都内企業の女性活躍推進に向けた取り組みや、キャリアアップを目指す女性従業員のサポートに注力する東京都が1月28日、「東京女性未来フォーラム2025~企業が"女性活躍"を考える場~」を開催した。
主に企業向けのシンポジウムで、東京都の小池百合子知事と企業経営者らが女性活躍・ダイバーシティ経営の推進に向けた"共同宣言"を行ったほか、経営者らによるトークセッションやワークショップなども実施。今回は"女性リーダーの登用"などをテーマにしたパネルディスカッションの模様をお届けしたい。
女性も男性も「管理職になるのはちょっと…」その原因は?
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左から東レ経営研究所 DE&I共創部の部長・宮原淳二氏、パナソニック コネクト 取締役 執行役員の山口有希子氏、ベネッセホールディングス 人材開発センター準備室・室長の佐藤邦彦氏、吉村の代表取締役社長 橋本久美子氏
パネルディスカッションには、パネリストとしてパナソニック コネクト 取締役 執行役員の山口有希子氏、ベネッセホールディングス 人材開発センター準備室・室長の佐藤邦彦氏、吉村の代表取締役社長の橋本久美子氏が登壇。モデレーターは東レ経営研究所 DE&I共創部 部長・宮原淳二氏が務めた。
パナソニック コネクトの山口氏は、「私も現場でヒアリングしていますが、管理職の話を出すと、男性からも女性からも『管理職になるのはちょっと……』という意見が出てきています」と明かす。「理由を聞くと、『そもそも忙しすぎる』『自分の生活も大切にしたいと思うと、管理職は難しい』と言われる。そこで、現在は今までとは違ったマネジャー像をきちんと作るプロジェクトを進めています」と現状を報告した。
これに「うちもまったく同じです」と同調したのがベネッセの佐藤氏である。佐藤氏は「いわゆる『管理者罰ゲーム問題』ですよね。我々も今、制度を変えようと準備していますが、マネジャーはどの仕事をどこからどこまでやるのか、という部分がちゃんと定義できていない。だから何でも拾って何でも頑張る"曖昧なハイプレイヤー"が昇格し、マネジャーになる」と問題点を指摘する。
女性リーダーについても、「うちは女性の管理職比率が30%以上で、教科書に沿った感じの数字は出ているが、まだまだ女性管理職のロールモデルが少なく、『私に管理職はできません』と言う女性社員も多い」と課題を挙げる。
その解決策のひとつとして佐藤氏は、「マネジャーの仕事をどう軽減させるか、ということを先に取り組まないといけない」と主張。さらに、マネジャーとしての"マインド"と"スキル"を分けて考える必要があると訴える。
「マネジャーに求められるスキルをちゃんと分解して、どのスキルがどのレベルなのかをきちっと把握する。今までは1人のマネジャーがあらゆるスキルを持ってないとダメで、何か足りなければ苦しくなる状況でした。
でも、例えばマネジャーには6つのスキルが必要で、そのうち4つのスキルしか持っていない人をマネジャーにアサインしたとしても、残り2つのスキルに長けたサブマネジャーをつければいい。スキルを分解して把握すればそうやって補完できるし、苦しむマネジャーも減るんじゃないでしょうか」(佐藤氏)
「自分には能力がない」は思い込み。"経験"したらできる!
多くの社員が管理職に就くことを忌避する風潮に対し、山口氏が「本当はマネジャーになるということは、素敵なことなんですけどね」と漏らすと、吉村の橋本氏は「すごい面白いですよね」と引き継ぐ。
吉村は日本茶をはじめとした日本の伝統食品の包装資材・パッケージの製造・販売などを手掛ける昭和7年創業の老舗。橋本氏は2005年、先代社長である父の後を継いで現職に就任した。
「私は専業主婦から社長になりましたが、以前は助手席側の人生だったんです。でも、運転席に座って自分でハンドルを切ったらめっちゃ面白い! これは結局、経験の量が少なかったから、『自分には能力がない』って思い込んでいたんです。でも、実際に経験したらできるんですよ。それは女性社員も若い社員も同じです」(橋本氏)
さらに橋本氏は、「女性に限らず、今は"働く"ということが変わってきていると思う」と話す。
「そういったなかで、うちでは経常利益の4分の1を社員さんに均等還元しているんです。みんなで力を合わせて利益を出したら、その誰もが同じく4分の1の金額をもらえる。こうしてゲーム感覚になると圧倒的な当事者意識が生まれ、社員さん同士が部署をまたいで協力して、自走するようになる。マネージメント側が仕掛けなくても、自分たちで動く。そういう風土を作るのが経営者は大事ではないでしょうか」(橋本氏)
この吉本の社風について、山口氏は「健全な企業カルチャーの風土がある」と絶賛する。
「この健全なカルチャーを作ることがいかに難しいか。例えば、社内で感じた違和感はきちんと口にしようと呼びかけていますが、それが難しい。『こんなこと言ったら周りが困るんじゃないか』と思ってしまうんです。 でも、思ったことをちゃんと言えて、その意見を実際に変化につなげていくことが大事。その繰り返しで企業カルチャーは絶対によくなると思います」(山口氏)
この日のパネルディスカッションを踏まえ、佐藤氏は「今日は『女性未来フォーラム』ですが、私の話は必ずしも女性だけが対象の話ではなかった。何が言いたいかというと、一人ひとりが活躍するための仕組みをちゃんと考えないといけないということ。それなくして女性に活躍してもらおうと、ちょっと飛び級のような施策をやってしまって、大体コケます。まずは一人ひとりの活躍に注目して、いろんなことを考えていただくといいんじゃないか」と締めくくった。