西山朋佳女流三冠が受験する棋士編入試験五番勝負の第2局が10月2日(水)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、試験官の山川泰熙四段が104手で勝利。西山女流三冠の試験成績は1勝1敗の五分となっています。
先手中飛車の定跡形
第1局では三間飛車を用いて高橋佑二郎四段に快勝した西山女流三冠。第2局で挑むのは居飛車党で王道の定跡形を好む山川四段です。先手番と決まっていた本局で西山女流三冠が準備していたのは先手中飛車の積極策。対する山川四段も想定の範囲内だったか、後手超速と呼ばれる急戦策で対抗しました。
定跡化された展開を前にして、ともに早いペースで指し手を進めます。局面のテーマは中央に飛び出した先手の飛車が捕まるまでにいかに攻め手を作るかに絞られており、西山女流三冠の工夫が試される展開に。飛車金交換を受け入れつつも3筋の歩突きで玉頭に嫌味をつけたのは先述の駒損を補う実戦的な手段でしたが、本局ではここからの山川四段の対応が光りました。
山川四段の指し回し光る
美濃囲いの急所である端に手をかけておいてから一転して先手玉のこめかみである3筋に歩を叩いたのが手筋の組み合わせ。金で取ると玉の逃げ道が狭くなる先手がこの歩を玉で取るよりないのを見越しています。首尾よく先手玉を危険地帯に呼んだ山川四段は「寄せは俗手で」の格言通りに守りの金を狙う桂打ちで寄せの網を絞りました。
反撃を目指す西山女流三冠も何とか後手玉に王手をかけますが、山川四段の冴えた指し回しを前にしてさすがの終盤術もこの日は鳴りを潜めました。終局時刻は17時29分、最後は自玉の受けなしを認めた西山女流三冠が投了。一局を振り返ると、周到な準備で西山流の剛腕を封じ込んだ山川四段の快勝譜となりました。
敗れた西山女流三冠は「精度の低い手を重ねてしまった、(次戦に向けて)実力が出せる状態に持っていきたい」と感想を語りました。西山女流三冠の後手番で迎える第3局では上野裕寿四段との対戦が予定されています。
水留啓(将棋情報局)