横浜流星×藤井道人監督による最新映画『正体』(11月29日公開)。染井為人氏による同名小説の実写化作で、日本中を震撼させた殺人事件の容疑者として逮捕され死刑判決を受けたが脱走し潜伏を続ける主人公・鏑木慶一(横浜)の姿を、彼が出会う4人(吉岡里帆、森本慎太郎、山田杏奈、山田孝之)の視点から描く。

  • 左から山田孝之、藤井道人監督

藤井道人監督、“もっとも緊張する兄”のような山田孝之に初めてオファー

今回、山田孝之が演じたのは、日本を縦断していく鏑木を追う刑事の又貫だ。実は2019年に山田がプロデュースした『デイアンドナイト』を藤井監督が撮っており、「映画人の中でもっとも緊張する兄」のような存在なのだという。藤井監督は「公私ともに彼の背中を見させてもらって、彼の生き方や、未来の映画界への考え方を継承したいと思って、初めて役者でオファーした」と明かす。「観客は彼の目線で鏑木を追うので、自分の中で最大のリスペクトのある山田さんに、ダメ元でカフェに呼び出してオファーをしました。山田さんは今でも現場で演出する時にとても緊張しますし。本当に存在感がかっこいいです。今回は1つ夢が叶ったような気持ちです」と喜びを表した。

2024年2月に行われたのは、物語の中でもクライマックスにあたるシーンの撮影。鏑木(横浜)と対峙した又貫(山田)は感情があふれたようで、セリフを言い始めるまでに約20秒の間が入る部分も。監督のアドバイスが入り、少し間は縮まったものの、山田の芝居に応えていく横浜も、情感たっぷりのシーンとなっていた。

撮影を終えた藤井道人はこのやりとりについて「『長い!』とは思いました(笑)。引きのテイク2の時は『もっと短くしてほしい』とお願いしましたね。『リアルな間はそれだと思うんだけど、ワンシーンワンカットで成立する芝居を見たいんです』と言ったら、『わかってる。こっちの整理をもっと早くしなきゃいけないってことだよね』と。スタートがかかる前に、又貫が準備してきた感情を作ってもらえたら、そこはシャープにできると思うんで、と。流星には『きゅっと』と言いました」と振り返る。

また、山田がシーンのたびにわざわざ時に遠回りしてセットのドアから出入りしていたのも印象的。あくまでも組み立てられた“セット”なので、どこから立ち位置についてもいいのだが、必ずドアを使う山田について、藤井監督は「山田さんは絶対にやります」ときっぱり。「たとえば病院のシーンでは、映像のテンポ上すぐセリフを言わなければならない時があるんですけど、そういう時も、事前に入ってきて自己紹介をしてというのを何回も繰り返して、自分が気持ち悪くないテンションを作っています。本番に入る前もずっとセリフを言っていたり、そういうことをやってくれる人ですね。生理的に気持ち悪いものを排除していく、嘘がないものを選択していくということをやられてる人」と語る。一方で「『ヨシヒコ』とか、どうやってたんだろう?」と、山田主演のドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズの撮影の裏側に興味を持っていた。

藤井監督は「流星も、1番尊敬しているのが山田さんなんです。山田さんと流星と3人でご飯に行くと、流星は緊張しすぎて一言もしゃべらないんです。『1番尊敬する、共演してみたいのは山田孝之さん』と取材で言っていたらしいので、多分その思いが彼の中にもあふれていたと思います」と、横浜の思いも明かす。「又貫は、役として『葛藤してるぜ、俺』というふうに大仰にもできちゃうんですが、1番ストイックなやり方で演じてくれて。唯一無二、圧倒的だと思います。みんなが山田さん目標にする理由がわかるし、深く役を落とし込む姿を、目の前で見せられた感じがしました」と改めて役者・山田孝之のすごさを感じているようだった。

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