2番目に注目されたのは19時47~48分で、注目度77.7%。藤原妍子(倉沢杏菜)が義理の息子にせまるシーンだ。
藤壺へ入った三条天皇(木村達成)の女御・藤原妍子は、義理の息子・敦明親王(濱田碧生)を相手に他愛もない話で退屈をしのいでいる。妍子に求められ、敦明親王は熱心に趣味である狩りの話を披露しているが、当の妍子は実は狩りになど全く興味はない。「狩りは、こちらの動きを獣に悟られてはしくじります。風下から音を立てずに近寄って…一気にしとめる! 極意はこれにつきます」話すうちに興の乗ってきた敦明親王は、大きな身振りでうさぎを捕まえる仕草をする。
「好き」御簾の向こうにいたはずの妍子は、いつの間にか敦明親王の後ろに回り込み、敦明親王の耳元でささやいた。「あ…おやめくださいませ」敦明親王は驚いて体をのけぞらせるが、「だって敦明様も延子様より私の方がお好きだもの」と、妍子は自信たっぷりに敦明親王にせまった。同い年であり、道長の娘たちの中でももっとも美しいと評判の妍子にせまられると、敦明親王も悪い気はしない。
「そこまで!」突然、2人の間に怒号が響いた。声の主は敦明親王の母・藤原すけ(※女へんに成)子(朝倉あき)だった。「何しに来られたの? 邪魔なさらないで」興をそがれた妍子は露骨に顔をゆがめた。敦明親王はバツが悪そうだ。「申し訳ございませぬ。我が息子が無礼を働きましてお許しくださいませ」すけ子が妍子に頭を下げた。「母上…私は何もしておりませぬ」「黙りなさい。事もあろうに御父上の、帝の女御様になんということを」「母上は、私をお疑いになるのですか?」「どうぞお許しください」すけ子は息子の弁解には耳を貸さず、ひたすらに妍子に謝罪した。
「もういいです」完全に覚めてしまった妍子は御簾の奥に消えていくと、「どうかこのことは帝には、仰せにはなりませぬよう、伏してお願い申し上げます」と、すけ子はその背に懇願した。「母上!」敦明親王は母のへりくだった姿勢に納得がいかない。妍子は御簾の向こうで髪をもてあそんでいた。
「危ない関係にニヤニヤ」
このシーンは、「わがままお嬢様」妍子の奔放なふるまいに視聴者の注目が集まったと考えられる。
妍子にとって父子ほど年の離れた三条天皇の女御というポジションは、いろいろな意味で非常に窮屈で退屈なものなのだろう。そこで比較的近くにいる同い年の敦明親王にちょっかいをかけて気を紛らわせることを思いついたようだ。自ら御簾から出て敦明親王の背後に忍び寄る妍子と、敦康親王に御簾の中に入り込まれ驚く彰子は、姉妹でありながら正反対の性格だ。
SNSには「妍子と敦明親王の危ない関係にニヤニヤしちゃう」「妍子さま、最高(笑)」「妍子さまの『好き』がめっちゃかわいいけど、修羅場になってるの面白い」といった、フリーダムな妍子の振る舞いに引き付けられた視聴者の投稿が集まった。
また、「妍子さまのキャラ、和泉式部さんに近くてスキ」「和泉式部が妍子に女房として仕えたら相性よさそう」といった、妍子とあかね(泉里香)のコラボを期待する声が上がっている。たしかにこの2人がつるむと面白そうだ。
作中では純朴で奥手な青年として描かれている敦明親王だが、史実では短慮な性格で数々の暴力事件を起こしていたようで、実資の記した『小右記』でもそのおこないがたびたび非難されている。しかし、内裏が火事になった際には、母・すけ子を抱きかかえて走って逃げたり、慌てて避難したため烏帽子の無くなった三条天皇に自らの烏帽子を譲ったりしている。非常に男前なエピソードだ。
また、敦明親王の母・藤原すけ子は優れた美貌の持ち主で、かつてはあの花山天皇(本郷奏多)からアプローチをされていたようだ。しかし彼女の父である藤原済時が強く拒否したと伝わっている。夫の三条天皇とは非常に仲睦まじく、四男二女をもうけている。しかし、この時点ではすでに父・済時は亡くなっており、すけ子には後ろ盾がなく宮中での立場は微妙なものだった。そのため、妍子に対して卑屈ともとれる対応をしたのだろう。道長の権勢の強さがよく分かる。三条天皇のファミリーたちが、今後の展開にどのような影響を及ぼすのか要注目だ。