東京ガスは30日、浜松町本社ビルにて”階段避難車”を使った避難訓練を実施。ビルの高層階で火災などが発生したときの避難に不安を感じている東京ガスの社員(車いす利用者、杖利用者、視覚障がい者を含む)20名ほどが訓練に参加した。
■階段避難車とは?
階段避難車は、自力歩行で避難することが困難な人を座らせたまま、階段を降りてビルの高層階から避難させることのできる資器材。支援者は1人で操作できる。重さは9kg、最大荷重は150kg。
ビルの踊り場ではデモが行われ、数名の社員が支援者として人を降ろす作業を初体験した。そこで感想を聞いてみると、どの人も「思ったより重くなかった」「女性でも人を降ろせそう」といったポジティブな言葉を口にする。ハンドルを身体に寄せるようにして降りていけば、揺れもせず、安全に降ろすことができるという。
階段を降りている途中で、万が一、階段避難車のハンドルから手を離してしまったときはどうなるのだろう? そんな問いかけに、東京ガスの担当者は「そのまま階段を滑り落ちていかないような仕様になっています」と説明する。ちなみに過去には、アメリカのニューヨークで起きた同時多発テロ事件(いわゆる9.11)のときに、これで高層階から避難した人がいるとのことだ。
要支援者の社員に話を聞くと「みんながパニック状態になっているときに、手伝ってくれる人が近くにいるでしょうか。非常階段に人がごった返しているときに、階段避難車が通ることで、通路を塞ぐようなことはないでしょうか」と不安を口にする。しかし、そのあとで「今日のような訓練の機会が増えれば、社員の間で認知も広がっていくでしょう。まだ、こうした器具が社内にあることすら知らない社員もたくさんいるので、今後は社内に向けた情報発信も大切だと感じました」と前向きに話してくれた。
東京ガス 総務部 総務グループ 課長の奥本陽子氏も、囲み取材で「階段避難車を使った場合、避難スピードが課題になります。どうやったら、みんながスムーズに安全に避難できるか、そのあたりは今後も検討を重ねていく必要があります」と話す。また、階段避難車を扱う支援者側の訓練の必要性も感じている。「そのため総務部としては、防災月間の9月だけに限らず、年に数回はこうした訓練を行いたいと考えています」と奥本氏。
現在、館内には階段避難車が5台用意されている。これを14階、26階の共用部に設置するほか、7階、17階などにも設置を検討中。みんなが平等に使えるように配慮するだけでなく、トイレなど人が頻繁に出入りする施設の近く、人の目に触れる場所にマニュアルと一緒に置いておくことで、興味関心を高めてもらうアイデアなども出ているようだ。