮影されたものであることが明かされた。「シンガポール滞在中、私たちはビデオを撮影し、出会った素晴らしい、若くて活気のある人々を撮影しました。私たちは、これまで撮影したことのない場所で撮影し、できるだけさまざまな人々を混ぜ合わせるのが好きです。私たちとカワウソだけが水の真ん中で一種のダンスパーティーを開くのは本当に楽しかったです」とバンドは語った。監督は「Hymn For The Weekend」のミュージックビデオを手がけたことで知られるベン・モアだ。
「Man in The Moon」ミュージックビデオのビハインド映像より
マリーナ・ベイ・サンズから見えるシンガポール川にこのビデオのために作られた水上ステージで演奏するコールドプレイの面々。多様な人々がシンガポールの様々なスポットで活気あふれる姿を見せるビハインドが流れたことで、上映会に集まった人々の期待は膨らんだ。出演したキャストたちは自分の姿が映ると口々に興奮の声を上げていた。
「Man in The Moon」ミュージックビデオより
「Man in The Moon」ミュージックビデオより
ビハインドの上映後、ここでしか手に入らないコールドプレイの限定グッズがもらえるクイズ大会が行われた。挙手制によって選ばれた参加者が次々と『Man in the Moon』のミュージックビデオやシンガポールにまつわるクイズにチャレンジ。最初の参加者は「7歳のときからずっとコールドプレイのファンで、彼らのすべての作品、彼らが表現するものすべてが大好き!」と口にした。ウキウキした表情でクイズに臨む参加者たちからは終始コールドプレイ愛が溢れていた。supercatkeiが「自身の母親が熱烈なコールドプレイファンで一緒にライブに行ったことがある」と明かす一幕もあった。
Supercatkeiが「最後に皆さんに質問があります。この文を私と一緒に完成させてください! When you call. When you call……」と言うと、「Out my name!」という大きな声が上がり、「Man in the Moon」の歌詞の一部が完成。ついに「Man in the Moon」のミュージックビデオの世界初上映が始まった。
映像はシンガポールのモダンな中にもトラディショナルな雰囲気が混じった街並みからスタート。性別や人種を超えたシンガポールのさまざまな若者がキャストとして登場。コスプレイヤーやクリエイター、飲食店の店員まで──見た目もバックグラウンドもさまざまだ。水上ステージにて、オーディエンスの熱狂の中で躍動感あふれるパフォーマンスをするコールドプレイの映像と、ここマリーナベイ・サンズ他、フォートカニングパークやガーデンズ・バイ・ザ・ベイ、ジュエル・チャンギ・エアポート、チャイナタウン、セントーサ島のシー・アクアリウムといったシンガポールの名所で自分らしく生きるキャストの姿が交差していく。《When I hear you sing from across the wall See the moonlight shine on the waterfall When you call Out my name That's how I know that we cry the same tears And we feel the same pain》(壁の向こうからあなたの歌声が聞こえたら 月明かりが滝に映える様子を見てください 電話をかけるとき 私の名前を出して そうやって私たちは同じ涙を流していることがわかる そして私たちは同じ痛みを感じています)。「Man in The Moon」で描かれているのは個人の違いを超えた連帯と共有の経験だ。ミュージックビデオの終盤、キャストたちは水上ステージに集まり、コールドプレイと合流し、バンドと声を重ねる。
「Man in The Moon」ミュージックビデオより
コールドプレイのフロントマンのクリス・マーティンはInstagramに投稿した動画で「『Moon Music』は自分の内側の争いや外の世界の争いに苦しんでいる時の一番の答えは愛だということを伝えようとした作品だ」と語っていた。そんな『Moon Music』に新たに加えられた「Man in The Moon」もやはり、愛が争いをなくし、私たちには連帯が必要なのだということを歌っており、「Man in The Moon」のミュージックビデオはまさにそのメッセージを体現している。
「Man in The Moon」ミュージックビデオのビハインド映像より
人間や世界にとって大切な普遍的なメッセージを曲にしたためてきたコールドプレイは一方で、最新のテクノロジーと手を組み新たなクリエイティブを生み続けていることでも知られている。2025年1月には『Moon Music』のビジュアル・コンパニオンとして44分のショートフィルム「A Film For The Future」を公開。
この映像も「Man in The Moon」のミュージックビデオの世界最速上映会が始まる前に会場で流れていたのだが、45カ国から集まった150人ものフィルムメイカーやアニメーターによるコールドプレイの音楽を表現した動画を融合させた映像であり、ここにもまたコールドプレイが目指す連帯と共有の経験が落とし込まれている。AIを活用したリミックス・プロジェクトも発足しており、『MOON MUSIC』収録曲「iAAM」に合わせてマイクロソフトのCopilotとAzure AIを使用して自分だけの15秒の動画を作ることもできるのだ。強固な芯を持ちながら多角的な活動を続けるコールドプレイのこれからの展開もまた楽しみだ。
『Moon Music』
Coldplay
ワーナーミュージック・ジャパン
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