世の中にあるさまざまな英語学習法の中で、最近にわかに注目を集めているのが、生成AIを使った学習法。英会話教室よりも気軽に始められるだけでなく、日本人の文化的特性にも合っているといいます。

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生成AIを使った英語学習法のメリット・デメリットとは? AI英会話アプリ「スピーク」の日本統括を務めるYan Kindyushenko (ヤン・キンジュシェンコ)氏に聞きました。

■こんなにある! 生成AIを使った英語学習法

  • AI英会話アプリ「スピーク」の日本統括を務めるYan Kindyushenko (ヤン・キンジュシェンコ)氏

――最近話題の生成AIですが、AIを使用した英語学習法として、どのような方法があるのでしょうか?

ChatGPTを例に挙げると、GPT-4はある程度コミュニケーションが取れるようになってきているので、AIと英語で会話してみてもいいですし、ライティングにも使えます。いずれの場合も、AIに文法や語法の誤りなどをフィードバックさせることで、英語スキルの向上が可能です。

面白い使い方として、自分で英語の文章を一段落書いた後、次の一段落をAIに書かせて、交代でストーリーを作成するという方法もあります。自由な形で新しいものを生み出すという使い方は、まさに生成AIが得意とするところですね。

リーディングでは、自分のレベルに合った英語の書籍をリコメンドさせる、既存の英語の物語を自分のレベルに合った文章に書き換えさせるなどの使い方も考えられます。

――アイデア次第でいろいろな活用法があるのですね。

ただ、ChatGPTのような汎用性の高い生成AIはいろいろなことができるかわりに、使う人のリテラシーや発想力が問われます。例えば、TOEIC700点を目指すなら、TOEIC700点レベルの語彙(ごい)のリストを生成AIに出してもらうという使い方もできますが、果たしてそれが最も効率の良い学習法なのかという問題があります。

汎用的の高い生成AIを英語学習に使おうとすると、どうしても使い勝手が悪い部分が出てくるでしょう。英会話を学びたいなら、英会話に特化したツールの方が効率良く学べるので、一旦ChatGPTなどでAIを使った英語学習を体験してみた後、英語学習に特化したAI英会話サービスやオンライン英会話などを利用するのがいいのではと思います。

――スピーキング、ライティングなど生成AIを使った英語学習法はいろいろですが、日本人に特に向いているのはどの学習法でしょうか?

英語を学ぶ目的にもよりますが、日本の文化的特性や日本の英語教育の特徴などを踏まえると、やはり英会話ではないでしょうか。日本にはミスを恥じる文化があるので、間違うことを恐れて英語が話せなくなっている方が多いですが、AIが相手なら間違いを気にすることなく、気楽に話せます。

また、日本の英語教育は文法や読解重視で実践的なコミュニケーションの機会が少ないので、スピーキングの量を増やすという意味でも、AIを使った英会話の練習は日本人に合っているのではないでしょうか。

■AI英会話、最大のメリットは「パーソナライズ」による効率化

――オンライン英会話を含め、英会話教室もたくさんあります。英会話教室と比べたときの、「スピーク」をはじめとするAI英会話サービスのメリットは?

予約いらずで、いつでもどこでも、時間と場所の制約なしに使えるのがAI英会話サービスのメリットです。AIが相手なので間違いを恐れることなく気楽に話ができて、何でも、何度でも質問できるというメリットもあります。極端な話、AIが相手なら同じことを100回聞いても怒られません。専門的なトピックなど、どんな話にも付いてきてくれるというのもAIならではの利点ですね。

ただ、私がAI英会話サービスの一番のメリットだと考えているのは「パーソナライズ」です。一人ひとりに最適化した学習のステップを踏んで最速で上達させようとすると、どんなに優秀な講師もAIには勝てません。

なぜなら、生身の講師には、生徒一人ひとりにどれだけの語彙力があり、次にどんな単語を覚えるべきかなどを把握して、個別に完全にフォローアップすることはできないからです。医学など専門分野について話したい場合も、一般的な英会話学校では対応が難しいでしょう。

その点、AIなら学ぶ過程とトピックの両方におけるパーソナライズが可能です。まだ生成AIの技術は発展途上ですが、今後は教育全般において、生成AIの活用をすることで個人個人に最適化された学習カリキュラムが組めるでしょう。そうして、最短距離でゴールに導く、そんな世界観ができていくと考えます。

――反対に、英会話教室と比べたときのAI英会話サービスのデメリットは?

相手が人でないということは、メリットにもなればデメリットにもなります。英会話教室は生身の人間が相手なので、感情のやり取りも含めたコミュニケーションができるのが一番のメリットです。英会話教室では、講師と趣味が合えば楽しい時間が過ごせるでしょうし、講師との相性が良ければ、英会話教室の方が話しやすいと感じるかもしれません。

プレゼンテーションやスピーチなど、英語を使って人を説得する、人の心を動かすなどの目的がある場合など、感情の要素が多分に入ってくるときは、少なくとも現時点では英会話教室に軍配が上がると思います。

AI英会話サービスは練習には適していますが、自分のプレゼンテーションやスピーチがどのくらい人に響くのかはわかりません。最終的には、人を相手に、表情や身ぶり手ぶりなど非言語の要素も含めてトレーニングした方が良い結果が出るでしょう。

■「こんなにしゃべれるんだ」、ユーザーも驚くAI英会話

――AI英会話サービスのメリットはわかりましたが、いざAIと英語で会話するとなると戸惑ってしまいそうです。はじめての人でもすんなりと学習がスタートできるのでしょうか。

いきなり「英語で何かしゃべってください」といわれても困ってしまう人が多いと思います。アウトプットにはインプットが必要なので、「スピーク」の場合は、動画などのコンテンツも組み合わせて、その人のレベルや目的に合った形で学習できるようになっています。

動画でネイティブスピーカーの英語表現を学んだ後に実践するというアプローチも可能ですし、「バーガーショップに行ってハンバーガーを注文する」など、決まったシナリオに沿って、ゲーム感覚で英会話を練習することもできます。

また、シナリオは「ジャーナリストとしてアメリカ大統領にインタビューする」など、自分で自由に作ることも可能です。「初心者モード」など、レベルに合わせたモードの選択もできるようになっています。

――AIと英会話を学んでいる「スピーク」ユーザーからの反響はいかがですか?

「こんなにしゃべれるんだ」「生成AIってこんなこともできるんだ」と驚かれる方が非常に多いですね。会話にしても添削にしても、AIならどんな話題にもついていけることに感動される方も多いです。

■最初から実践を取り入れよう

――最後に、英語を学んでいる方、学びたい方に向けてアドバイスをお願いします。

言語はあくまでもコミュニケーションツールなので"学んだ英語をどう生かすのか"がキーです。

「英語で映画が観たい」「音楽を聴きたい」「本が読みたい」など、何でもいいので、英語を学ぶモチベーションをはっきりさせるといいと思います。その上で、とにかく英語を使ってみることです。

英語が話せるようになりたいなら、片言でもいいのでスピーキングの実践をしてみてください。英語で映画が観られるようになりたいなら、最初は9割以上わからなくてもいいから映画を観てみてください。「自分にはまだできない」と思わずに、学習1日目から早速やってみましょう。

「自分は英語ができない」と思いこんでしまっている人も多いですが、「できるできない」ではなく「やるかやらないか」。挑戦をすればきっとできるようになるはずです。