愛と経済の伝道師“宗さま”こと宗正彰「史上最大の“日経平均株価の乱高下”と“持つべき心構え”」を解説
本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。

8月14日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル 上席執行役員の宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「史上最大の“日経平均株価の乱高下”と“持つべき心構え”」というテーマでお話を伺いました。

(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保

◆日経平均株価の乱高下… 複数の要因が重なった結果?

浜崎:今回、宗さまには「史上最大の“日経平均株価の乱高下”と“持つべき心構え”」について、お話しいただきます。

やしろ:ということで、まずこの話題ですね。日経平均株価が8月5日と6日の2日間にわたり、史上最大の乱高下を記録しました。まず始めに、大幅な下落の要因は何だったんですか?

宗正:8月5日の月曜日に、日経平均が4,451円下げました。

やしろ:歴代1位の値下がり幅ですよね?

宗正:はい、史上最大です。実はその前の週の金曜日も、2,000円を超える下げだったので、合わせると6,667円も下げています。

大幅に下がった要因は、(7月末を含む)8月の第1週に、日銀が追加の利上げを決めました。今年3月の利上げはマイナス金利政策の解除でしたから、ついに日本も金利のある時代に入ったそのタイミング。

金利が上がれば株式市場が下がるのは、教科書通りなんですよ。資金の流れは水の流れとは逆で、低い所から高い所に流れます。そして企業の多くは金融機関から借り入れをしている。借入利息も連れて上がるので、企業業績が悪化します。ここまでが1つ目の理由です。

2つ目は発表されたばかりのアメリカの雇用統計。アメリカの経済指標の中でも最も重要なものの1つなんですが、これが予想よりも悪かった。

やしろ:失業率や就業者数を表す統計ですよね?

宗正:そうですね。アメリカの労働市場の実態を把握できるものなんですが、これが悪くて、アメリカの景気後退懸念が浮上しました。そして3つ目は、中東情勢の緊迫化も同じタイミングで表面化しました。

やしろ:今にも戦争が始まるかもというようなニュースも出ましたしね。

宗正:地政学リスクと言いますが、これは株式市場の大きな下げ要因なんです。

やしろ:中東情勢が緊迫化すれば、さまざまな産業で使われている原油の輸入などにも影響しますしね。いろいろなことが重なったんですね。

宗正:本当に、これでもかというほど重なりました。

やしろ:今挙げていただいた要因のなかで、特に大きな影響を与えたものは何だったのでしょうか?

宗正:為替市場の動きです。円高・ドル安の動きが加速したことが、日経平均に大きな影響を与えたと思います。日本の追加利上げは、日本円が高くなるということで、これは円高につながります。

一方のアメリカが景気後退懸念となると、アメリカ金利を下げなきゃいけないですから、つまりドル安なんですね。日米、正反対の動きが円高・ドル安を加速させました。

日本の輸出関連企業の多くは、1ドル140円台の半ばくらいを会社計画の前提にしています。あのときは、その水準を一気に突き抜けて円高が進みました。日経平均の構成銘柄の中で大きな割合を占める輸出関連企業の業績悪化は日本株全体の下げにつながります。大きく下がる株式市場を見て、「売らなきゃ、売らなきゃ」と売りが売りを呼んで、さらに下がっていきました。

やしろ:恐怖が恐怖を、不安が不安を呼んだ形ですね。

宗正:そうです、集団心理です。他にはアルゴリズム取引ともAI取引とも呼ばれる自動取引の影響もありました。売りが出れば自動的にもっと売る、逆に買いが増えればもっと買う。近年の株式市場が一方向的な動きになりやすい要因の一つです。

◆今後の株価は上がる? 下がる? 専門家の発言が分かれる理由は?

やしろ:そして史上最大の下げ幅を記録した翌日、今度は史上最大の上げ幅を記録しました。なぜこのような動きになったのでしょうか。

宗正:翌日8月6日の火曜日の上げ幅は、3,217円と過去最大を記録しました。前日の8月5日の下げ幅は4,451円でした。実は8月5日の後場(午後の取引時間のこと)の動きを眺めていたのですが、3,000円くらい連続的に上がることなく下がり続けていきました。つまり、このときの状態が売りが売りを呼んでいたときで、この分だけ、火曜日は買い戻されたということだと思います。

株式市場は、専門用語でファンダメンタルズと呼びますが、国や企業などの経済状態を表す基礎的な要因に基づいて変動するのが大前提です。つまり、理屈で説明できる部分になりますが、「売りが売りを呼ぶ」というのは理屈ではないですよね。それでその分だけ、翌日の8月6日の火曜日に一気に買い戻されたのだと私は思いますね。

やしろ:現在は、一旦落ち着いているように見える株価ですが、専門家の方でも「今後は上がる」「いや、まだ下がる」など、意見分かれているように思います。この辺りはいかがでしょうか?

宗正:結局、株式市場っていうのは、上がるか下がるかの2択です。半分は当たるし、半分は外れるんですよ。専門家と呼ばれる人の間でもさまざまな意見がありますが、皆さんは、その程度の話だと思っておいてください。大事なことは情報の取捨選択、投資は自己責任です。

古くからの相場の格言に「山高ければ谷深し」というのがあります。日経平均は7月に過去最高値を更新しましたが、そこから大きく下がりました。わずか1ヵ月弱で約25%の下げです。そのため自ずと注目が集まり、最近は専門家の発言の量自体も増えたわけです。

そして投資の成果やマーケットの動きというものは、未来を予想する段階では明確な答えはありません。全部予想であって仮定の話なんです。専門家と呼ばれる人たちが予想する際の根拠もそれぞれ違います。

例えばアメリカ経済だったり、為替市場だったり、日本経済だったり、企業業績だったり……。だから人によって言うことも異なるわけです。根拠が違うので、意見も分かれます。そういう意味では、何を根拠としているのか、そこに注目すると分かりやすいですね。

◆マーケットの動きに耐えられない人向けの投資方法は?

やしろ:新NISAで個人の資産運用が盛り上がりを見せてきたなかでの今回の乱高下でした。宗さまからラジオリスナーの投資初心者の方に、何かメッセージはありますでしょうか。

宗正:これが投資です。

やしろ:この数日間で起きたこと。これが投資ですと。

宗正:初めての体験で、非常に驚かれた投資初心者の方も多いと思います。投資とはリスクを取って、リターンを取りに行くこと。しかも「投資は余裕資金で」というのが原則です。

やしろ:これ、大事ですよね。投資の額が増えようが減ろうが、生活が守れなくなるような額を入れてはいけないっていうことですよね?

宗正:ダメですね。例えば一般企業も投資活動はしていますが、従業員の支払い給与を使ったりはしませんし、原材料の購入費は使いません。投資の原則は余裕資金でおこなうこと。それから今回のマーケットの動きは、史上最大の下げ幅と上げ幅だったので、めったにないことなんですが、こんな状況には耐えられませんという方に、投資は向いていないんですよ。

やしろ:メンタル的にも。

宗正:ただ今年から始まった新NISAがきっかけで投資を始めた人が多いのも事実ですよね。新NISAには通常の売買で使う「成長投資枠」と、もう1つ「つみたて投資枠」があります。今回のような乱高下に耐えられない方は、「つみたて投資枠」を使うつみたて投資がオススメですね。

やしろ:つみたて投資は、どういう人にオススメなんですか?

宗正:つみたて投資は、月に一度、あるいは週に一度など、自動的に同じ金額で株式や投資信託を一定間隔で購入してコツコツ積み立てていく方法です。

つまり、マーケットの動きを見たり聞いたりしなくてもいいんです。むしろ忘れているくらいがちょうど良くて、「ほったらかし投資」なんて言う人もいます。だからマーケットの動きでドキドキしたくない人には、これが向いています。

つみたて投資が良い理由はもう1つあります。株式や投資信託は、日々購入単価が変わります。だからずっと一定金額を積み立てていると、たくさん買えるときもあれば、少ししか買えないときもあります。ところが一定期間続けると、平均購入単価が安くなりやすい。しかもリターンも高くなりやすい、ということがあります。

◆「ゴール」を決めて資産運用!「ゴールベースアプローチ」

やしろ:投資や資産運用において、株価が乱高下しても心穏やかにできる「つみたて投資」のお話を伺いましたが、他にもありますか?

宗正:まず1つが、今お伝えした「つみたて投資」。他には、資産運用の先進国といわれるアメリカでは最もメジャーな方法の一つなんですが、「ゴールベースアプローチ」という資産運用の方法があるんですよ。

どのような目的(=ゴール)のために資産運用をするのかを決めれば、増やしたい目標額が決まります。「今から何年後に」といった運用期間が決まれば、目標金額から逆算して、毎年何%くらいで運用すればいいか、目標利回りを計算できます。

例えば「5年後に300万円貯めたい」のであれば、年利どれくらいで運用しなければいけないのか。その目標利回りから逆算して、何に投資するか、複数の投資対象を決めるんです。マーケットは日々動くので、最初に決めた投資配分は刻々と変わります。変わればまた修正する、これを何度も繰り返します。

株式市場の動きや為替市場の動きを見て運用する方法を「マーケットベースアプローチ」と言いますが、今、私がお話しした「ゴールベースアプローチ」は、真逆の運用方法なんです。

人って目的も変わりがちじゃないですか。例えば、当初の運用目的は5年後の世界旅行だったけど、7年後の自宅の改築資金にしようとか。目的が変わったら、そのときにまた目標利回りを計算し直します。だから今回のように日経平均株価が下がったときも、そこでドキドキするのではなく、「日経平均がこれだけ下がったから、株式の割合をこの先さらに増やそうか」と、こんな対応をするんです。これが「ゴールベースアプローチ」です。

やしろ:新NISAが始まったときも、宗さまにお言葉をいただきましたけれども、ズルズル何となくやるよりは、ちゃんと時期や目標額を決めるなど、目的を持ってやった方が良いということですね。ラジオリスナーの皆さんも、気になった方はそこの見直しもしていただけたらなと思います。

ということで、「宗正彰の愛と経済と宗さまと」はAuDeeにて毎月10日20日30日に配信中です。宗さま、今日もいろいろとありがとうございました。

宗正:ありがとうございました。

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もっといろいろな経済のお話が聞きたいという方は、宗さまのAuDee(オーディー)「宗正彰の愛と経済と宗さまと」でも聴けます。毎月10日、20日、30日に配信していますので、そちらもぜひチェックしてください。

スマホアプリ「AuDee(オーディー)」では、スペシャル音声も配信中!

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<番組概要>

番組名:Skyrocket Company

放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)

パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/sky/